8 / 17
第7話「仮初めのパーティー結成」
しおりを挟む
静止した時間の中、月島凛は俺の腕に抱かれたまま、信じられないものを見るかのように目を見開いていた。
再び動き出した世界。モンスターの咆哮が遠くで響く中、俺たちの間には奇妙な静寂が流れていた。
「やっぱり…あなただったのね」
先に口を開いたのは月島だった。その声は驚きと、どこか安堵したような響きを帯びていた。
頬がうっすらと赤く染まっているのは、きっと気のせいじゃない。
「あの夜、私を助けてくれたフードの剣士も。体育祭の、あの走りも…。全部、あなただったんだ」
「…ああ。黙ってて悪かった」
俺が観念してそう告げると、彼女はふっと息を吐き、どこか納得したように小さくうなずいた。
「ううん。事情があったんでしょう。それより、また助けられたわね。ありがとう、神谷くん」
「礼を言われるようなことじゃ…」
「いいえ。あなたは、私の命の恩人よ」
彼女はきっぱりと言い切ると、俺の腕からそっと離れて立ち上がった。
その瞳には、先ほどまでの絶望の色はなく、強い意志の光が宿っていた。
「神谷くん。あなたに、お願いがあるの」
「お願い?」
「この地下ダンジョンの攻略に、力を貸してほしい。あのボスを倒し、ダンジョンのコアを破壊しない限り、この学校の生徒たちが危険に晒され続ける。私一人では、荷が重すぎるわ」
彼女は俺に向かって、深く頭を下げた。
学園一の孤高の美少女が、俺に。あまりの光景に言葉を失う。
断る理由などなかった。そもそも俺が平凡な日常を取り戻すためにも、この異常事態を解決する必要がある。
「…分かった。協力するよ」
「本当!?」
俺がうなずくと、月島はぱっと顔を輝かせた。
普段のクールな彼女からは想像もつかない、素直な喜びの表情。そのギャップに、思わず心臓が跳ねる。
「私も行く!」
そこへ、生徒たちの避難を終えた陽菜が駆け寄ってきた。
その瞳は心配と、そして強い決意に満ちていた。
「陽菜!? お前は危ないから…」
「危ないのは湊くんだって同じだよ! それに、私には私の役目があるから」
陽菜は自分の胸に手を当て、まっすぐに俺を見つめた。
「私、ヒーラーなんだ。二人を、後ろから支える。だから、私も連れて行って。湊くんの隣で、力になりたい」
その真剣な眼差しに、俺は何も言えなくなった。陽菜もまた、覚悟を決めたのだ。
「…分かった。でも、絶対に無理はするなよ」
「うん!」
俺の許可を得て、陽菜は嬉しそうに微笑んだ。
その隣で月島が少しだけ複雑そうな顔で陽菜を見ていたが、すぐに表情を改めて口を開く。
「ヒーラーがいるなら心強いわ。日向さん、よろしくお願いするわね」
「はい、月島さん! 湊くんのことは、任せてください!」
「…ええ(なぜそこで神谷くんの名前が?)」
何やら早くも不穏な火花が見えた気がするが、気のせいだろう。たぶん。
こうして、ひょんなことから、最強クラスのアタッカーと、規格外のガチャで何でもこなす万能サポーター(?)、そして希少なヒーラーからなる、なんともぎこちない即席パーティーが誕生した。
俺たちの、奇妙で危険な冒険が、今まさに始まろうとしていた。
再び動き出した世界。モンスターの咆哮が遠くで響く中、俺たちの間には奇妙な静寂が流れていた。
「やっぱり…あなただったのね」
先に口を開いたのは月島だった。その声は驚きと、どこか安堵したような響きを帯びていた。
頬がうっすらと赤く染まっているのは、きっと気のせいじゃない。
「あの夜、私を助けてくれたフードの剣士も。体育祭の、あの走りも…。全部、あなただったんだ」
「…ああ。黙ってて悪かった」
俺が観念してそう告げると、彼女はふっと息を吐き、どこか納得したように小さくうなずいた。
「ううん。事情があったんでしょう。それより、また助けられたわね。ありがとう、神谷くん」
「礼を言われるようなことじゃ…」
「いいえ。あなたは、私の命の恩人よ」
彼女はきっぱりと言い切ると、俺の腕からそっと離れて立ち上がった。
その瞳には、先ほどまでの絶望の色はなく、強い意志の光が宿っていた。
「神谷くん。あなたに、お願いがあるの」
「お願い?」
「この地下ダンジョンの攻略に、力を貸してほしい。あのボスを倒し、ダンジョンのコアを破壊しない限り、この学校の生徒たちが危険に晒され続ける。私一人では、荷が重すぎるわ」
彼女は俺に向かって、深く頭を下げた。
学園一の孤高の美少女が、俺に。あまりの光景に言葉を失う。
断る理由などなかった。そもそも俺が平凡な日常を取り戻すためにも、この異常事態を解決する必要がある。
「…分かった。協力するよ」
「本当!?」
俺がうなずくと、月島はぱっと顔を輝かせた。
普段のクールな彼女からは想像もつかない、素直な喜びの表情。そのギャップに、思わず心臓が跳ねる。
「私も行く!」
そこへ、生徒たちの避難を終えた陽菜が駆け寄ってきた。
その瞳は心配と、そして強い決意に満ちていた。
「陽菜!? お前は危ないから…」
「危ないのは湊くんだって同じだよ! それに、私には私の役目があるから」
陽菜は自分の胸に手を当て、まっすぐに俺を見つめた。
「私、ヒーラーなんだ。二人を、後ろから支える。だから、私も連れて行って。湊くんの隣で、力になりたい」
その真剣な眼差しに、俺は何も言えなくなった。陽菜もまた、覚悟を決めたのだ。
「…分かった。でも、絶対に無理はするなよ」
「うん!」
俺の許可を得て、陽菜は嬉しそうに微笑んだ。
その隣で月島が少しだけ複雑そうな顔で陽菜を見ていたが、すぐに表情を改めて口を開く。
「ヒーラーがいるなら心強いわ。日向さん、よろしくお願いするわね」
「はい、月島さん! 湊くんのことは、任せてください!」
「…ええ(なぜそこで神谷くんの名前が?)」
何やら早くも不穏な火花が見えた気がするが、気のせいだろう。たぶん。
こうして、ひょんなことから、最強クラスのアタッカーと、規格外のガチャで何でもこなす万能サポーター(?)、そして希少なヒーラーからなる、なんともぎこちない即席パーティーが誕生した。
俺たちの、奇妙で危険な冒険が、今まさに始まろうとしていた。
155
あなたにおすすめの小説
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる