稲荷詣で

斐川 帙

文字の大きさ
40 / 155
四、二人連れの女性

(十三)

しおりを挟む
 三ノ峰の下社を過ぎると、短い下り坂があって、そのあとは、所々、赤い鳥居の連なる、平坦な狭い石畳の尾根道になった。やがて左に茶店が見えると正面に石造りの鳥居と、その左側に社が見えた。恐らく、ここが間ノ峰だろう。
 石造りの鳥居を抜けて、左側にある社殿を見ると、扁額には『荷田社』と書かれてある。そして、社前の赤い鳥居の方には、文字のない、ただの石版になっている扁額がかかっていて、その部分が三角形で囲まれている珍しい形の鳥居になっていた。鳥居上部に三角形が乗っていると、比叡山にある日吉大社の山王鳥居と同じ形式なのだが、それとも違う独特の造りになっていた。
 一応、荷田社も参拝しておいた。姉らも参拝していた。ここにも手水舎はあったが、水が張っていなくて、使われていないようだったので、手を清めるのは省いた。
 下社から荷田社までは、ほぼ平坦な道のりだったので、休憩を取らずに、そのまま二ノ峰に向かうことにした。

 参道は、社の前で左に曲がり、茶店との狭い隙間を通っていた。そこから再び赤い鳥居の連なる長い参道が伸びている。ここから段々と道は上りになっていった。そして、しばらく行くと、また、参道の左側に大小の石造りの鳥居や赤い鳥居、祠が密集するところが出現し、石の鳥居を抜けるとすぐに『中之社』の扁額のある赤い鳥居が見えた。『青木大神』という幟が何本か立っている。二ノ峰に着いたようだ。
 赤い鳥居の脇に設置してある手水舎で、口、手を清めると、鳥居をくぐり、短いが急勾配の階段を上って、中之社に参拝した。ここに来るまで、だらだらと長い上り道だったので、十五、六段程度の短かさでも、急な上り階段は、こたえた。妹の方は、まだまだ、元気なようだったが、姉の方はすこし息が上がっているようだった。中之社の向かいの店は、店内に腰を下ろせるところがあり、食事も取れるようだった。姉の様子を見ると、休憩を取った方がいいかとも思ったが、芳野は、既に下社でソフトクリームを食べたので、今のところ食事を取るつもりはなかったし、先を急ぎたかったので、ちょっと無理して、このまま一ノ峰に向かってしまおうと考えた。芳野と妹の方は、それでも大丈夫だろう、姉の方がついて来られるか、心配だった。
「このまま、一ノ峰に向かおうと思っているのですが、よろしいですか?」
 妹はちらっと茶店の方を見たが、ゆっくりとうなずいた。姉は、息切れしているのを抑えながら、妹がうなずくのを見て、ゆっくりとうなずいた。
 参道は、赤い鳥居の連なる中をだらだらと登っていくような尾根道になっていた。参道の両側の先は、鳥居の隙間から覗く、木立の加減から、崖のような急斜面になっているようだった。
 後ろの二人に、何か、話しかけたくなったが、姉の方を見ると参道を登るのが辛そうだったので、控えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...