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十、残り香
(二)
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宮本は、切れ切れに見える海原を眺めながら、修理に出向いた先で偶然出会ってから昨日の福岡滞在までの照代との短い日々を回想していた。全部、夢だったのか、何度も繰り返し湧いてきた疑問が、また、宮本の脳裏を支配した。それほどまでに、夢とは思えない現実感に満ちた時間だったのだ。これが夢なのか、現実なのか、最終的に結論づけられる決定的な確認手段はないだろうか、宮本は自分の気持ちに決着をつける方法を模索していた。
そのとき、太宰府の遺跡で彼女が口にしていた「さっちゃん」のことを思い出した。「私の事が気になったら、彼女に連絡をとってみて。」と言っていたのを思い出した。まるで、今の自分を見通したかのような台詞だと思った。
宮本は、照代が電話番号をメモした紙を探した。なかった。あのときはいていたズボンのポケットの中に放り込んで、そのままにしていたのを思い出した。とても気になったものの、電話番号がわからないのでは、どうしようもなかった。列車は舞浜に停車した。平日の午後というのにディズニーランドの帰りと思われる家族連れや少女達の一団がホームに群れていた。その光景を見ながら、宮本は、電話をかけて真相を早く確かめたい気持ちで焦っている自分を感じていた。
翌日、左知代に電話をかけたのは、午後五時過ぎだった。どう用件を切り出したらいいか、散々、迷って、やっとかけられたのが夕方の五時だったのだ。帰社時間も迫っている時間に私用の電話をかけるのもどうかと思ったが、今日中にかけたい一心で、結局、かけてしまった。電話をかけてから、宮本は「さっちゃん」の名字が何なのか、知らない事に気づいた。一度しか会った事のない女性に、「左知代さん」と呼ぶのに抵抗を感じて、他の呼び方はないかと考えているうちに、「さっちゃん」が電話に出た。焦った宮本は、第一声をどもってしまった。彼女は、聞き返した。
「すいません。あの、私、宮本と言います。突然のお電話で失礼かと思いますが、早川照代さんのこと、覚えていらっしゃいますか?」
随分、不躾な電話だが、軽いパニックに陥っていた宮本には、その事にはまったく気が回らなかった。相手は、突然の予期しない電話に困惑しているのか、どう返答していいか、困っている様子だった。
「あのお、どちらさまでしょうか・・・」
宮本は必死だった。
そのとき、太宰府の遺跡で彼女が口にしていた「さっちゃん」のことを思い出した。「私の事が気になったら、彼女に連絡をとってみて。」と言っていたのを思い出した。まるで、今の自分を見通したかのような台詞だと思った。
宮本は、照代が電話番号をメモした紙を探した。なかった。あのときはいていたズボンのポケットの中に放り込んで、そのままにしていたのを思い出した。とても気になったものの、電話番号がわからないのでは、どうしようもなかった。列車は舞浜に停車した。平日の午後というのにディズニーランドの帰りと思われる家族連れや少女達の一団がホームに群れていた。その光景を見ながら、宮本は、電話をかけて真相を早く確かめたい気持ちで焦っている自分を感じていた。
翌日、左知代に電話をかけたのは、午後五時過ぎだった。どう用件を切り出したらいいか、散々、迷って、やっとかけられたのが夕方の五時だったのだ。帰社時間も迫っている時間に私用の電話をかけるのもどうかと思ったが、今日中にかけたい一心で、結局、かけてしまった。電話をかけてから、宮本は「さっちゃん」の名字が何なのか、知らない事に気づいた。一度しか会った事のない女性に、「左知代さん」と呼ぶのに抵抗を感じて、他の呼び方はないかと考えているうちに、「さっちゃん」が電話に出た。焦った宮本は、第一声をどもってしまった。彼女は、聞き返した。
「すいません。あの、私、宮本と言います。突然のお電話で失礼かと思いますが、早川照代さんのこと、覚えていらっしゃいますか?」
随分、不躾な電話だが、軽いパニックに陥っていた宮本には、その事にはまったく気が回らなかった。相手は、突然の予期しない電話に困惑しているのか、どう返答していいか、困っている様子だった。
「あのお、どちらさまでしょうか・・・」
宮本は必死だった。
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