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六、五年ぶりの会話
(三)
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「そうね。同い年だから、二人とも三十路になってることになるわね。でも、そういう年齢の話はしたくないな。他の話題にしない?」
「いやね、あれから、五年経ってんだなと思うと、それが今の年齢で実感できたりするんだよな。」
照代はふうんとわかったような、わからないような曖昧な相づちを打って、しばらく黙った。
「やっぱり聞きたい?」
何の事を言っているのか、宮本にはすぐわかった。
「聞きたいね。突然だったからね。」
「そうね、気になるわよね。でも、言わない。」
「そう?まあ、いいけど。おわったことだし。」
照代は「おわったことだし。」という言葉に反応を示したが、口には出さなかった。代わりに和歌の上の句を口にした。
「いつはりの なき世なりせば いかばかり。私の場合は、嘘でも言ってくれた方が嬉しかったかもね。」
「どういうこと?」
「茂くんの場合、言葉もなかったからね。」
照代が何を言いたいのかわかりかねて、宮本は黙っていた。照代は続けた。
「長くつきあってれば、いつかはゴールがあるものじゃない?そのゴールが見えなかったってこと。」
ぼんやりとわかりかけてきたが、もう一つ、確信の持てなかった宮本は、直接、その言葉を口に出した。
「つまり、結婚ってこと?」
照代は、うなずくかわりに、別の和歌を口にした。
「思ひかね なほ恋路にぞ 帰りぬる。偶然の再会で、また、もと歩いていた道に戻った。」
照代は一人、含み笑いをした。
「・・・戻るかもしれないということかもね。」
要するにプロポーズをしなかったからしびれを切らして別れたということだったのかと宮本は解釈した。言われてみれば、五年の交際は長いことかもしれない、普通のカップルなら五年もつきあっていれば結婚を考えるものなのだろう、宮本は、なんとも整理のつかない心情にさいなまれた。
「うらみは末も とほらざりけり。でも、もう気にしてないから、忘れてね、今言った事。」
照代は、そうフォローしたが、宮本の耳には届かなかった。気持ちがざわついてまとまりがつかなくなっていた。辛うじて、「昔と変わらず和歌は詳しいね。」と応答するのが精一杯だった。
照代は静かに笑っていた。まるでうろたえる宮本の心の内を見透かして楽しんでいるかのようであった。
「いやね、あれから、五年経ってんだなと思うと、それが今の年齢で実感できたりするんだよな。」
照代はふうんとわかったような、わからないような曖昧な相づちを打って、しばらく黙った。
「やっぱり聞きたい?」
何の事を言っているのか、宮本にはすぐわかった。
「聞きたいね。突然だったからね。」
「そうね、気になるわよね。でも、言わない。」
「そう?まあ、いいけど。おわったことだし。」
照代は「おわったことだし。」という言葉に反応を示したが、口には出さなかった。代わりに和歌の上の句を口にした。
「いつはりの なき世なりせば いかばかり。私の場合は、嘘でも言ってくれた方が嬉しかったかもね。」
「どういうこと?」
「茂くんの場合、言葉もなかったからね。」
照代が何を言いたいのかわかりかねて、宮本は黙っていた。照代は続けた。
「長くつきあってれば、いつかはゴールがあるものじゃない?そのゴールが見えなかったってこと。」
ぼんやりとわかりかけてきたが、もう一つ、確信の持てなかった宮本は、直接、その言葉を口に出した。
「つまり、結婚ってこと?」
照代は、うなずくかわりに、別の和歌を口にした。
「思ひかね なほ恋路にぞ 帰りぬる。偶然の再会で、また、もと歩いていた道に戻った。」
照代は一人、含み笑いをした。
「・・・戻るかもしれないということかもね。」
要するにプロポーズをしなかったからしびれを切らして別れたということだったのかと宮本は解釈した。言われてみれば、五年の交際は長いことかもしれない、普通のカップルなら五年もつきあっていれば結婚を考えるものなのだろう、宮本は、なんとも整理のつかない心情にさいなまれた。
「うらみは末も とほらざりけり。でも、もう気にしてないから、忘れてね、今言った事。」
照代は、そうフォローしたが、宮本の耳には届かなかった。気持ちがざわついてまとまりがつかなくなっていた。辛うじて、「昔と変わらず和歌は詳しいね。」と応答するのが精一杯だった。
照代は静かに笑っていた。まるでうろたえる宮本の心の内を見透かして楽しんでいるかのようであった。
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