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第7話 バカナティス side:ゼノ
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気を失ってしまったナティスの肩を抱き、目の前の獣人の顔に拳を入れる。ふらり、と倒れた。きっとギフトを流しすぎたのだろう。
ナティスをそっと安全な場所に私の上着を敷いて寝かせた。青白くなっている顔に痛々しい噛み跡。シャツはその血で赤く滲んでいた。
「まさか、お前が私を頼ろうとするとはな」
私はナティスの頬に手を置き、優しく親指で撫でた。
「お前と今度バディを組む相手は獣人嫌いだ。特に男がだめらしい」
団長の執務室に呼ばれ、言われたのがそれだった。
なんでそんな奴が騎士団に入ったんだ、と私は思った。実際、会ってみると少し目つきは悪いが可愛らしい顔をしていた。ブラウンの瞳に柔らかい髪。仲良くできるかもしれないと思った。
「男の獣人かよ」
だが、私の顔を見ただけで嫌悪を表していた。これは無理だな、と思った。
案の定、私のギフトはナティスに届いていない。このままでは私のやるべきことが終わらない。
私は獣鬼となった父親を楽にしてやりたかった。まだ山の中に潜んで隠れているのだろう。倒したという話は聞かない。
早く言ってあげたいのにバディと機能しないまま、1ヶ月が経った。
鍛錬を終え、部屋に戻るとナティスがソファの上で眠っていた。
「はぁ、風邪引くぞ」
そっと頬を手の甲で軽く叩いてみる。ナティスは起きなかった。
「ったく、しょうがないな」
ナティスを抱き上げると意外と軽かった。私より少し背の低い男で劣等感の塊。たまに獣人を嫌う人間はいるがここまで露骨に出してくる奴は珍しい。
「んんっ」
無防備な顔で私の胸に擦り寄るナティスに私は胸がほんのり温かくなった。
ベッドに下ろし、手触りのいいブランケットを掛ける。ふと、柔らかそうな髪に触れてみたくなった。
指先で触れてみると羽のように柔らかかった。
「んーっ」
ナティスは眉を顰め、ブランケットに潜ってしまった。私はそんな姿を見て笑った。
なのに、起きてくれば悪態ばかり。ギフトも渡せない。獣鬼が出たとしても返り討ちに合うだけなのに、立ち向かうバカだった。そして傷を負って団長に怒られていた。
バディを組んで2ヶ月が経った頃、怪我をしたナティスは団長にまた説教を受けていた。
獣人がギフトを授かるのは大体成人してからだ。自分でもギフトは使えるが、大して量は減らない。そろそろ私のギフトの容量が満帆になってしまいそうだった。
そんな中、まさか「体を繋げろ」なんて言われるとは思わなかった。
「じゃんけんで決めよう」
バカだな、と思った。私は考えるフリをしてみた。獣人にじゃんけんは通用しない。なんとなく匂いで分かってしまうから。
私は敢えて言わなった。悔しそうにしているのに、恥じらいがあるのか顔を真っ赤にして私の心をくすぐる。
その唇にキスをしたくなった。してみると意外と嫌がらず私を受け入れていた。汚い、気持ち悪い等言われて拒絶されるかと思った。それがたまらず私はナティスの口内を味わった。
そして、私は大事に大事にナティスを抱いたつもりだった。
なのに、まさか新しいバディを組もうとするなんて信じられなかった。
「私も行く」
「来んな!」
ナティスは1人で私以外の獣人に会いに行ってしまった。とりあえず体を繋げたばかりだから、変な獣人は寄って来ないだろうと思ったのに。
帰宅したナティスのギフトは別の獣人によって上書きをされていた。
首筋から香る別の獣人の臭いにおかしくなりそうだった。
「私じゃなかったら死んでいたぞ」
もっとバディ歴が長ければきっとナティスの首は今頃床に転がっていただろう。
人間がバディ以外の獣人を助けるためにギフトを受け取ってしまったことがあるという噂を聞いたことがある。
その獣人は大量にギフトを流し込み、運悪くいた獣鬼によって殺されてしまったという。
ナティスはきっと事の重大さは分かっていないのだろう。私はその首にかぶりつきたくて仕方がない。
しかし、それをしてしまえばナティスの心はもっと離れていくだろう。
私はナティス顔をちらり、と見て首を甘噛みした。
翌日もまた例の獣人に会いに行くというナティスは具合が悪そうだった。
団長に書類を報告した後、急いで例の寄宿舎に向かった。
ナティスが危険な目に遭うのではないか、と胸騒ぎを覚える。
私の急ぎように何かを察していた団長が門番に連絡を入れておいてくれたらしい。すんなりと中に入ることができた。
ちらほらと数人でまとまって歩いている獣人達がいた。
「……少し聞きたいことがあるのですが」
大きなツノを生やした獣人に話をかける。
「目つきが悪くてブラウンの髪をした男がここに来ただろう。私のバディなんだ。どこに行ったか分かりますか?」
「ああ、あの人間か。ほら、やっぱバディいたんだよ」
横にいる獣人とこそり、と話始める。
「あの、早く教えてください」
私が睨むと遠くにこじんまりと建っている小さな家を指す。
「早く行ったあげた方がいい。あいつはやばいやつだから」
「どういうことですか」
獣人が語ったのはやはりナティスが危険な目に合うことだった。
私は急いでその家まで向かって走った。
ーーあいつ、過去にバディに大量のギフトを流し入れて壊そうとしたんだ。それで、運悪く獣鬼がいて殺されちゃったんだけど。
ずっとバディのせいにしているんだ。その人間はとてもいい奴だったのに。だから、バディ持ちの人間嫌いだと思う。噛み殺されていないか、心配だよ。
ナティス!
