かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

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32 ロイアン視点

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  俺はアネモネが見えなくなったのを確認してから、デュランに話し掛けた。

「今年のマードック領のほうれん草祭は、例年より遅いのだな」

「マードック侯爵もロイアン殿下がもと姿で、参加をされる事を心待ちにしております」

「そうか……」

「殿下……いつ頃もとの姿に戻られるのですか?」

「うむ……。分からないな」

  俺がそう言うとデュランはあからさまにため息をついた。

「分からない?  マードック領のほうれん草祭はどうするのですか?」

「……ネズミの姿で参加をする」

「無茶を言わないで下さい!」

  デュランは怒っているようだ。そんな事を言われても、この姿でどうやって、アネモネに男して意識してもらえばいいのだろうか。

  ふと、サムが視界に入った。

「そういえばサム。アネモネと仲が良いのか?」

  俺がそう聞くとサムは身体をびくつかせた。

「い、いえ!  そんな事は。私はセシルの友人でして、小さい頃に少し一緒に遊んだだけです」

「ほう。そうか。小さい頃のアネモネは可愛かったか?」

「そりゃもちろん。……い、いえ。子どもらしく可愛いと言う意味です」

  俺はバッチリと見たぞ。アネモネを思い出し、頬を緩ませたのを。

「そうか。やはり幼い頃も可愛いかったのだろうな。それから、レイラール家にも遊びに行っていたのか?」

「いえ、昔です!  最近はセシルとは外で会っています」

  サムは首が取れそうな程必死に、首を振っていた。

「そうか」

「殿下、サムをいじめるのもそのくらいして下さいね。サムは私のかわいい後輩ですので」

「俺も可愛がっているぞ」

「ええ、そうでしたね」

  サムはデュランをうるうるとした目で見ている。
  いじめたつもりは、ないのだが。

「で、それよりも。何か進展はあったのですか?」

「おお。結婚を迫ったら失敗をした……」

「結婚……どうして、結婚なのです。殿下は色々とすっ飛ばし過ぎです!」

「そんな事はない。兄上とミランダ様と今より仲良くなれるかも。と言ったら心が揺れていだぞ」

「殿下!  そうではありません。何かでつるのはお止め下さい!」

「むう。ではどうすれば良いのだ」

  俺がそう言うとデュランはため息をついた。

「ご自分でお考え下さい。アネモネ嬢の事が本気で好きなのならば、自然と答えは出てくるでしょう」

「ふむ……」

  デュランは腕を組んで黙ってしまったが、ふと視線を俺に戻すと話始めた。

「殿下は、アネモネ嬢の事が好きなのですよね?」

「もちろんだ」

「いいですか。アネモネ嬢はモテますよ。今は兄上がちょっかいを出しています」

「何?」

「殿下が諦めたら、アネモネ嬢はすぐに他の誰かと付き合うでしょう」

「そんな訳……」

「そんな訳あります。いいですか。殿下が諦めたら別の誰かが、すぐに告白をしてアネモネ嬢を手に入れる事でしょう。よく覚えておいて下さいね」

「……分かった」

  しばらく沈黙していると、横からアネモネの呑気な事が聞こえてきた。

「お待たせしました。ロンをありがとうございます」

「いえ、ロンくんはお利口でしたよ」

  デュランはよそ行きの顔で、さわやかに答えていた。
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