128 / 155
七、三条烏丸の御所
(二十七)
しおりを挟む
御所から少し離れた三条大路南の室町小路沿いの築地塀の傍で、こんなやり取りをしていた間に、御所の辺りの築地塀の向こうには、はっきりと明るくなっているところが見えて来て、黒い煙の影が上がっているように感じた。芳野は、煙が上がっているようだと思ったが、あまり気に留めなかった。芳野は戦闘の現場を見たことがなかったので、黒煙が上がっていることの意味をわかっていなかった。しかし、三郎は、それに気づいて、すぐに何が起こっているか理解したようだった。
「煙があがっているのでは?」と言って、御所の方を指差した。
そう言われて水干の男は振り返ると築地塀の上から闇夜にオレンジ色の明るい部分と黒い煙の影を認めて、「御所に火を掛けたのか?」と呟くと、三郎は冷静な声で、「そのようだな。」と相槌を打った。
「御所に火を掛けたか。中に院や女院もいらっしゃるというのに。」
「火を懸けて、どこかに隠れている少納言入道様を燻り出そうとしているんじゃないのか?」
「貉でも狩るみたいにか?…そうかもしれんな。出てきたところを門前で搦め取ろうという算段だろう。あるいは、そのまま焼き殺すつもりか。」
三人は、塀の向こうに上がる黒煙と、明るくなったところを呆然と見つめていた。
ここで、三郎は、ふと、重大な事実に気づいたのか、表情を硬くした。
「もう少し御所の近くまで行って様子を見よう。まだ、中に姫君がおられたら危ない。」
この言葉で、残りの二人も、危険な状況になっていることに気づいたのか、焦り始めた。
「そうだ。これはまずいぞ。どうこう言ってる場合じゃない。姫君を今すぐ連れ出さねば。」
水干の男が、そう言うと、三人は三条大路を横切って室町小路を築地塀沿いに北に、御所の西門の方に近づいて、室町小路を挟んで御所の西にあった民家と民家の間の小径に隠れて、様子を伺った。この辺りの民家では、外の騒ぎに気付いたのか、明かりをつけているところがいくつかあった。ただ、目立つのを恐れてか、ささやかな明かりだった。しかし、それでも近くに行けば地面を薄ぼんやりと照らし出すには十分なものだった。
「どうする?このままだと姫君は火に巻かれてまずいことになるぞ。」と長刀の男は、不安を口にした。
「しかし、門前には、まだ、大勢の武者が詰めている。中に入る隙はなさそうだ。」と三郎が状況を分析すると、水干の男は、
「我々だけでは、あの人数を相手にするのは無理だ。」と言って同意した。長刀の男も頷いた。
「煙があがっているのでは?」と言って、御所の方を指差した。
そう言われて水干の男は振り返ると築地塀の上から闇夜にオレンジ色の明るい部分と黒い煙の影を認めて、「御所に火を掛けたのか?」と呟くと、三郎は冷静な声で、「そのようだな。」と相槌を打った。
「御所に火を掛けたか。中に院や女院もいらっしゃるというのに。」
「火を懸けて、どこかに隠れている少納言入道様を燻り出そうとしているんじゃないのか?」
「貉でも狩るみたいにか?…そうかもしれんな。出てきたところを門前で搦め取ろうという算段だろう。あるいは、そのまま焼き殺すつもりか。」
三人は、塀の向こうに上がる黒煙と、明るくなったところを呆然と見つめていた。
ここで、三郎は、ふと、重大な事実に気づいたのか、表情を硬くした。
「もう少し御所の近くまで行って様子を見よう。まだ、中に姫君がおられたら危ない。」
この言葉で、残りの二人も、危険な状況になっていることに気づいたのか、焦り始めた。
「そうだ。これはまずいぞ。どうこう言ってる場合じゃない。姫君を今すぐ連れ出さねば。」
水干の男が、そう言うと、三人は三条大路を横切って室町小路を築地塀沿いに北に、御所の西門の方に近づいて、室町小路を挟んで御所の西にあった民家と民家の間の小径に隠れて、様子を伺った。この辺りの民家では、外の騒ぎに気付いたのか、明かりをつけているところがいくつかあった。ただ、目立つのを恐れてか、ささやかな明かりだった。しかし、それでも近くに行けば地面を薄ぼんやりと照らし出すには十分なものだった。
「どうする?このままだと姫君は火に巻かれてまずいことになるぞ。」と長刀の男は、不安を口にした。
「しかし、門前には、まだ、大勢の武者が詰めている。中に入る隙はなさそうだ。」と三郎が状況を分析すると、水干の男は、
「我々だけでは、あの人数を相手にするのは無理だ。」と言って同意した。長刀の男も頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる