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七、三条烏丸の御所
(十五)
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「私が駿河守さんの前に呼ばれるときは必ず修理さんが背後に控えていらっしゃるのですが、修理さんと言う方は、どういう方なんですか?」
「駿河守様の御家中の一切を切り盛りなさっている方ですね。侍所だけでなく武者所も修理殿が差配なさってますね。」
「結構、えらい方なんですか?」
信直は「えらい方」と言う表現に苦笑を浮かべながら、
「まあ、『えらい』かどうかはわかりませんが、御家中の要となる御方ですね。」
「だとすると、修理さんは、もうだいぶ前から、仕えていらっしゃるんですかね?」
「修理殿が、いつから駿河守様に仕えるようになったかは、存じませんが、駿河守様が美濃守に任ぜられていた頃に当家にいらっしゃったらしいというのは耳にしたことはありますね。」
「どのくらい前なんですかね?」
「どうなんでしょうねえ、侍所に仕えるようになった四年前には、駿河守様は、既に美濃守ではなかったですからね。それ以前の話になるってことですね。」
「駿河守になったのはいつなんですか?」
「去年ですね。」
「そう言えば、駿河は静岡ですよね?」
「静岡?」
芳野は単に駿河がどこに該当する地域なのかを確認したかっただけなのだが、何で信直に聞き返されたのかわからなかった。実は、静岡は明治になって作られた名称で、それ以前はなかった地名だ。
芳野は、聞き返されて、それ以上、しつこく確認し続けるほどのことでもないので、受け流した。
「駿河守なのに駿河に行かないんですね。」
「ああ、そんなのは別に珍しい事ではないですよ。代わりに目代を下向させてますからね。」
目代と言う言葉は、ここに来てから、何度か耳にした言葉だ。しかし、改めて考えてみれば、目代がどういう役目の者かよくわかっていないことに気づいた。
「目代という言葉は、ここに来てから何回か耳にしたのですが、目代というのは何なんですか?」
「目代ですか?目代というのは、守に代って任国に下向して、国務を代行する役目の者を言うんですよ。御存じないですか?」
あきおぎは目代の娘だと言われていたことを思い出した。
八重は、この目代と言うものを何やら格下の者のように言っていたせいか、芳野は、目代に対して、大勢いる家来のうちの身分の低い者という印象を持っていたが、この男の話では、目代は、国守の代理で現地に行って、国守の仕事を代行する役目の人ということなので、そんな下っ端の家来で務まるものなのかと疑問に感じた。そして、そもそも目代は家来なのだろうかという疑問も生まれてきた。あきおぎの出自にも関わることなので、気になって、芳野は、この疑問を質してみようと思った。
「目代と言うのは家来なのですか?」
「家礼?まあ、家人の一人を行かせることが多いのは事実だね。しかし、なぜ、また、そんなことが知りたいんですか?」
「いえ、ここに来てから、わからないことが多いものですから、いい機会だと思って、お尋ねしてみました。失礼しました。」
「いや、責めてるわけではないんですが、結構、質問攻めですな。」
そう言って、信直は笑った。
「駿河守様の御家中の一切を切り盛りなさっている方ですね。侍所だけでなく武者所も修理殿が差配なさってますね。」
「結構、えらい方なんですか?」
信直は「えらい方」と言う表現に苦笑を浮かべながら、
「まあ、『えらい』かどうかはわかりませんが、御家中の要となる御方ですね。」
「だとすると、修理さんは、もうだいぶ前から、仕えていらっしゃるんですかね?」
「修理殿が、いつから駿河守様に仕えるようになったかは、存じませんが、駿河守様が美濃守に任ぜられていた頃に当家にいらっしゃったらしいというのは耳にしたことはありますね。」
「どのくらい前なんですかね?」
「どうなんでしょうねえ、侍所に仕えるようになった四年前には、駿河守様は、既に美濃守ではなかったですからね。それ以前の話になるってことですね。」
「駿河守になったのはいつなんですか?」
「去年ですね。」
「そう言えば、駿河は静岡ですよね?」
「静岡?」
芳野は単に駿河がどこに該当する地域なのかを確認したかっただけなのだが、何で信直に聞き返されたのかわからなかった。実は、静岡は明治になって作られた名称で、それ以前はなかった地名だ。
芳野は、聞き返されて、それ以上、しつこく確認し続けるほどのことでもないので、受け流した。
「駿河守なのに駿河に行かないんですね。」
「ああ、そんなのは別に珍しい事ではないですよ。代わりに目代を下向させてますからね。」
目代と言う言葉は、ここに来てから、何度か耳にした言葉だ。しかし、改めて考えてみれば、目代がどういう役目の者かよくわかっていないことに気づいた。
「目代という言葉は、ここに来てから何回か耳にしたのですが、目代というのは何なんですか?」
「目代ですか?目代というのは、守に代って任国に下向して、国務を代行する役目の者を言うんですよ。御存じないですか?」
あきおぎは目代の娘だと言われていたことを思い出した。
八重は、この目代と言うものを何やら格下の者のように言っていたせいか、芳野は、目代に対して、大勢いる家来のうちの身分の低い者という印象を持っていたが、この男の話では、目代は、国守の代理で現地に行って、国守の仕事を代行する役目の人ということなので、そんな下っ端の家来で務まるものなのかと疑問に感じた。そして、そもそも目代は家来なのだろうかという疑問も生まれてきた。あきおぎの出自にも関わることなので、気になって、芳野は、この疑問を質してみようと思った。
「目代と言うのは家来なのですか?」
「家礼?まあ、家人の一人を行かせることが多いのは事実だね。しかし、なぜ、また、そんなことが知りたいんですか?」
「いえ、ここに来てから、わからないことが多いものですから、いい機会だと思って、お尋ねしてみました。失礼しました。」
「いや、責めてるわけではないんですが、結構、質問攻めですな。」
そう言って、信直は笑った。
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