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18. 1人の男として
しおりを挟むオレは目の前に置かれた赤いケーキを食べていた。
窓の外は真っ暗で店内も真っ暗だった。
目の前にいるのは神様の記憶で見た女性だった。赤い椿の着物を着ていた。
「……あなた、やるじゃない」
彼女は白いお団子を食べていた。
「あの人の縛りを解くなんて、すごいわ」
「えっと、椿さん?ですよね」
「そうよ。あの人の空間に入った時、私が貴方の中に入ったみたい」
お団子を食べ終わると椿さんは横に置かれたお茶を飲む。
「ごめんね。私のせいで。もっと強く断れば良かったのよ」
お茶を置くと深く頭を下げられた。オレは、いえ、とだけ伝えた。
「今度はしっかり連れて逝くから。貴方の力、一度貸してくれるかしら?」
「貸すってどうやって」
椿さんはオレの背中に周り、印が描かれている場所に手を触れる。
「貴方はちゃんと帰りなさい。好きな人のところへ。後悔しないように」
「でも、オレ刺されて」
「ーーー大丈夫。貴方のお陰よ、全部。私も決心が付いたの」
後ろにいる椿さんの顔は見えなかったが笑っている気がした。
「貴方も、今度は自信を持って名乗りなさいよ」
オレの過去を覗いたのだろうか。俯くと背中を強く叩かれたような熱を感じた。
「いらっしゃいませー」
はっ、とオレはフォークを皿の上に落とす。
テーブルには沢山頼んだケーキが置いてある。
モンブラン、イチゴタルト、ロールケーキ、ガトーショコラ。
その横には一杯のコーヒー。
賑やかな店内を見る。そして窓の外を見た。
オレは椿さんのお陰で帰って来れた。父さんや母さんにしこたま怒られた記憶がまだ新しい。あの二人があそこまで泣くとは思わなかった。怒られていたのに、ちょっぴり嬉しくて笑うと更に怒られた。
モンブランの頭を掬い口に入れる。ゴロッとした甘い栗が口の中で滑らかなマロンクリームと合わさる。
オレはあれから朝陽と一度も会っていない。
「うんま!」
今日は夏休み最終日。明日から本当に普通の日常が戻って来る。
そして、オレは今わくわくしていた。
「相席、いいかな?」
「どうぞ」
コーヒーとチーズケーキが置かれる。
「すごい美味しそうに食べるね。君、名前なんていうの?」
「……花吹、暖だよ。よろしく。名前、なんていうの?」
「葉山、朝陽。よろしくな、暖」
オレたちはこそばゆくなって腹を抱えて笑った。
「ナンパみたいな口調なんだよっ」
「うるさいな」
朝陽がチーズケーキを一口食べる。
「……また暖と来れて良かった」
「うん」
オレはまたモンブランを口の中に入れた。今度はマロンクリームに隠された生クリームが合わさり、さらに滑らかに口の中で溶けていく。
「うまいなぁ。ほんと」
オレはモンブランの味を噛み締めた。
薄暗い玄関でオレたちはキスをしていた。
「んっ……」
「暖、こっちきて」
朝陽はまた一人暮らしを始めていた。それも同じアパートで同じ部屋だった。オレが好きな朝陽の香りがする。おかえり、と言って抱擁してくれているようだった。
部屋の中は何も変わらなかった。ただ違うのはオレとの写真がテレビボードに置かれていた。前はなかった。
オレは懐かしい部屋のベッドに押し倒される。お互いが惹かれ合うようにまた口付けをする。
少し緊張しているオレの心臓は苦しくなるほど、熱く燃えがっていた。
上着を取られると、朝陽はオレの心臓辺りに指を這わす。
そしてゆっくりと胸に朝陽が頭を乗せる。心臓の音を聴いているようだった。
「あの時、本当に失ったんじゃないかって苦しかった。どうにかなりそうだった」
「……オレも朝陽がいなくなると思って怖かったよ」
静かに抱きしめ合う。
「好きだよ。暖。そばにいて」
朝陽の声は震えていた。オレは優しく頭を撫でる。
「オレも好きだよ、朝陽」
顔を上げた朝陽の瞳は少しだけ潤んでいた。
「辛かった?」
オレは聞いてみたくなった。いくら宿命だったとしても好きな相手との殴り合いはオレも辛かった。
「当たり前だろ。好きでやるやつなんか、いないだろ」
朝陽の瞳から1粒の涙が頬を流れる。
あぁ、好きだな。
オレは朝陽を抱きしめる。
「今めっちゃキスして欲しい」
そう伝えると朝陽の唇が優しくオレの唇に重なり、少しずつゆっくりと深くなっていく。
「んっ……」
オレは朝陽の首に腕を回し、自分からも深く深く繋がりを求めた。
離れていた時間を埋めるように。
「んぁっ……んんっ」
朝陽がオレのそれに触れながら深いキスをする。
朝陽の舌も指も全てが熱い。
「あさ、ひ……も、いいから早く」
オレは早く中で朝陽を感じたかった。まだ触れられていないオレの中は朝陽を欲していた。
「待てって、久しぶりだからちゃんと解さないと」
「早く、早く」
「待てって、ほら解すからーーー」
オレのそこに触れた朝陽の指が一瞬止まる。そしてゆっくりと中に入っていく。
「んんっ…」
朝陽を見ると彼の瞳は鋭くオレを射抜いていた。そして僅かに息を漏らす。
「自分で解してきたのか。お前、ほんと、やばいな」
朝陽は指を中でぐるりと回しゆっくり引き抜く。そして当てがわれた朝陽のそれはとても熱かった。
「優しくできなかったらごめん」
「いいからっ、はやくっ。朝陽がほし…っ!あああっ!」
オレが言い終える前に中に押し入ってきたそれにオレは内腿を震わせた。朝陽の手がオレの頬を優しく撫で、そのまま体のラインに沿って下へと下がっていく。
中では、久しぶりの朝陽をぎゅうぎゅうに締め付けてしまう。
朝陽は眉を顰め、耐えている。優しくしたいのに激しく突きたいという葛藤が見えた。
「朝陽、キスして」
朝陽は激しくオレに口づけをする。熱くなった口内で互いの体液を舐めとるように舌を絡めていく。
その中で少し腰を揺らしてみる。
「あっ…ちょっ……こ、のっ」
上擦った朝陽の声はひどくオレの悪戯心をくすぐった。
「朝陽、かわいい」
そう言って腰を揺らすと首筋を甘噛みされた。
「もう優しくしてやんない」
ゆっくりと抜かれ、一気に奥まで突かれた。
「ああああっ!」
目の前が白くなる。内腿が震えた。いい所を掠めながら最奥を突かれ、オレはあっという間に達してしまう。
自分のものが腹部を汚す。それを朝陽が指で掬い舐めとる。
まるで滴った蜜を味見するように。
腹部を指先で押される。
「暖、この中でしっかりと俺を味わって。俺も暖の中、しっかり味わうから」
「……っ、うん」
オレは腕を伸ばす。朝陽はそれに応えるように上半身を屈める。
「好き」
オレは小さな声で伝える。朝陽の耳にしっかり届いたようで頬にキスを落とされる。
「俺も。ぜってぇ離さないからな」
花吹でも葉山でもない。
1人の男として愛を伝え、愛を貪った。
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