15 / 36
第1部
14.真実が眠る地下室
しおりを挟む
太陽が真上に上がった頃にオレはやっとベッドから起き上がることができた。
「あー……」
久しぶりに飲みすぎてしまった。
トリスタンは無事に任務に行けただろうか。ズキズキする頭でそんなことを考える。
今日が非番の日で本当に良かった。
二日酔いの頭痛と昨日のトリスタンとの会話から大きくなっていった疑念。
とてもじゃないがきっと仕事にならなかっただろう。
「……ルシアン」
オレはまだルシアンを信じていたい。
ならば自分で確認するしかない、と二日酔いの頭痛と戦いながら服を着替え重い腰を上げた。
外はそろそろ雪でも降るのではないか、と思うくらい冷え込みが増していた。
酔いを覚ますには丁度いい。
非番では初めて来た魔法塔。長い廊下を歩いていれば魔法士達は珍しいものを見るかのようにオレを見ていた。
「テオドールさん、こんにちは。珍しいですね、今日はお休みですか?」
エリオがにこにこと足早にオレの元に駆け寄ってくる。
「あ、あぁ、まぁな。それよりルシアンいるか?」
「ルシアン様なら今は魔獣討伐の件で第1騎士団に行っておられますよ」
「……そうか」
また今度来るか、とも考えたがルシアンの研究部屋で待たせて貰えるか聞くとエリオは快諾してくれた。
ルシアンの研究部屋には久しぶりに入った。最近はルシアンから報告書を持ってきてくれるので行く手間が省けていた。
ソファに腰を下ろしぐるりを部屋を見渡せばあの日のソファが目に入る。
かちゃり、とエリオが温かなハーブの香りがする紅茶をテーブルに置く。
礼を伝え、一口飲むと二日酔いに効いている気がした。、
「……それにしても今日のテオドールさんはくっさいですね」
エリオが鼻をつまんで露骨に嫌な表情をしてくる。
「昨日、トリスタンと久しぶりに呑みに行って盛り上がったんだ」
「そーいえば、この間トリスタンさん。僕にルシアンさんの魔法のこと沢山聞いてきまたよ」
「魔法塔の知り合いってエリオの事だったのか」
珍しい組み合わせだな、と思う。2人はあまり面識がないはずだ。
「最近、仲良くなったんですよー。ほら、僕がルシアンさんのお使いで騎士団に行った時!」
あの時か、とオレは紅茶を啜る。
「トリスタンさんはルシアン様のこと気にされてますけど、僕は一生懸命にテオドールさんのことしてくれてると思いますよ。それに最近、ルシアン様変わられたんですよ」
「……変わった?オレにはいつも通りだったが」
「ルシアン様って自分の研究部屋がもう1つ持っているんですが、それが地下にあるんです。基本ずーっとそこに引きこもってたんですよー。そこすごく薄暗くで僕は苦手なんですけどー」
オレが魔法塔に来た時は大体、この部屋にいたはずだ。地下にいると聞いた事がなかった。
「それなのに最近は地下に籠っていないんです。テオドールさんのところにもわざわざ自ら行かれますし。何かあったらと心配されているんでしょうね」
ーーーオレの知らないルシアンがいる。
「……エリオ、地下の研究室に案内してくれないか?」
「えー!無理ですよー!普通の魔法士は立ち入り禁止なんですよ。僕は直属の部下だからルシアン様がいる時だけ入れただけなんで」
僕が怒られちゃいます、と断られてしまう。
心のどこかで行くな、と言っている自分がいるがルシアンを信じるために行きたい。
「ルシアンからはどこでも入っていいって言われてたんどけどな。オレは」
「ほんとですかー?んー、テオドールさんがそう言うなら、いいのかなー?」
エリオは最後までうーん、と悩んでいたが「ルシアン様が言ったなら」と案内してくれた。
地下までの道はワープが出来るように魔法が施されていた。場所から場所へはこの塔内であれば他の魔法士もできるとの事だった。
暗い廊下を進む。息が白くなるくらい空気が冷たい。
「テオドール様のお陰でルシアン様、最近笑顔も増えたんですよ」
「前まではなかったのか?」
「僕たち下っ端の魔法士達からは氷の麗人なんて言われてました。あ、これはルシアン様に秘密ですよ」
改めてオレはルシアンのことを何も知らなかったんだな、と思う。
本来のルシアンはどちらなのだろう。
「さぁ、着きましたよ。鍵、お渡ししていいですか?」
鍵を受け取り、鍵を差し込むとガチャリ、と重たい音がした。
