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七、福岡
(七)
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外はもう夕闇に包まれ、まだ、かすかに明るさは残っていたが、あっという間に空は闇に被われた。しかし、地上は繁華街に林立するビルのネオンで光にあふれ、街は、これからあらたな営みを始める活気に漲っていた。照代は、ホテルのエントランスを出ると、左右を見て、左に曲がった。川を渡って、すぐ、その川沿いに歩いた。ラーメンや焼き鳥などの屋台が連なって、客を待っていた。既に客でいっぱいになっている屋台もあった。照代は、そのうちの一つにまっすぐに向かっていき、のれんをくぐった。まるで、昔から知っているかのような感じであった。屋台のおやじも照代を見ると、「おや、久しかぶりったいね。」と言って、注文も聞かずに、ラーメンを作り始めた。
「今日はお連れさんね?」
「うん、昔、つきおうとった人ね。たまたま会ったけん、つれてきたとよ。」
「そうね。おつれさんは何にするね?」
「同じでよかよ。」
照代が代わりに答えた。おやじは「よっ」と軽いかけ声をかけて、もう一つ、麺を、沸騰するお湯の中に放り込んだ。
照代は、この屋台を以前から知っているようだし、博多弁のような言葉も使っているし、彼女は、昔、この辺りに住んでいた事があるのだろうかと、宮本は訝しんだ。
「私ね、昔、福岡にいた事があるのよ。住んでたのは、博多じゃないんだけど、中央区の警固っていうところなんだけどね。そこのマンションに二年くらい住んでたの。福岡支社に転勤になって、それでなんだけど。そのとき、夜はよく、ここの屋台に来てたのよ。」
「二年もいたのか。博多弁もその間に覚えたの?」
照代は、照れ隠しのように笑った。
「そのころ、ある人とつきあっててね、その人が、地元の人だったのよ。」
「福岡の人?」
「そう。太宰府の近くに住んでた。まあ、その人と、いいところまでいったんだけどね。」
照代の笑顔が寂しいものになっていくのがわかった。宮本はそれ以上、聞くのを止めた。
「ちょっとした事情で、だめになっちゃった。」
ラーメンが二人の前に置かれた。照代は、すぐに割り箸をとると食べ始めた。宮本も食べてみた。
「今日はお連れさんね?」
「うん、昔、つきおうとった人ね。たまたま会ったけん、つれてきたとよ。」
「そうね。おつれさんは何にするね?」
「同じでよかよ。」
照代が代わりに答えた。おやじは「よっ」と軽いかけ声をかけて、もう一つ、麺を、沸騰するお湯の中に放り込んだ。
照代は、この屋台を以前から知っているようだし、博多弁のような言葉も使っているし、彼女は、昔、この辺りに住んでいた事があるのだろうかと、宮本は訝しんだ。
「私ね、昔、福岡にいた事があるのよ。住んでたのは、博多じゃないんだけど、中央区の警固っていうところなんだけどね。そこのマンションに二年くらい住んでたの。福岡支社に転勤になって、それでなんだけど。そのとき、夜はよく、ここの屋台に来てたのよ。」
「二年もいたのか。博多弁もその間に覚えたの?」
照代は、照れ隠しのように笑った。
「そのころ、ある人とつきあっててね、その人が、地元の人だったのよ。」
「福岡の人?」
「そう。太宰府の近くに住んでた。まあ、その人と、いいところまでいったんだけどね。」
照代の笑顔が寂しいものになっていくのがわかった。宮本はそれ以上、聞くのを止めた。
「ちょっとした事情で、だめになっちゃった。」
ラーメンが二人の前に置かれた。照代は、すぐに割り箸をとると食べ始めた。宮本も食べてみた。
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