平凡志望なのにスキル【一日一回ガチャ】がSSS級アイテムばかり排出するせいで、学園最強のクール美少女に勘違いされて溺愛される日々が始まった

久遠翠

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第7話「仮初めのパーティー結成」

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 静止した時間の中、月島凛は俺の腕に抱かれたまま、信じられないものを見るかのように目を見開いていた。

 再び動き出した世界。モンスターの咆哮が遠くで響く中、俺たちの間には奇妙な静寂が流れていた。

「やっぱり…あなただったのね」

 先に口を開いたのは月島だった。その声は驚きと、どこか安堵したような響きを帯びていた。
 頬がうっすらと赤く染まっているのは、きっと気のせいじゃない。

「あの夜、私を助けてくれたフードの剣士も。体育祭の、あの走りも…。全部、あなただったんだ」

「…ああ。黙ってて悪かった」

 俺が観念してそう告げると、彼女はふっと息を吐き、どこか納得したように小さくうなずいた。

「ううん。事情があったんでしょう。それより、また助けられたわね。ありがとう、神谷くん」

「礼を言われるようなことじゃ…」

「いいえ。あなたは、私の命の恩人よ」

 彼女はきっぱりと言い切ると、俺の腕からそっと離れて立ち上がった。
 その瞳には、先ほどまでの絶望の色はなく、強い意志の光が宿っていた。

「神谷くん。あなたに、お願いがあるの」

「お願い?」

「この地下ダンジョンの攻略に、力を貸してほしい。あのボスを倒し、ダンジョンのコアを破壊しない限り、この学校の生徒たちが危険に晒され続ける。私一人では、荷が重すぎるわ」

 彼女は俺に向かって、深く頭を下げた。
 学園一の孤高の美少女が、俺に。あまりの光景に言葉を失う。
 断る理由などなかった。そもそも俺が平凡な日常を取り戻すためにも、この異常事態を解決する必要がある。

「…分かった。協力するよ」

「本当!?」

 俺がうなずくと、月島はぱっと顔を輝かせた。
 普段のクールな彼女からは想像もつかない、素直な喜びの表情。そのギャップに、思わず心臓が跳ねる。

「私も行く!」

 そこへ、生徒たちの避難を終えた陽菜が駆け寄ってきた。
 その瞳は心配と、そして強い決意に満ちていた。

「陽菜!? お前は危ないから…」

「危ないのは湊くんだって同じだよ! それに、私には私の役目があるから」

 陽菜は自分の胸に手を当て、まっすぐに俺を見つめた。

「私、ヒーラーなんだ。二人を、後ろから支える。だから、私も連れて行って。湊くんの隣で、力になりたい」

 その真剣な眼差しに、俺は何も言えなくなった。陽菜もまた、覚悟を決めたのだ。

「…分かった。でも、絶対に無理はするなよ」

「うん!」

 俺の許可を得て、陽菜は嬉しそうに微笑んだ。
 その隣で月島が少しだけ複雑そうな顔で陽菜を見ていたが、すぐに表情を改めて口を開く。

「ヒーラーがいるなら心強いわ。日向さん、よろしくお願いするわね」

「はい、月島さん! 湊くんのことは、任せてください!」

「…ええ(なぜそこで神谷くんの名前が?)」

 何やら早くも不穏な火花が見えた気がするが、気のせいだろう。たぶん。

 こうして、ひょんなことから、最強クラスのアタッカーと、規格外のガチャで何でもこなす万能サポーター(?)、そして希少なヒーラーからなる、なんともぎこちない即席パーティーが誕生した。

 俺たちの、奇妙で危険な冒険が、今まさに始まろうとしていた。
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