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十、残り香
(一)
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翌日、オフィスで顧客からの問い合わせメールの返答を送信し、チームミーティングを済ました後、まだ、十二時前だったが、宮本は、少し早めの昼食を取りに、ビルの外に出た。雲一つない晴天で、風もなく、ぽかぽかと暖かい陽気だった。宮本は、近くのラーメン屋で食事を済ますと、近くの公園でベンチに座りながら、照代の携帯電話にかけてみた。しかし、その電話番号は使われていないというメッセージが流れて電話は切れた。自分の携帯電話の受信記録を探して、照代の携帯電話にかけているので、間違うはずはないのだが、再度、かけ直しても、結果は同じだった。宮本は、迷ったが、思い切って、照代の会社の電話番号に電話をかけてみた。しかし、出てきた女子社員は、怪訝そうな口調で、「そのような方は当社には在籍しておりませんが。」と答えた。宮本はばつの悪い思いをしながら、「すいません。」と謝って、すぐに電話を切った。携帯電話を右手で握りしめながら、状況の把握をしようと必死に頭を使ったが、宮本には、全く、現状が理解できなかった。自分が夢の中にいるような気さえしてきた。どこからが夢で、どこからが現実か、宮本の頭の中は、極度に混乱していた。
オフィスに戻ると、まだ、一時前だったが、午後に出かける客先の場所を調べ、地図を鞄にしまいこむと、外出する準備を始めた。今回、訪問するところは、新規の顧客だ。初めての顧客は、いつも、緊張する。やりやすいところか、やりにくいところか、行ってみないとわからないし、細かいところにうるさい現場や、中には提供するサービス以上の作業を要求してくる現場もある。一人で訪問して、一人で作業している宮本には、突然、そういう状況に置かれると、なかなか、断り切れないときも多い。まして、初めての顧客となると、その後のことも考えて、無下に断るわけにもいかないときもある。
宮本は、ため息をついた。ノートパソコンを入れた鞄を肩にかけると、椅子の背にかけた背広を取り、着込んでから、オフィスを出た。今回の現場は、八丁堀だ。京葉線一本で行けるが、駅から少し離れているようなので、ちょっと時間がかかるかも知れない。三時前に着くと連絡しておいたので、時間は大丈夫だろうが、道に迷わないよう気をつけないといけなかった。
昼の一時台に都心に向かう京葉線の車内は空いていた。
車両は、江戸川の河口を過ぎていた。江戸川は、途中で二手に分かれて海に注いでいる。今、渡っているのは千葉側の新江戸川の河口だ。河口の向こうには東京湾が広がり、その両岸には工場や倉庫が建ち並んで無機質な風景を展開している。
オフィスに戻ると、まだ、一時前だったが、午後に出かける客先の場所を調べ、地図を鞄にしまいこむと、外出する準備を始めた。今回、訪問するところは、新規の顧客だ。初めての顧客は、いつも、緊張する。やりやすいところか、やりにくいところか、行ってみないとわからないし、細かいところにうるさい現場や、中には提供するサービス以上の作業を要求してくる現場もある。一人で訪問して、一人で作業している宮本には、突然、そういう状況に置かれると、なかなか、断り切れないときも多い。まして、初めての顧客となると、その後のことも考えて、無下に断るわけにもいかないときもある。
宮本は、ため息をついた。ノートパソコンを入れた鞄を肩にかけると、椅子の背にかけた背広を取り、着込んでから、オフィスを出た。今回の現場は、八丁堀だ。京葉線一本で行けるが、駅から少し離れているようなので、ちょっと時間がかかるかも知れない。三時前に着くと連絡しておいたので、時間は大丈夫だろうが、道に迷わないよう気をつけないといけなかった。
昼の一時台に都心に向かう京葉線の車内は空いていた。
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