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二、再会
(六)
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「私ね。市杵嶋姫の神様のお社に間借りして棲んでるの。姫神様は、とってもきれいな方だけど、なんか、怖くて。見た目は、全然、怖くないんだけど、なんか、感じが、近づきがたいっていうか。ねえ、福島さん、私ね、ずっと、あの島から外に出た事なかったの。だから、嬉しいの。どこに連れってくれるの?」
「どこにって、うちに来るんじゃなかったの?」
さっきは、面白い事を言うなあと感心していたが、再び、頭がおかしい子なのかもしれないと感じ始めた。
「そうね。そうだったわね。でも、どっか連れてって。」
「・・・・どこに?」
「どこでもいい。」
列車は、いくつかの駅に停車したあと、品川駅に入った。この列車は品川止まりだ。ここで都営浅草線に入る列車に乗り換え、三田で三田線に乗り換えなければならない。ただ、もし、つばきの要望に応えるのなら、ここで降りて山手線に乗り換えた方が、渋谷、新宿、池袋など下車駅の選択肢が増えていいのだが、そもそも、どこに連れて行くか、全然、当てがなかったので、ここ品川で乗り換えたとしても、結局、あてもなくさまよう事になるだろう事は容易に想像がついた。悟は、京急線の品川駅ホームで、列車を待ちながら、悩んだ。つばきは、楽しそうに周囲をきょろきょろ見回していた。突然、袖を引っ張って悟の注意を引くと、「あれ何?」と聞いてきた。おかゆを食べさせる店だった。ホームの出口寄りにあった。
「おかゆとパンの店だよ。」
「ふうん。食べよ。」
そう言って、つばきは店に入っていった。レジで、目の前に貼られているメニューを見ながら注文するのだが、つばきは何がいいかわからないので、先に悟に注文させ、同じものを注文した。トレイにおかゆの入ったお椀がのせられ、あいている席に悟が二人分のお椀が置かれたトレイを持って、向かい合って座った。つばきは、椅子が高いので床につかない足をぶらぶらと動かしながら、スプーンをお椀に突き刺しては、山盛りに掬うと口に運んでいた。
五分くらいで平らげてしまうと、つばきは、「お酒、飲みたい。」と言ってきた。悟は、見た目に似合わない、その台詞に、「君は、お酒、飲める年じゃないだろ?」とたしなめたが、つばきは、「でも、飲み慣れてるから、大丈夫。」と意に介さなかった。
「飲み慣れてるって、普段から飲んでるの?」
「どこにって、うちに来るんじゃなかったの?」
さっきは、面白い事を言うなあと感心していたが、再び、頭がおかしい子なのかもしれないと感じ始めた。
「そうね。そうだったわね。でも、どっか連れてって。」
「・・・・どこに?」
「どこでもいい。」
列車は、いくつかの駅に停車したあと、品川駅に入った。この列車は品川止まりだ。ここで都営浅草線に入る列車に乗り換え、三田で三田線に乗り換えなければならない。ただ、もし、つばきの要望に応えるのなら、ここで降りて山手線に乗り換えた方が、渋谷、新宿、池袋など下車駅の選択肢が増えていいのだが、そもそも、どこに連れて行くか、全然、当てがなかったので、ここ品川で乗り換えたとしても、結局、あてもなくさまよう事になるだろう事は容易に想像がついた。悟は、京急線の品川駅ホームで、列車を待ちながら、悩んだ。つばきは、楽しそうに周囲をきょろきょろ見回していた。突然、袖を引っ張って悟の注意を引くと、「あれ何?」と聞いてきた。おかゆを食べさせる店だった。ホームの出口寄りにあった。
「おかゆとパンの店だよ。」
「ふうん。食べよ。」
そう言って、つばきは店に入っていった。レジで、目の前に貼られているメニューを見ながら注文するのだが、つばきは何がいいかわからないので、先に悟に注文させ、同じものを注文した。トレイにおかゆの入ったお椀がのせられ、あいている席に悟が二人分のお椀が置かれたトレイを持って、向かい合って座った。つばきは、椅子が高いので床につかない足をぶらぶらと動かしながら、スプーンをお椀に突き刺しては、山盛りに掬うと口に運んでいた。
五分くらいで平らげてしまうと、つばきは、「お酒、飲みたい。」と言ってきた。悟は、見た目に似合わない、その台詞に、「君は、お酒、飲める年じゃないだろ?」とたしなめたが、つばきは、「でも、飲み慣れてるから、大丈夫。」と意に介さなかった。
「飲み慣れてるって、普段から飲んでるの?」
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