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七、三条烏丸の御所
(八)
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北の対の自室に戻って一時間ほど経ったろうか、修理がやってきて、「出立の用意ができたので、お供して頂きたい。」と言われた。
芳野は立ち上がると、障子を開けて部屋から出た。すると部屋の前には修理が控えていて、それを見た芳野は、「修理職権大進藤井是則…」と先程判明した男の呼び名を確認するように思わず呟いていたが、修理には聞こえなかったのか、気に留める風もなく先に立って、中門廊まで先導し、西中門のところで庭に下りた。すでに壺装束のあさつゆとあきおぎが並んで立っていて、近くには三人ほどの男が立っていた。二人は長刀を持ち、残りの一人は太刀を佩いていた。三人とも立烏帽子に水干姿で、括袴に草鞋を履いている。弓箭は帯していない。
結局、修理は、因州殿から郎等を借り受けることができたのであろうか。芳野は三人の男の誰かに聞いて確かめたかったが、そういう雰囲気でもなかったので、声をかけるのは遠慮した。
芳野が出て来ると、待っていたかのように三人の男たちは歩き出して、その後をあさつゆとあきおぎが付いて歩きだした。芳野も、彼らの後を付いて歩き始めた。
西中門から庭に下りた後、東に向かい、寝殿の前を過ぎて東中門を抜けた。東中門は透打門で、庭と門外とは網代塀で仕切られていた。
寝殿の前の庭を進んでいたとき、庭に広い窪みが認められた。昔は、ここに池があったことを想起させる窪みだった。昨日、反り橋を渡った時に橋の下にあった川のような窪みは、この広い窪みとつながっているのだろうと思った。きっと、以前は、反り橋の下を小川が流れていて、庭にあった池に、水を供給していたのだ。
東中門を抜けると更に進んで、東門から小路に出た。東門は上土門になっていたが、確か、昨日、潜った西門は棟門で、造作も、この門よりは若干立派な感じがした。この造りの違いは単なる趣味なのか、別に意味があるのか、気になったが、知識がないので芳野にはわからないことだった。
実際は、四脚門、棟門、唐門、上土門の順で格が下がる。四脚門の格式は高く、大臣の屋敷、院や女院の御所、内裏などでないと設けることは憚られた。
駿河守の屋敷では西門が正門として扱われ、東門は裏門のような扱いになっていた。
東門から小路に出たが、これは堀河小路であった。堀河小路は、都を南北に走る大路・小路の一つであったが、小路の中央を幅四丈(十二メートル)の堀川と言う川が流れており、それによって小路は二分されていて、道幅も、通常の小路が四丈(十二メートル)であったのに対して、堀川両岸に各々幅二丈(六メートル)の道が通り、堀河小路全体では堀川の川幅四丈に四丈を加えた八丈(二十四メートル)の道幅になっていた。
ただ、この小路の道幅四丈には道路両側に設けられた築地と側溝の幅も含まれており、それらを除いた純粋な小路の道幅は二丈三尺(七メートル)であった。また、ここで述べた通常の小路の道幅二丈三尺は、延喜年間に制定された延喜式に記述されている規定なのだが、これまでの京都市内各所での発掘調査の結果では、これよりも狭い道幅で出土しているケースもあり、必ずしも、規定通りの道幅になっていたわけではなかったようだ。実際、堀河小路の一部を発掘調査した結果では、堀川は幅二丈で検出され、結果的に全体の幅は六丈(十八メートル)となっていた。
芳野は立ち上がると、障子を開けて部屋から出た。すると部屋の前には修理が控えていて、それを見た芳野は、「修理職権大進藤井是則…」と先程判明した男の呼び名を確認するように思わず呟いていたが、修理には聞こえなかったのか、気に留める風もなく先に立って、中門廊まで先導し、西中門のところで庭に下りた。すでに壺装束のあさつゆとあきおぎが並んで立っていて、近くには三人ほどの男が立っていた。二人は長刀を持ち、残りの一人は太刀を佩いていた。三人とも立烏帽子に水干姿で、括袴に草鞋を履いている。弓箭は帯していない。
結局、修理は、因州殿から郎等を借り受けることができたのであろうか。芳野は三人の男の誰かに聞いて確かめたかったが、そういう雰囲気でもなかったので、声をかけるのは遠慮した。
芳野が出て来ると、待っていたかのように三人の男たちは歩き出して、その後をあさつゆとあきおぎが付いて歩きだした。芳野も、彼らの後を付いて歩き始めた。
西中門から庭に下りた後、東に向かい、寝殿の前を過ぎて東中門を抜けた。東中門は透打門で、庭と門外とは網代塀で仕切られていた。
寝殿の前の庭を進んでいたとき、庭に広い窪みが認められた。昔は、ここに池があったことを想起させる窪みだった。昨日、反り橋を渡った時に橋の下にあった川のような窪みは、この広い窪みとつながっているのだろうと思った。きっと、以前は、反り橋の下を小川が流れていて、庭にあった池に、水を供給していたのだ。
東中門を抜けると更に進んで、東門から小路に出た。東門は上土門になっていたが、確か、昨日、潜った西門は棟門で、造作も、この門よりは若干立派な感じがした。この造りの違いは単なる趣味なのか、別に意味があるのか、気になったが、知識がないので芳野にはわからないことだった。
実際は、四脚門、棟門、唐門、上土門の順で格が下がる。四脚門の格式は高く、大臣の屋敷、院や女院の御所、内裏などでないと設けることは憚られた。
駿河守の屋敷では西門が正門として扱われ、東門は裏門のような扱いになっていた。
東門から小路に出たが、これは堀河小路であった。堀河小路は、都を南北に走る大路・小路の一つであったが、小路の中央を幅四丈(十二メートル)の堀川と言う川が流れており、それによって小路は二分されていて、道幅も、通常の小路が四丈(十二メートル)であったのに対して、堀川両岸に各々幅二丈(六メートル)の道が通り、堀河小路全体では堀川の川幅四丈に四丈を加えた八丈(二十四メートル)の道幅になっていた。
ただ、この小路の道幅四丈には道路両側に設けられた築地と側溝の幅も含まれており、それらを除いた純粋な小路の道幅は二丈三尺(七メートル)であった。また、ここで述べた通常の小路の道幅二丈三尺は、延喜年間に制定された延喜式に記述されている規定なのだが、これまでの京都市内各所での発掘調査の結果では、これよりも狭い道幅で出土しているケースもあり、必ずしも、規定通りの道幅になっていたわけではなかったようだ。実際、堀河小路の一部を発掘調査した結果では、堀川は幅二丈で検出され、結果的に全体の幅は六丈(十八メートル)となっていた。
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