つばき

斐川 帙

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一、鮫洲八幡

(一)

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 今度の職場は品川だ。但し、品川と言っても、品川駅からは少し離れている。品川駅を京急で数駅過ぎた青物横丁で降り、海方向に十分ほど歩いたところだ。周囲には、他にオフィスビルはなく、住宅街や商店街、町工場の中にぽっかりと浮かんだようなビルで、そのため、ビルからの眺望はよく、台地の上に広がる大井町駅界隈のにぎわいや、遠く、再開発で林立した品川の高層ビル群が望める、風光明媚な場所と言ってもいいかもしれない。
 この辺りは、江戸時代には、海岸線が旧東海道のすぐ近くまで迫っていたそうだ。そして、鮫洲からは、鮫洲崎という州浜が突出していたらしい。明治時代に撮られた鮫洲付近の写真を見ると、湾曲した海岸線の様子がよくわかる。当時の鮫洲は幕府に魚を献上する漁村の一つだった。今は、旧東海道から海岸線まで結構な距離があるが、その分は、明治以降の埋め立てでできた土地で、旧東海道から脇にそれて海側に進むと、短いが急な下り坂が出現するのは、そこから砂浜になっていたことを示す痕跡なのだろう。
 旧東海道自体は、今でも以前と同じルートで残っている。明治に入って、道路の整備や鉄道の敷設にあたって、旧東海道沿いは、既に町並みができていたので、それを避けて、ルート設定がなされたそうだ。そのせいで、旧東海道は品川から蒲田くらいまで、一車線の狭い道路として、今に至るまで生き残る事になった。
************

 そう打ち込んで、悟は『送信』ボタンをクリックした。ブラウザに打ち込まれた長文の文章は、瞬く間にネットに吸い込まれていって画面には『送信成功』という文字が躍っていた。『OK』ボタンをクリックすると、しばらく待たされた後、送信した内容で更新された日記が、ぎこちなくブラウザに表示された。
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