つばき

斐川 帙

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二、再会

(八)

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 居酒屋は、見つける事は見つけたが、結構、長時間、探すことになった。なかなか見つからなくて、結局、最後は、地酒が置いてあると謳ってる看板が目に入った途端、ろくに吟味もせず中に入った。内部は、太くてどっしりした柱や鴨居が所々壁から突き出ていて、古い民家の雰囲気を醸し出そうという努力の跡が見えたが、薄暗くて、重苦しい感じがした。
 悟は甘口の出羽桜をつばき用に頼み、自分には、菊水を頼んだ。どうせ、一杯飲めば十分だろうと高をくくって、食べ物をたくさん頼んだ。つばきは、果たして、升になみなみと注がれた酒を、一口、二口、飲むと、もう十分と言った感じで、小皿にのった升を悟の方に押し出した。悟は笑って、それを一気に飲み干した。既に、ほんのり酔いが回っていた悟は気が大きくなっていた。しかし、飲み干した直後に急激に押し寄せてきた酔いに、やはり後悔の念が生じた。一方、つばきは目を丸くして、「すごい。」と感嘆した。悟は、酔いに脳髄がぐらぐら揺れるのを自覚しながら、俄に饒舌になっていくのを感じた。悟は酒に酔うと普段より口数が多くなるのだ。
 「なあ、つばきくん、君は一体どういう子なんだい?さっきから変な事ばっかり言って。」
 悟は、飲み干した升をテーブルの端に置くと、まだ、酒の残っている自分の升に視線を落とした。口を付けるのは勇気が要った。
 「変な事じゃないもん。私、ほんとのことしか言ってないもん。」
 「だって、市杵嶋姫の神様のお社に間借りしているって、どういう意味なんだい?俺には、全然、言っている事がわからないぞ。」
 問いかけたことを確認するように、悟はつばきを見た。つばきは、うつむき加減で、目の前の揚げ出し豆腐をつついていた。
 「どういう意味って、そういう意味だもん。何がわからないの?」
 つばきも顔を上げて悟を見た。つばきの目は、少し寂しげな憂いをたたえているように見えた。
 「君、変だよ。あんな小さな建物に住めるわけないじゃん。ほんとはどこに住んでるの?親とか心配してんじゃないの?」
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