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10.食べなかったチーズケーキ
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オレは最後の講義を受講したあと、またカフェにいた。
カフェ巡りが好きで、ケーキがあるところなら足を運んでいた。
珍しく電車に乗って駅近くのカフェに来ていた。
今日、あんなことがあったせいで、誰にも会いたくなかったからかもしれない。しかし、それでもオレは窓際の席に座り、外を眺める。
テーブルに置かれたチーズケーキにオレはまだ手を付けられないでいた。全然、幸せな気持ちになれなかったからだ。
朝陽が好きなケーキを選んでしまった自分がいたから。
「……ここら辺、大学あるんだ」
自分と同じくらいな人達が駅に向かって流れていく。
その流れの中に1つ大きな渦があった。女の子達が周りにいた。それも腕を組まれていた。
オレはその光景を見入ってしまった。長い襟足に両耳にピアス。少しダボッとした服。何度も見てきた人だった。その人は店内を見ていた。
「……うそ」
小さく漏れた声が聞こえたように中心人物と目線が重なるーー朝陽だった。
朝陽の目が少し見開かれた。
動かない朝陽に女の子達がオレを見る。オレの視線は逃げるように店内を見た。
誰にも会いたくなかったから、少し遠くのカフェまで来たのに、一番会いたくない人に会ってしまった。
「なんでいるんだよ」
朝陽の声がした。椅子が引かれる音がした。
オレは何も言わなかった。なんであんなに拒絶したくせに近寄ってくるのか。未練が残ってしまうのはきっと、朝陽のこういう優しさだ。
「おい、こっち向け」
手首を掴まれた。
「オレは誰にも会いたくなかったから、わざわざ電車に乗ってここまで来たのに」
朝陽に掴まれた手首が熱い。
「まさか、元彼が女の子をあんな引き連れてるとは思わなかった」
胸がぐちゃぐちゃにかき乱されていく。
「可愛い子達ばっかだった」
醜い嫉妬がチーズケーキと共に置かれたコーヒーのようにオレを真っ黒にする。
「あーあ、せっかくここまで来たのに最悪だ」
オレはカバンを持って立ち上がる。
「そのチーズケーキ、間違って注文しちゃったから食べていいよ?好きだろ?やるよ」
オレは朝陽を置いてカフェを出た。
さっきまで朝陽とくっついていた女の子達はオレを見ていた。何か言われると思ったがそういうことはなかった。むしろ悲しそうに、心配そうに見ていた。
その視線から逃げるように足早に駅に向かった。
夕日はいつもより赤かった。その景色はオレにとって重く感じた。自宅までの道のりが遠い。
誕生日を迎えてから、最悪なことばかりだ。
自分への慰めとご褒美のためのチーズケーキも食べて置けばよかった、と今頃になって後悔する。
そんな感傷をぶち壊すかのように複数の足音が聞こえてくる。
「しばらく来なかったのになぁ」
オレは誰もいない、朝陽と過去に戦った廃墟へ入っていく。
カバンを置き、入って来る刺客達を見る。首を鳴らし、指を鳴らした。
今自分の中にある感情を八つ当たりするように刺客達に向かって行った。
「疲れた」
最後の一人がオレの前で倒れる。床に置いたカバンを持ち上げようとすると鈍い音と共に頭に痛みが走る。
真っ赤な夕日が光を増してこの廃墟にも差し込む。最悪だ。まだ一人残っていた。
そのまま、膝が崩れ倒れた。
やばい、落ちる。
掠れ行く視界に耐えようと指先に力が入る。
「おい、お前ら手ぇ出すなっていったよな?」
オレを殴った刺客がすごい音を立てて吹き飛んだ。
聞きなれた声にオレは視線を向ける。朝陽だった。
彼はチーズケーキ食べてくれただろうか。こっちに駆け寄って来る顔を見て、なぜかオレは安心して目を閉じた。
カフェ巡りが好きで、ケーキがあるところなら足を運んでいた。
珍しく電車に乗って駅近くのカフェに来ていた。
今日、あんなことがあったせいで、誰にも会いたくなかったからかもしれない。しかし、それでもオレは窓際の席に座り、外を眺める。
テーブルに置かれたチーズケーキにオレはまだ手を付けられないでいた。全然、幸せな気持ちになれなかったからだ。
朝陽が好きなケーキを選んでしまった自分がいたから。
「……ここら辺、大学あるんだ」
自分と同じくらいな人達が駅に向かって流れていく。
その流れの中に1つ大きな渦があった。女の子達が周りにいた。それも腕を組まれていた。
オレはその光景を見入ってしまった。長い襟足に両耳にピアス。少しダボッとした服。何度も見てきた人だった。その人は店内を見ていた。
「……うそ」
小さく漏れた声が聞こえたように中心人物と目線が重なるーー朝陽だった。
朝陽の目が少し見開かれた。
動かない朝陽に女の子達がオレを見る。オレの視線は逃げるように店内を見た。
誰にも会いたくなかったから、少し遠くのカフェまで来たのに、一番会いたくない人に会ってしまった。
「なんでいるんだよ」
朝陽の声がした。椅子が引かれる音がした。
オレは何も言わなかった。なんであんなに拒絶したくせに近寄ってくるのか。未練が残ってしまうのはきっと、朝陽のこういう優しさだ。
「おい、こっち向け」
手首を掴まれた。
「オレは誰にも会いたくなかったから、わざわざ電車に乗ってここまで来たのに」
朝陽に掴まれた手首が熱い。
「まさか、元彼が女の子をあんな引き連れてるとは思わなかった」
胸がぐちゃぐちゃにかき乱されていく。
「可愛い子達ばっかだった」
醜い嫉妬がチーズケーキと共に置かれたコーヒーのようにオレを真っ黒にする。
「あーあ、せっかくここまで来たのに最悪だ」
オレはカバンを持って立ち上がる。
「そのチーズケーキ、間違って注文しちゃったから食べていいよ?好きだろ?やるよ」
オレは朝陽を置いてカフェを出た。
さっきまで朝陽とくっついていた女の子達はオレを見ていた。何か言われると思ったがそういうことはなかった。むしろ悲しそうに、心配そうに見ていた。
その視線から逃げるように足早に駅に向かった。
夕日はいつもより赤かった。その景色はオレにとって重く感じた。自宅までの道のりが遠い。
誕生日を迎えてから、最悪なことばかりだ。
自分への慰めとご褒美のためのチーズケーキも食べて置けばよかった、と今頃になって後悔する。
そんな感傷をぶち壊すかのように複数の足音が聞こえてくる。
「しばらく来なかったのになぁ」
オレは誰もいない、朝陽と過去に戦った廃墟へ入っていく。
カバンを置き、入って来る刺客達を見る。首を鳴らし、指を鳴らした。
今自分の中にある感情を八つ当たりするように刺客達に向かって行った。
「疲れた」
最後の一人がオレの前で倒れる。床に置いたカバンを持ち上げようとすると鈍い音と共に頭に痛みが走る。
真っ赤な夕日が光を増してこの廃墟にも差し込む。最悪だ。まだ一人残っていた。
そのまま、膝が崩れ倒れた。
やばい、落ちる。
掠れ行く視界に耐えようと指先に力が入る。
「おい、お前ら手ぇ出すなっていったよな?」
オレを殴った刺客がすごい音を立てて吹き飛んだ。
聞きなれた声にオレは視線を向ける。朝陽だった。
彼はチーズケーキ食べてくれただろうか。こっちに駆け寄って来る顔を見て、なぜかオレは安心して目を閉じた。
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