天孫降臨

斐川 帙

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三、稲佐の浜

宇都宮二荒山神社 (2)

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 暫くして二人やってきて、男の両隣に腰を下ろした。
「こちらの方は大物主命おおものぬしのみことでいらっしゃいます。天照大神あまてらすおおみかみとともに、我ら一族の祖神おやがみであります。こっちは、私のひ孫で、奈良別王ならわけのきみ大雀命おほさざきのみことの御代に下毛野しもつけぬ国造くにのみやつこに就任した際、私をこの社に祭祀しまして、大物主命には相殿あいどのにさせて頂きました。本来、ここは私が毛野けぬに入りました折りに大物主命をお祭り申し上げた地ですので、心苦しいのではありますが。」
 大物主命と紹介された男は、見た目、二十代後半、きりっとしてなかなかの美男子に見える。物腰もスマートで、しかし、なよなよした感じはなくてどっしりと構えていて、目が射抜くような強さを湛えていながら、引きつける何かを持っていた。不思議な雰囲気を持った青年だった。
 一方、奈良別王と紹介された男は、四十代半ば、豊城入彦と同じ年代に見える。ただ、体型は、豊城入彦と違ってやせていて小柄である。時々笑ったときに見える前歯が欠けていて、どこか貧相な容貌に見える。
 俺の隣に寄り添うように座っている巫女が盃に酒を注いだ。見ると全員の盃に酒が注がれている。料理をつつき始めると、どこからかしょう篳篥ひちりきの音が聞こえてきた。つづみの音もする。すると、巫女が四人、舞いを舞い始めた。野を飛び回る蝶のように四人の巫女は白い衣を翻して舞い回る。
御諸みもろの山の神であらせられる大物主命は、わが母方の一族と縁が深く、それもあって、毛野に遣わされたときに、この丘にお祀り申し上げたわけでしてね。私の育ったところは木の国(紀伊国)の山深い里でしたが、国造を賜った家でもあったので、まあ、そこそこの権勢もあったわけですが。ちょっと、自慢が入ってますかね。」
 そう言って、豊城入彦は笑った。
「私の頃は、まだまだ、世の中も平らかでなくて、私が毛野に遣わされたのも、その辺の事情があるわけですが、まあ、毛野というところは、そのころの東国では、なかなか開けたところでしてね、でも、特に強大な勢力もなくて、大小の村々が互いに共存して大きな国を作っているような所でした。でも、天皇すめらみことには従順とは言えなくてね、なかなか、我々は入れなかったわけです。そこに、まあ、私が多くの民を連れて入部して、徐々に毛野を支配下に置いていったわけです。結構、苦労しましたけどね。何度か、従わない村を武力で制圧しましたよ。大分、人も死にました。しかし、仕方のないことですからね、従わないのですから。」
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