天孫降臨

斐川 帙

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二、アイル橋のたもと

越前、敦賀までの道行き (2)

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 なぎは、窓の外を眺めながら、独り言のように、話しかけてきた。
「雨と風が激しくなってきたわね。」
「なぎがいるのに治まらないね。」
 なぎは、気づいたように振り返って、「・・・」、何か言いたそうだったが、また、窓の外に視線を戻した。
「今日は違うのよ。」
「何が?」
 なぎは黙っていた。
 なぎは、俺の手を握って、引き寄せ、自分の頬に押し付けた。俺は、周囲の目がこちらに向いていないのを確かめて、なぎの首筋にキスをした。なぎは、もたれかかってきた。
 なぎの肩を抱きながら、とても父娘のすることじゃないなと感じながら、しかし、この状況があまりに自然に受け入れられているので、この子が半分、女神ひめかみの血が入っているからだろうかなどと、あまり根拠のない理屈で納得しようとしていた。
 なぎの視線は、ずっと、窓外に向いていた。
「海も凪いでばかりじゃ、死んじゃうのよ。荒れるのは生きてる証ね。」
 はくたかは、新潟から富山に入ろうとしていた。北陸本線のレールは、海際のぎりぎりに敷かれていて、積み重ねられたテトラポットの群れに、荒波が激しく叩きつけられて、砕け散る波頭が、列車にかかろうかという勢いだった。
 雲は鉛色に重苦しくたれ込め、波は激しく砕けていた。俺は、その光景に一瞬見とれた。
「荒れる日本海、絵になるよな。」
 なぎが、振り返った。目がきつくなっていた。ひるんだ俺は、なぎと見合う感じになった。
「荒れるといろいろあるのよ。」
 俺は黙っていた。
「何事にもね、凪いでいるばかりじゃ、腐っていって、死んじゃうのよ。時々、生きているから、荒れる。全体が生きていると、内部でぶつかり合って、互いに損ない合って、傷ついて、悲惨なことになって、でも、時間が経つと、なかったことのように、また、生きていく。荒れている現場は、結構、残虐かもね。」
 黙って聞いていたが、説教臭くなってきたので、「難しい話だね。俺にはわからないな。」と話の腰を折ってみた。
「凪いで荒れて、その繰り返しで、生きていく。生きている以上、荒れる事はあるのよ。」
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