私の頭の中にナティスの顔が浮かぶ。悔しそうな顔。怒った顔。赤くなった顔。皮肉を言って笑った顔。
どうか、無事でいて欲しい。
そう願った。
こじんまりした家に着くと扉の前で話し声が聞こえた。ナティスの声だ。
私は息を整え、耳を澄ます。
「お願い、だからっ」
ナティスの声が震えている。泣いているのだろうか。
「……ゼノっ、助けて」
私は瞬時に拳に自分のギフトを込めて壁を殴った。
ナティスは情けない顔をしていた。
体も怪我をしているのかボロボロで、そんな中で私の元へ帰ろうと思ってくれたのだろうか。
私を罵り、嫌いだったはずなのに初めて私を頼った。
それだけで私はナティスのことを愛おしいと思った。
私はそっと名残惜しかったがナティスの頬から手を離す。
「さて、貴方を拘束させてもらいますよ」
「君はバディに捨てられているのに?そいつを助けるの?」
「貴方も聞いたでしょう?私は捨てられていない」
私は怒りをぶつけるように弱りきった獣人を殴り、蹴り倒した。
ナティスをそっと安全な場所に私の上着を敷いて寝かせた。青白くなっている顔に痛々しい噛み跡。シャツはその血で赤く滲んでいた。
「まさか、お前が私を頼ろうとするとはな」
私はナティスの頬に手を置き、優しく親指で撫でた。
「お前と今度バディを組む相手は獣人嫌いだ。特に男がだめらしい」
団長の執務室に呼ばれ、言われたのがそれだった。
なんでそんな奴が騎士団に入ったんだ、と私は思った。実際、会ってみると少し目つきは悪いが可愛らしい顔をしていた。ブラウンの瞳に柔らかい髪。仲良くできるかもしれないと思った。
「男の獣人かよ」
だが、私の顔を見ただけで嫌悪を表していた。これは無理だな、と思った。
案の定、私のギフトはナティスに届いていない。このままでは私のやるべきことが終わらない。
私は獣鬼となった父親を楽にしてやりたかった。まだ山の中に潜んで隠れているのだろう。倒したという話は聞かない。
早く言ってあげたいのにバディと機能しないまま、1ヶ月が経った。
鍛錬を終え、部屋に戻るとナティスがソファの上で眠っていた。
「はぁ、風邪引くぞ」
そっと頬を手の甲で軽く叩いてみる。ナティスは起きなかった。
「ったく、しょうがないな」
ナティスを抱き上げると意外と軽かった。私より少し背の低い男で劣等感の塊。たまに獣人を嫌う人間はいるがここまで露骨に出してくる奴は珍しい。
「んんっ」
無防備な顔で私の胸に擦り寄るナティスに私は胸がほんのり温かくなった。
ベッドに下ろし、手触りのいいブランケットを掛ける。ふと、柔らかそうな髪に触れてみたくなった。
指先で触れてみると羽のように柔らかかった。
「んーっ」
ナティスは眉を顰め、ブランケットに潜ってしまった。私はそんな姿を見て笑った。
なのに、起きてくれば悪態ばかり。ギフトも渡せない。獣鬼が出たとしても返り討ちに合うだけなのに、立ち向かうバカだった。そして傷を負って団長に怒られていた。
バディを組んで2ヶ月が経った頃、怪我をしたナティスは団長にまた説教を受けていた。
獣人がギフトを授かるのは大体成人してからだ。自分でもギフトは使えるが、大して量は減らない。そろそろ私のギフトの容量が満帆になってしまいそうだった。
そんな中、まさか「体を繋げろ」なんて言われるとは思わなかった。
「じゃんけんで決めよう」
バカだな、と思った。私は考えるフリをしてみた。獣人にじゃんけんは通用しない。なんとなく匂いで分かってしまうから。
私は敢えて言わなった。悔しそうにしているのに、恥じらいがあるのか顔を真っ赤にして私の心をくすぐる。