エリオはオレの顔をみてくすり、と笑った。
「ルシアン様はテオドールさんのこと、本当に大好きなんでしょうね」
「……え?」
「この部屋、僕たち本当に入れないんです。前にルシアン様がいない間に入ろうとしたんですね、ワープで塔の外に追い出されちゃったんですー」
あはは、とエリオは笑う。
「すごく怒られちゃいましたよー。……あれは痛かったなー」
思い出に浸って楽しそうな様子のエリオは魔法で攻撃されたことを話してくれた。ルシアンはエリオこの性格が憎めないのだろう。
オレだったら完全に追い出すかもしれない。
そんなことを帰って行くエリオの後ろ姿を見送りながら思う。
1人だけになると辺りは静かになって不気味さが勝る。
オレは、扉に手をかける。
ルシアンはいつも冷静で穏やかで優しい。エリオの話が本当であればこの部屋にオレが知りたい真実とルシアンの本当の姿を知ることができるのだろう。
オレは意を決して扉を開けた。
「あー……」
久しぶりに飲みすぎてしまった。
トリスタンは無事に任務に行けただろうか。ズキズキする頭でそんなことを考える。
今日が非番の日で本当に良かった。
二日酔いの頭痛と昨日のトリスタンとの会話から大きくなっていった疑念。
とてもじゃないがきっと仕事にならなかっただろう。
「……ルシアン」
オレはまだルシアンを信じていたい。
ならば自分で確認するしかない、と二日酔いの頭痛と戦いながら服を着替え重い腰を上げた。
外はそろそろ雪でも降るのではないか、と思うくらい冷え込みが増していた。
酔いを覚ますには丁度いい。
非番では初めて来た魔法塔。長い廊下を歩いていれば魔法士達は珍しいものを見るかのようにオレを見ていた。
「テオドールさん、こんにちは。珍しいですね、今日はお休みですか?」
エリオがにこにこと足早にオレの元に駆け寄ってくる。
「あ、あぁ、まぁな。それよりルシアンいるか?」
「ルシアン様なら今は魔獣討伐の件で第1騎士団に行っておられますよ」
「……そうか」
また今度来るか、とも考えたがルシアンの研究部屋で待たせて貰えるか聞くとエリオは快諾してくれた。
ルシアンの研究部屋には久しぶりに入った。最近はルシアンから報告書を持ってきてくれるので行く手間が省けていた。
ソファに腰を下ろしぐるりを部屋を見渡せばあの日のソファが目に入る。
かちゃり、とエリオが温かなハーブの香りがする紅茶をテーブルに置く。
礼を伝え、一口飲むと二日酔いに効いている気がした。、
「……それにしても今日のテオドールさんはくっさいですね」
エリオが鼻をつまんで露骨に嫌な表情をしてくる。
「昨日、トリスタンと久しぶりに呑みに行って盛り上がったんだ」
「そーいえば、この間トリスタンさん。僕にルシアンさんの魔法のこと沢山聞いてきまたよ」
「魔法塔の知り合いってエリオの事だったのか」
珍しい組み合わせだな、と思う。2人はあまり面識がないはずだ。
「最近、仲良くなったんですよー。ほら、僕がルシアンさんのお使いで騎士団に行った時!」
あの時か、とオレは紅茶を啜る。
「トリスタンさんはルシアン様のこと気にされてますけど、僕は一生懸命にテオドールさんのことしてくれてると思いますよ。それに最近、ルシアン様変わられたんですよ」
「……変わった?オレにはいつも通りだったが」
「ルシアン様って自分の研究部屋がもう1つ持っているんですが、それが地下にあるんです。基本ずーっとそこに引きこもってたんですよー。そこすごく薄暗くで僕は苦手なんですけどー」
オレが魔法塔に来た時は大体、この部屋にいたはずだ。地下にいると聞いた事がなかった。
「それなのに最近は地下に籠っていないんです。テオドールさんのところにもわざわざ自ら行かれますし。何かあったらと心配されているんでしょうね」
ーーーオレの知らないルシアンがいる。
「……エリオ、地下の研究室に案内してくれないか?」
「えー!無理ですよー!普通の魔法士は立ち入り禁止なんですよ。僕は直属の部下だからルシアン様がいる時だけ入れただけなんで」
僕が怒られちゃいます、と断られてしまう。
心のどこかで行くな、と言っている自分がいるがルシアンを信じるために行きたい。
「ルシアンからはどこでも入っていいって言われてたんどけどな。オレは」
「ほんとですかー?んー、テオドールさんがそう言うなら、いいのかなー?」
