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番外編3:夏祭りと恋の火花
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ダンジョン攻略の合間の、束の間の休日。
俺たちは三人で、近所の神社で開かれている秋祭りに来ていた。
「わあ、すごい人! 湊くん、はぐれないようにしないとね!」
「そうね。湊、私のそばから離れないで」
人混みを言い訳に、陽菜と凛が俺の腕を左右からがっちりと掴んでくる。
浴衣姿の二人は普段の百倍は可愛く見えて、心臓に悪い。
せっかくの祭りだ。何か楽しませてやりたい。
そう思った俺は、こっそりと【1日1回ガチャ】を引いた。
『Bランク:お祭りマスターセット』
手にした説明書きを読むと、『絶対に金魚がすくえるポイ』と『百発百中の射的銃(コルク銃限定)』がセットになったアイテムらしい。
よし、これだ。
まずは金魚すくい。俺は手に入れた『絶対に破れないポイ』を使い、巨大な出目金を次々とすくい上げていく。
「すごいわ湊! まるでプロね!」
「湊くん、かっこいい!」
二人に尊敬の眼差しを向けられ、俺は内心でガッツポーズをした。
すくった金魚を二人に一匹ずつプレゼントする。
次は射的だ。『百発百中の射的銃』の権利を得た俺は、店の親父さんが用意したコルク銃を手に取る。
そして狙いを定めて…バン! バン! バン!
景品のぬいぐるみを、次々と撃ち落としていく。
「この大きなクマは、凛に」
「そしてこのウサギは、陽菜に」
俺がぬいぐるみをそれぞれ手渡すと、二人は顔を赤くして、ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめた。
しかし良いところを見せすぎたのが、逆に仇となった。
「湊くん、あっちでリンゴ飴売ってるよ! 私が食べさせてあげる!」
「待ちなさい陽菜。湊はきっと、かき氷の方が食べたいはずよ。私が『あーん』してあげるわ」
「月島さん、抜け駆けはだめ!」
「あなたこそ!」
リンゴ飴とかき氷を両手に、二人が再び火花を散らし始める。
俺はその間で、タジタジになるしかなかった。
夜空に、大輪の花火が打ち上がる。
ドーン、という音と共に夜空が赤や青に染まる。
その美しい光景に、三人はしばし言い争いを忘れ、空を見上げた。
「「きれい…」」
二人が同時に呟く。その横顔は花火の光に照らされて、本当に綺麗だった。
俺は二人が気づかないように、そっと願った。
この騒がしくて愛おしい時間が、ずっと続きますように、と。
ガチャの神様がこの願いを聞いてくれるかは分からない。
でも、きっと大丈夫だろう。
なんたって俺の隣には、最強のヒロインが二人もいるのだから。
俺たちは三人で、近所の神社で開かれている秋祭りに来ていた。
「わあ、すごい人! 湊くん、はぐれないようにしないとね!」
「そうね。湊、私のそばから離れないで」
人混みを言い訳に、陽菜と凛が俺の腕を左右からがっちりと掴んでくる。
浴衣姿の二人は普段の百倍は可愛く見えて、心臓に悪い。
せっかくの祭りだ。何か楽しませてやりたい。
そう思った俺は、こっそりと【1日1回ガチャ】を引いた。
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よし、これだ。
まずは金魚すくい。俺は手に入れた『絶対に破れないポイ』を使い、巨大な出目金を次々とすくい上げていく。
「すごいわ湊! まるでプロね!」
「湊くん、かっこいい!」
二人に尊敬の眼差しを向けられ、俺は内心でガッツポーズをした。
すくった金魚を二人に一匹ずつプレゼントする。
次は射的だ。『百発百中の射的銃』の権利を得た俺は、店の親父さんが用意したコルク銃を手に取る。
そして狙いを定めて…バン! バン! バン!
景品のぬいぐるみを、次々と撃ち落としていく。
「この大きなクマは、凛に」
「そしてこのウサギは、陽菜に」
俺がぬいぐるみをそれぞれ手渡すと、二人は顔を赤くして、ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめた。
しかし良いところを見せすぎたのが、逆に仇となった。
「湊くん、あっちでリンゴ飴売ってるよ! 私が食べさせてあげる!」
「待ちなさい陽菜。湊はきっと、かき氷の方が食べたいはずよ。私が『あーん』してあげるわ」
「月島さん、抜け駆けはだめ!」
「あなたこそ!」
リンゴ飴とかき氷を両手に、二人が再び火花を散らし始める。
俺はその間で、タジタジになるしかなかった。
夜空に、大輪の花火が打ち上がる。
ドーン、という音と共に夜空が赤や青に染まる。
その美しい光景に、三人はしばし言い争いを忘れ、空を見上げた。
「「きれい…」」
二人が同時に呟く。その横顔は花火の光に照らされて、本当に綺麗だった。
俺は二人が気づかないように、そっと願った。
この騒がしくて愛おしい時間が、ずっと続きますように、と。
ガチャの神様がこの願いを聞いてくれるかは分からない。
でも、きっと大丈夫だろう。
なんたって俺の隣には、最強のヒロインが二人もいるのだから。
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