その唇にキスをしたくなった。してみると意外と嫌がらず私を受け入れていた。汚い、気持ち悪い等言われて拒絶されるかと思った。それがたまらず私はナティスの口内を味わった。
そして、私は大事に大事にナティスを抱いたつもりだった。
なのに、まさか新しいバディを組もうとするなんて信じられなかった。
「私も行く」
「来んな!」
ナティスは1人で私以外の獣人に会いに行ってしまった。とりあえず体を繋げたばかりだから、変な獣人は寄って来ないだろうと思ったのに。
帰宅したナティスのギフトは別の獣人によって上書きをされていた。
首筋から香る別の獣人の臭いにおかしくなりそうだった。
「私じゃなかったら死んでいたぞ」
もっとバディ歴が長ければきっとナティスの首は今頃床に転がっていただろう。
人間がバディ以外の獣人を助けるためにギフトを受け取ってしまったことがあるという噂を聞いたことがある。
その獣人は大量にギフトを流し込み、運悪くいた獣鬼によって殺されてしまったという。
ナティスはきっと事の重大さは分かっていないのだろう。私はその首にかぶりつきたくて仕方がない。
しかし、それをしてしまえばナティスの心はもっと離れていくだろう。
私はナティス顔をちらり、と見て首を甘噛みした。
翌日もまた例の獣人に会いに行くというナティスは具合が悪そうだった。
団長に書類を報告した後、急いで例の寄宿舎に向かった。
ナティスが危険な目に遭うのではないか、と胸騒ぎを覚える。
私の急ぎように何かを察していた団長が門番に連絡を入れておいてくれたらしい。すんなりと中に入ることができた。
ちらほらと数人でまとまって歩いている獣人達がいた。
「……少し聞きたいことがあるのですが」
大きなツノを生やした獣人に話をかける。
「目つきが悪くてブラウンの髪をした男がここに来ただろう。私のバディなんだ。どこに行ったか分かりますか?」
「ああ、あの人間か。ほら、やっぱバディいたんだよ」
横にいる獣人とこそり、と話始める。
「あの、早く教えてください」
私が睨むと遠くにこじんまりと建っている小さな家を指す。
「早く行ったあげた方がいい。あいつはやばいやつだから」
「どういうことですか」
獣人が語ったのはやはりナティスが危険な目に合うことだった。
私は急いでその家まで向かって走った。
ーーあいつ、過去にバディに大量のギフトを流し入れて壊そうとしたんだ。それで、運悪く獣鬼がいて殺されちゃったんだけど。
ずっとバディのせいにしているんだ。その人間はとてもいい奴だったのに。だから、バディ持ちの人間嫌いだと思う。噛み殺されていないか、心配だよ。
ナティス!
私の頭の中にナティスの顔が浮かぶ。悔しそうな顔。怒った顔。赤くなった顔。皮肉を言って笑った顔。
どうか、無事でいて欲しい。
そう願った。
こじんまりした家に着くと扉の前で話し声が聞こえた。ナティスの声だ。
私は息を整え、耳を澄ます。
「お願い、だからっ」
ナティスの声が震えている。泣いているのだろうか。
「……ゼノっ、助けて」
私は瞬時に拳に自分のギフトを込めて壁を殴った。
ナティスは情けない顔をしていた。
体も怪我をしているのかボロボロで、そんな中で私の元へ帰ろうと思ってくれたのだろうか。
私を罵り、嫌いだったはずなのに初めて私を頼った。
それだけで私はナティスのことを愛おしいと思った。
私はそっと名残惜しかったがナティスの頬から手を離す。
「さて、貴方を拘束させてもらいますよ」
「君はバディに捨てられているのに?そいつを助けるの?」
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