三首の和歌

斐川 帙

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七、福岡

(六)

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 「黒髪の 乱れも知らず うち臥せば まづかきやりし 人ぞ恋しき。私の好きな歌の一つなの。和泉式部の歌よ。」
 照代は、そう言って、余韻を慈しむように宮本の腕に絡みついた。
 「独り寝の恋しさかしら。最近、わかるようになってきたのよね。この歌を詠んだときの情景が。」
 照代が独り言のように話し続ける傍らで、宮本は、軽い睡魔に襲われていた。そのまま、睡魔に身を任せる事にした。
 どのくらい時間が経ったろうか、目が覚めたので、薄く目を開けてみた。自分の部屋の真ん中に仰向けに寝ているようだった。窓の外は強い風でガラス戸がぎしぎしと音を立てているのが聞こえた。しかし、すぐにまた眠りに落ちた。
 物音がして目が覚めた。照代がベッドの脇で服を着替えている。照代が宮本の視線に気がついて、くるっと背を向けて着替えを続けた。
 「起きたなら言ってよ。恥ずかしいじゃない。」
 照代はそう言うと、ブラジャーだけの背中にシャツを着て、ボタンをひとつひとつ付ける作業に没頭した。
 「これから、中州の屋台に行って、ラーメンでも食べましょ。」
 宮本は曖昧に返事した。照代の着替えは数分で済んだが、次に鏡の前でメークが始まった。手持ちぶさたな宮本は、照代の一挙手一投足を物珍しそうに眺めていたが、照代は気になるのか、盛んにちらちらと視線を投げると、「気になるから、向こうに行ってて。」と言われてしまった。宮本は、ベッドに寝そべった。照代のメークは十分くらいで終わったみたいだった。
 「見てるから、なんか、ちゃんとできなかった。ねえ、変じゃない?」
 そう言って、照代は顔を宮本の前にぬうっと突き出すと、目を見開いた。宮本は、ろくに見もせず、「大丈夫だよ。」と言うと、視線をそらして起きあがった。照代は、不満足そうに、「そう。」と言うと、バッグを手にとって、肩にかけた。
 「行きましょ。」
 宮本は机の上に置いたキーを手に取ると、先に出て行った照代の後を追って、部屋を出た。エレベータで一階に下りるとフロントにキーを預け、外に出た。
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