放置された日記

斐川 帙

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二〇〇六年七月八日(土) 合戦後

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 翌日、広村、広重親子が俺の館に来て、昨日の合戦のことで何時間も会議。勝敗ははっきりつかなかったが、かといって、勝ったわけでもないので、今後の対応策を協議というところだ。
 広重は開口一番、昨日の戦での俺の無謀な突撃を絶賛。あれがなければ負け戦で終わっただろうと広村も続いた。俺もそう思っていたのだが、一方で無謀は無謀であり、俺の突撃のせいで、三人、討ち死にしたらしいから、手放しでほめられたものではない。褒めちぎられても苦笑いするばかりだ。
 で、俺は、今後の事について、広重に意見を聞いてみた。彼は、再度、合戦が必要でしょうと。決着をつけるべきだと。ただ、今回、河崎の重家が参陣していたらしいので、こちらも、三浦殿だけでなく、上総曹司殿にも協力願った方がいい。それで、三崎荘の広平の館を包囲し、降伏させる。少なくても千騎は必要だろうと。だから、早川の御館の協力も得た方がいい。こちらで五百以上、三浦殿で五百、早ければ早いほどいい、相手が軍勢を立て直す前に攻める。
 話が大袈裟になってきた。このまま、泥沼にはまって、まずいことになるなんてことはないだろうなと内心、不安に苛まれた。
 俺としては、一族間の内輪もめで事を治めたいのだが、三浦や鎌倉の義朝を巻き込んでは、事が大きくなりすぎないかと不安がある。大騒ぎになって、国衙が動き出して、追討官符が出て、朝敵にされて、まあ、そこまではいかないだろうが、しかし、国衙が動き出すと厄介になるかも知れない。でも、鎌倉の義朝に関しては、相模の国司は黙認状態というか、腫れ物のような扱いのようで、多少の事では、動かないだろうという話もある。
 都の広義の方だが、延喜式(十世紀半ばに施行された行政細目を記した書)には、相模は上るのに二十五日、下りで十三日とあって、これをそのまま信じると、早馬が都に飛んだとして、そろそろ、都に一報が届く頃になる。上りというのは、朝廷におさめる年貢米などを運搬しながらの都まで懸かる日数で、下りは、その帰りの日数、つまりてぶらでかかる日数ということなので、早馬をとばせば、遅くても十三日で都まで着いているということになる。
 今頃、広元討ち死にの知らせに驚いて、東国下向の支度でもしているところであろうか。院の武者所に仕えているというから、すぐに戻れるというわけでもあるまい。あるいは、太政官に訴える(上位官庁に提出する文書のこと)を書いているところだろうか。いずれにしても広義が動く前に、事を終わらせておいた方がいいだろう。
 俺は、広重の意見を聞きながら、鎌倉の義朝に助けを求めるのは、どうかなと躊躇した。そこで、今度は、我らと早川の御館に援軍を頼んで、それだけで、攻めたらどうかと答えた。広重は、考え込んだようだったが、広村は、勝算があるだろうかと疑義を差し挟んできた。相手には河崎の重家がいるし、もしかしたら、秩父一族の援軍も頼んでいるかも知れない。
 俺は、まず、三崎の状況を確かめてから、次の一手を考えようと言って、とりあえず、今日の軍議を締める事にした。で、広重に仕える小者を、ひそかに三崎に送る事にした。
 昨日の夢は、ここで終わり。
 現代の方ではとりたてて何もなかったので、書かない。
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