放置された日記

斐川 帙

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二〇〇六年七月七日(金) 出陣

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 七夕。いよいよ、合戦。しかし、大どんでん返しがあった。いや、正直、命を落とす寸前だった。こんな怖い目に遭うなら、合戦など、二度としたくないと思ったよ。ほんとに危なかった。
 戦場はかねての約束通り逗子の海岸近くの平坦地。陣容を整えて、互いににらみ合い。やがて、名乗りが始まって、矢合。夕立のように矢が降ってきて、こちらも応戦。三十分くらいか、広平軍の背後に三浦の軍勢が出現して、明らかに相手が動揺したのを見て取って、こちらは、一気に攻め込もうとしたところ、なんと、横あいから別の軍勢が現れた。数にして、数百だが、驚いた自軍の兵は、浮き足だって、陣容が乱れて、収拾がつかなくなった。この混乱に乗じて、新手の敵軍が、俺の軍勢の中に怒濤のように押し寄せてきた。中には俺のすぐ近くまで来て矢を放つやつもいたほど、危ない状況に陥った。
 やばいと感じた俺は、後方に控えて戦況を見ていたのだが、思い切って、うろたえる自軍の混乱の中をつっきって敵の中につっこむことにした。すると、俺の動きを見た広村が、大音声でうろたえる自軍兵士を叱咤し、俺に続いて敵陣のまっただ中につっこんでいった。
 いや、今、思うと無茶な事したなと思う。でも、あのまま、放置したら、混乱する自軍兵士で俺の軍勢は崩壊して、自滅しかねなかったから、ああでもしないとやばかったと思うんだよね。
 でも、さすが、東国の武者ども、大将の俺が敵陣につっこんだせいで、臣下の自分らが遅れて大将が討ち取られたら末代までの恥と一挙にまとまって槍が突き通すようにつっこんでいったものな。すごかったよ、気迫が。そのせいで、今度は相手の軍勢が崩れて、いっぺんに退却モード。でも、俺は、相手が退いていくのを確認したら、深追いせずに引き返した。広村は、大分、追っていったみたいだけど、俺が追わないのを見て、戻ってきた。そして、「追わないのか?」と聞くので、「ここは一旦控えよう。」と言って、自軍が落ち着くのを待ったんだ。
 俺は、丘の麓に陣取って、しばらく休んでた。その間にも、続々と敵の生首が届けられる。あまり、見たくはないのだが、大将なので首実検はしないといけない。三崎の荘民や敵の捕虜を引っ張ってきて、いちいち、首の持ち主が誰かを詰問させる。まあ、その中に三崎の広平はいなかったわけだけど、捕まえた捕虜の中に武蔵河崎の人間がいた。広平は、河崎の秩父重家に援軍を頼んだようだ。横合いから襲ってきたのは、重家の軍勢だったのかもしれない。
 ほんと、危ないとこだった。俺は、半刻ほど、そこにいて、陣を払って、戻る事にした。兵も疲れているし、この状態で三崎の館を攻めるのは、損害が大きくなると懸念したわけだ。
 自邸に戻って、自分の体を見ると、あちこちに無数の切り傷があった。知らないうちにやられてたんだな。ほっとした途端、急に体中がひりひり痛み出したよ。
 傷の手当てして、すぐ寝る事にした。
 で、起きたら現代だったわけだけど。
 不思議なんだけど、夢から覚めても、体中が痛いんだよ。見てみると、傷が無数にある。
 これはどういうこと?
 やばくね?
 あれは、夢のはずだよな。
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