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七、三条烏丸の御所
(二十二)
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信直は白湯を飲み干すと、芳野に向かって、
「そろそろお屋敷に戻りますか?」と声をかけた。
芳野の方も、話のネタもなくなったので、潮時と思い、同意した。
信直は、奥に向かって、屋敷に戻る旨を告げた。すると、直垂の男が簀子に出て来て、
「お戻りになりますか?」と確認しきたので、信直は頷くと、「太刀を持って参れ。」と命じた。
「承知いたしました。」と、直垂の男は返事すると、簀子を歩いて奥に消えた。
暫くして、直垂の男は、太刀を捧げて帰って来た。信直は立ち上がり、革緒を腰に巻いて太刀を下げると、芳野に向かって、
「では、戻りましょう。」と声をかけて、簀子から台に下りて、庭先に下りた。芳野も従った。
「では、屋敷に戻る。留守を頼む。」
そう言って、信直は透打門から室町小路に出て、来た時の経路の逆を歩いて、駿河守邸に戻った。芳野も信直の後に従い、駿河守邸に戻ると、信直が修理に到着を報告している間に、西中門から中門廊にあがり、暫く誰か来るのを待った。信直が戻って来るのが先か、修理が出迎えに来るのが先か、わからないが、暫く待って、誰も来なければ、北の対の自室に勝手に戻ろうと決めていた。だが、程なくして、修理が現れて、北の対の自室まで案内されて、その後、修理はどこかに去って行った。家中の一切を任されているだけあって、忙しそうだった。信直は戻ってこなかった。
既に日は傾いていて、夕闇が迫ってくる時間であった。夕方の余光がまだ地面を弱々しく照らしていたが、辺りは急速に暗くなっていて、夜はすぐそこまで迫っていた。
芳野は部屋に着くと、寝転がっていたが、間もなく夕餉が供され、それを食すと、ぼんやりと時をやり過ごすうちに、眠気に襲われてきたので、着替えて就寝した。恐らく夜の七時を過ぎるくらいだろうと思った。
床に就いてから、間もなく、眠りに沈んだ。
何か、自分に声が掛かっているような気がして目が覚めた。暗い中、目を開けて周囲を見回すと、障子の隙間から光が漏れている。まだ、寝ぼけ眼で意識は朦朧としている。
「起きてください。駿河守様がお召しです。」
修理の声であった。
(なんで、こんな時間に?)
芳野の意識では、深夜の感覚であったから、皆が寝静まった夜中に、叩き起こされる理由がわからなかった。実際、時刻は子の刻(午後十一時から午前一時)の深夜であった。部屋の中に充満していた寒気にやられて目が覚めた。
「何か、あったのですか?」
「とにかく、すぐに駿河守様の御前にお越しください。他にも、急ぎ、声掛けするところがありますので、失礼いたします。寝殿までの行き方はお分かりいただけますよね?」
もう、何回も歩いているので、行き方は承知している。
「はい、大丈夫です。」
「では、失礼いたします。まもなく八重が参りますので、後のことは八重にお聞きください。」
そう言って、修理は紙燭を持って去って行った。また、部屋の中は暗くなった。
「そろそろお屋敷に戻りますか?」と声をかけた。
芳野の方も、話のネタもなくなったので、潮時と思い、同意した。
信直は、奥に向かって、屋敷に戻る旨を告げた。すると、直垂の男が簀子に出て来て、
「お戻りになりますか?」と確認しきたので、信直は頷くと、「太刀を持って参れ。」と命じた。
「承知いたしました。」と、直垂の男は返事すると、簀子を歩いて奥に消えた。
暫くして、直垂の男は、太刀を捧げて帰って来た。信直は立ち上がり、革緒を腰に巻いて太刀を下げると、芳野に向かって、
「では、戻りましょう。」と声をかけて、簀子から台に下りて、庭先に下りた。芳野も従った。
「では、屋敷に戻る。留守を頼む。」
そう言って、信直は透打門から室町小路に出て、来た時の経路の逆を歩いて、駿河守邸に戻った。芳野も信直の後に従い、駿河守邸に戻ると、信直が修理に到着を報告している間に、西中門から中門廊にあがり、暫く誰か来るのを待った。信直が戻って来るのが先か、修理が出迎えに来るのが先か、わからないが、暫く待って、誰も来なければ、北の対の自室に勝手に戻ろうと決めていた。だが、程なくして、修理が現れて、北の対の自室まで案内されて、その後、修理はどこかに去って行った。家中の一切を任されているだけあって、忙しそうだった。信直は戻ってこなかった。
既に日は傾いていて、夕闇が迫ってくる時間であった。夕方の余光がまだ地面を弱々しく照らしていたが、辺りは急速に暗くなっていて、夜はすぐそこまで迫っていた。
芳野は部屋に着くと、寝転がっていたが、間もなく夕餉が供され、それを食すと、ぼんやりと時をやり過ごすうちに、眠気に襲われてきたので、着替えて就寝した。恐らく夜の七時を過ぎるくらいだろうと思った。
床に就いてから、間もなく、眠りに沈んだ。
何か、自分に声が掛かっているような気がして目が覚めた。暗い中、目を開けて周囲を見回すと、障子の隙間から光が漏れている。まだ、寝ぼけ眼で意識は朦朧としている。
「起きてください。駿河守様がお召しです。」
修理の声であった。
(なんで、こんな時間に?)
芳野の意識では、深夜の感覚であったから、皆が寝静まった夜中に、叩き起こされる理由がわからなかった。実際、時刻は子の刻(午後十一時から午前一時)の深夜であった。部屋の中に充満していた寒気にやられて目が覚めた。
「何か、あったのですか?」
「とにかく、すぐに駿河守様の御前にお越しください。他にも、急ぎ、声掛けするところがありますので、失礼いたします。寝殿までの行き方はお分かりいただけますよね?」
もう、何回も歩いているので、行き方は承知している。
「はい、大丈夫です。」
「では、失礼いたします。まもなく八重が参りますので、後のことは八重にお聞きください。」
そう言って、修理は紙燭を持って去って行った。また、部屋の中は暗くなった。
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