天孫降臨

斐川 帙

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三、稲佐の浜

宇都宮二荒山神社 (3)

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 隣で奈良別王がうなずいて聞いている。
「そんな感じでひ孫の代には、我が一族は毛野に一大勢力となって君臨したわけです。そういったわけで、この奈良別王が下毛野の国造を賜ったということですな。」
 今度は、奈良別王が口を開いた。体躯に似合わず野太い声である。
「私の頃には、毛野の他に北武蔵も一部、我々の影響下でした。毛野が下毛野と上毛野かみつけぬに分割されて、下毛野の国造となったわけですが、武蔵にも我々の一族がいました。」
「確か、私がいなくなったあとだったか、相模、武蔵、常陸、ふさの国を征討なされたのは?」
「そうでしたね。」
「私が毛野に入ってがんばってはいたが、私の生きている間は、ついに吾妻あづまの南は治められなかったなあ。まだまだ、未開拓の地も多くて、開墾するにも、いい土地は少なかった。大河も多くて肥沃な地も多かったが、水がなあ・・・。海の近くは湿地帯がほとんどで洪水も多かったし、あとは丘陵地帯。ここは逆に水を引くのが大変だった。結局、平野は多くても、実際に開墾できるところとなると、谷戸の狭いところか池や沼の周辺だけで、なかなか、難しかった。」
「ご先祖のご苦労が偲ばれます。我々の頃までには、あちこち、村々も興って、開拓も進みましたが、それでも、先住民の集落との摩擦も多くて、我が天皇すめらみことまつろわぬ人々の多かった事。独立の気風が漲ってましたから。何度か、征討軍を出して東国の地を制圧しようとしましたが、まあ、大半は従ったんですけどね、騙し討ちに遭いそうになったり、苦しい戦いだったそうです。私の時代には、常陸、毛野辺りまでは、ほぼ、制圧していましたが。」
 このあとも、豊城入彦と奈良別王の思い出話が続いたが、大物主命はずっと口を開かず、黙って、巫女の舞うのを見つめていた。
「ところで、あなたは湍津姫命より使わされた女神ひめかみであるとか?」
 豊城入彦が話を振ると、たまちゃんはうなずいて「ええ。」と返事した。
「新たな血脈を、大八嶋おおやしまの大地に広げられるという事ですな?」
「そうですね。」
 豊城入彦は、満足そうに笑みを浮かべて盃を飲み干した。
「この豊葦原瑞穂国とよあしはらのみずほのくには、われら天皇すめらみことの統治によって平らかに治まり、常世とこよの国として歩みを始めました。途中、幾たびか亡国の危機が訪れましたが、辛うじて国は残り、こうして、生きながらえております。今後も、皇統の血を絶やさず、そのもとにもとの民が豊かに恵みを享受していくことが、この国の喜びでありましょう。」
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