つばき

斐川 帙

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二、再会

(九)

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 つばきの視線は再び、目の前の揚げ出し豆腐に注がれた。しかし、その視線はうつろだった。悟は、返答を促すように、うつむき加減のつばきの顔をのぞき込んだ。
 「私、あのお社のそばに生えているつばきの木の御魂なの。つばきの御魂。わかる?」
 つばきは、悟の目をきっと見つめた。しかし、悟は、投げられた視線をかわすかのように、
 「わかんない。『みたま』って何?宝石?」ととぼけた。つばきは言いたい事を腹の底に押し込めるように押し黙った。
 少しの間をおいて、つばきは、顔を上げた。
 「でも、今夜はおうちに連れてって。あのお社には今晩は戻りたくないの。」
 「どうして?俺んちに来ても、俺しかいないよ。」
 一呼吸置いて、続けた。
 「俺、一応、男だし。正直に言うけど、つばきちゃん、危ない目に遭うかもよ。」と冗談交じりでからかってみた。しかし、つばきは、あっさり、「いいわよ。」と、こともなげに答えた。まるで想定範囲内だと言わんばかりの物言いだったので、軽くいなされた感じの悟は、用意が違って、視線を外すと、「何もしないよ。」と小声で付け加えた。そして、落ち着かない手元をごまかすために、悟は半分ほど酒が残っていた升に形だけ口をつけた。
 ところが、つばきは、物足りなそうに、「何もしないの?」と返してきた。話題を終わらせるために言った軽い捨てぜりふにまともに切り返してきたつばきの言葉にとまどった悟は、「してほしいの?」と、逆に聞き返したが、今度は、さして感情も見せず、「別に。」と応じるだけだった。
 つばきは黙った。雰囲気からは怒ってる感じはしなかったが、恥ずかしがっているわけでもなく、動揺も見えなかった。つばきの本心を測りかねて、不安になった悟は口をつぐんだ。すこし、時間をおいてつばきは、突然、口を開いた。
 「私ね、季節はずれに咲かしたつばきの花なの。見たでしょ、一輪、咲いてたのを。」
 「まあ、そういえば、あったかもしれない。」と、悟は、曖昧な記憶の引き出しから、それらしい映像があるのを見つけたような気がしたが、確信はなかった。それよりも、「自分はつばきの花なの。」と言い切るこの女の子が何を言おうとしているのかが理解できなくて、苦笑いするしかなかった。しかし、悟の困惑をよそにつばきは少し言いよどむ素振りを見せながら更に続けた。
 「だから、何かしてもいいの。ていうか、してほしいの。」
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