放置された日記

斐川 帙

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二〇〇六年七月九日(日) 日曜日

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 いよいよ、明日から会社勤めだ。久しぶりだ。会社にいては、こんな長期休暇はとれないだろうと思いつつ、また、会社勤めをすることに、どうしても気の進まない自分がいるのに手を焼いている。そりゃ、無収入がまずいのはわかるが、また、あの人間関係の中に戻るのかと思うと、気が引ける。まあ、田舎の一軒家でも買い取って、悠々自適に過ごすのが理想だが、そんな財力があるわけでもなく、つてがあるわけでもなく、何もない自分には悠々自適など、夢の又夢というのはわかっているつもりだが、やはり、なんとかならないものかななどとないものねだりをしてしまう。怠惰も重症だ。
 こないだの無謀な突撃のせいで体中に切り傷を負ったが、それが、まだ、ひりひりしている。どう理解していいのかわからないのだが、夢の中の出来事が現実の世界に足跡を残す事があるのだろうか。どう解釈していいのか、頭が混乱している。考えてもすぐに結論がでないと、考える事を放棄してしまうのが俺の癖だが、これもよくわからないので、考えない事にしている。
 昨日の夢では、三崎に潜り込ませた小者からの第一報が入って、それを広村が報告に来た。幸いな事に河崎の重家が、自領に戻ったらしいのだ。しかし、河崎から三崎なのだから、その日のうちにつける距離なので、それで俄に有利になったとも言えないが、自領に戻ったという事で、軍装を解いているということなのだろう。それならば、急にまた合戦ということになってもすぐには駆けつける事は難しいということになる。広村は、吉報だと喜んでいた。俺も、やるなら、今かなという気にもなった。で、早川には話はしているのかと聞くと、既に援軍を打診して、色よい返事を頂いていると。早川では、御館と殿は、国衙にいる事が多いので、若君広匡と、二朗広宗の二人が参陣すると言っている。御館は、渋谷一族の棟梁格の人物で相模権掾、税所目代など国衙の要職を兼任していて、殿と呼ばれている広貞も検非違使所に勤めていて、国司や国の館の警備や盗賊の追捕などで忙しいらしい。普段は、若君と呼ばれている広匡と、早川の二朗と通称されている広宗の二人が所領を守っているとのこと。ただ、広宗は、義朝が鎌倉に来た当初から、鎌倉の館にしょっちゅう顔を出していて、既に郎等になっているとのことだ。今回の三崎攻めの話を聞いて、二人は、即座に参陣を約束、かなりのやる気らしい。で、兵力としては三百くらいは期待できるのではと言っていた。こちらと併せて、六百くらいか。少ないが、相手側は重家の兵力がなくなるから、まあ、十分かもしれない。
 俺としては、今回は、殺さずに屈服させて主従関係にするくらいで済ましたいと思ったが、それには広村は強硬に反対した。父親の広元を討ち取ったのであるから、子の広平を生かしておく訳にはいかない。生かしておけば、我々の命取りになると。広村は、それは強硬に主張するので、俺も勢いに負けて、首を取ると決めてしまった。現代人の俺は、やはり平和ぼけなのか、敵に対して非情に徹し切れていないのかもしれない。この時代では、中途半端な情をかけると、やがて自分に逆効果として跳ね返ってくる。平家が頼朝を生かした結果のように、やがて、身を滅ぼす元になると言う事なのだろう。なんとも複雑な気分だ。敵の兵隊を皆殺しにするわけでもないし、敵の所領の住民に略奪や虐殺を行うわけでもなし、大将の命だけで済ますと思えば、まあ、ましな方かな。
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