かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

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  今日はお茶会の日。
  もちろんロンは、お留守番をしている。
  私は、奥様方の娘さん達がいるテーブルでお茶を飲んでいる。

「今年はほうれん草が例年よりもたくさん収穫出来たみたいです」

  そう言ったのは、ファンファン町の町長の娘さんだ。

「ええ、父や母も喜んでいました」

  そう言ったのはランラン村の村長のお孫さんだ。

「ええ。お陰様で今年は例年よりも売上がいいです」

  そう言ったのは、ベティート商会の娘さんだ。
  貴族令嬢達とのお茶会よりも、気楽に参加出来るのがいい。私は、彼女達の話に耳を傾けながら紅茶の香りを楽しんだ。

「そういえば、ほうれん草祭でキスをすると両想いになれるって噂は、本当なのですかね」

「ああ、そういえばそんなお話を最近よく聞きますね」

「それは、昨年鍛冶屋のポールさんがパン屋のレイサさんと両想いになったのが始まりみたいですよ」

「まあ、そうだったの!  私もほうれん草祭でキスをしたいわ」

  うっとりとした顔をするランラン村の村長のお孫さん。

「ふふ。お好きな方がいらっしゃるのですね」

「い、いませんよ!」

  顔を赤くして否定している所がかわいい。
  きっと、好きな男の子がいるんだろうな。っと、思った。
  所で、キスをして両想いになったのではなく、キスをする程の中なのだから、もともと両想いだったのではないだろうか。
  疑問に思ったが、話に水を差す程の事でもないので、黙っていた。

「アネモネ様はいらっしゃるのですか?」

「えっ、私?  えっと、何がでしょうか?」

  しまった、考え事をしていて聞き逃してしまった。

「好きな男の子ですよ」

「好きな男の子……お兄様?」

「まあ、カッコいいですものね」

  カッコいい?  セシルお兄様がカッコいい?  物好きもいるものだわ。ああ、きっと私に気を使ってくれているのね。
  そう脳内で解釈をしていた私に、ファンファン町の町長の娘さんが話し掛けてきた。

「アネモネ様は恋をしていますか?」

「恋……恋とはなんでしょうか?」

  私の言葉にみんなポカンとした顔した。

「あっ、ごめんなさい。好きとか恋とか分からなくて」

「アネモネ様は、初恋がまだなのですね」

「皆さんは初恋はいつですか?」

「私は八歳の時でした」

  そう言ったのは、ルンルン村の村長の娘さんだ。
  その後に他の方達も続き、皆さん十歳前後で初恋をしている事を知った。
  えっ……私、凄く遅れているわ。そういえば、ミランダ様が婚約したのも十歳頃だったような。

「皆さん、素敵なお話をありがとうございます。所で、どうしたら恋をしているのか分かるのですか?」

「その人を見ると胸がドキドキします」

「私は、彼の事が頭から離れなくて眠れなくなりました」

「私は、恥ずかしくて目を合わせられなくなりました」

「私は、素直になれなくてケンカばかりです」

「私は胸が苦しくなりました」

  胸がドキドキして、眠れなくなって、恥ずかしくなって、胸が苦しくなってケンカばかりか。恋とは、中々体力が必要そうね。恋をするにはは忍耐が必要ってことかしら?

「そうなのね。皆さんのお話を聞いて分かったけれど、私の初恋はやはりまだみたいです」
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