エリオは最後までうーん、と悩んでいたが「ルシアン様が言ったなら」と案内してくれた。
地下までの道はワープが出来るように魔法が施されていた。場所から場所へはこの塔内であれば他の魔法士もできるとの事だった。
暗い廊下を進む。息が白くなるくらい空気が冷たい。
「テオドール様のお陰でルシアン様、最近笑顔も増えたんですよ」
「前まではなかったのか?」
「僕たち下っ端の魔法士達からは氷の麗人なんて言われてました。あ、これはルシアン様に秘密ですよ」
改めてオレはルシアンのことを何も知らなかったんだな、と思う。
本来のルシアンはどちらなのだろう。
「さぁ、着きましたよ。鍵、お渡ししていいですか?」
鍵を受け取り、鍵を差し込むとガチャリ、と重たい音がした。
エリオはオレの顔をみてくすり、と笑った。
「ルシアン様はテオドールさんのこと、本当に大好きなんでしょうね」
「……え?」
「この部屋、僕たち本当に入れないんです。前にルシアン様がいない間に入ろうとしたんですね、ワープで塔の外に追い出されちゃったんですー」
あはは、とエリオは笑う。
「すごく怒られちゃいましたよー。……あれは痛かったなー」
思い出に浸って楽しそうな様子のエリオは魔法で攻撃されたことを話してくれた。ルシアンはエリオこの性格が憎めないのだろう。
オレだったら完全に追い出すかもしれない。
そんなことを帰って行くエリオの後ろ姿を見送りながら思う。
1人だけになると辺りは静かになって不気味さが勝る。
オレは、扉に手をかける。
ルシアンはいつも冷静で穏やかで優しい。エリオの話が本当であればこの部屋にオレが知りたい真実とルシアンの本当の姿を知ることができるのだろう。
オレは意を決して扉を開けた。
2
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
身代わり閨係は王太子殿下に寵愛される
雨宮里玖
BL
僕なんかが好きになっちゃいけない相手なんだから……。
伯爵令息の身代わりになって王太子殿下の閨《ねや》の練習相手になることになった平民のラルス。伯爵令息から服を借りて貴族になりきり、連れて行かれたのは王太子殿下の寝所だ。
侍女に「閨事をしたからといって殿下に恋心を抱きませんように」と注意を受け、ラルスは寝所で王太子殿下を待つ——。
アルファの王太子×厩係の平民オメガ
傷跡傭兵の強制結婚-実子かどうかはどうでもいいので義理の息子を溺愛します-
同軸
BL
前の世界で凄惨な死を迎えた傭兵であった自分、シラー・イーグルズアイは神の使徒として異世界に転移してしまう。
現地の法令の元、有力貴族であるロアイト公爵との結婚を強引にも取り付けられ急な結婚生活が始まるが、傷んだ食事を出されたり冷遇されたりと歓迎されていない様子。でも誰も殺そうとしてこないし良いか。
義理の息子が成人するまではしっかり面倒をみてその後に家を出ようと画策するが、ロアイト公爵の様子がどうにもおかしくなってきて……?
ぼくが風になるまえに――
まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」
学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。
――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。
精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。
「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」
異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。
切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。
ダレン×フロル
どうぞよろしくお願いいたします。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!
永川さき
BL
魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。
ただ、その食事風景は特殊なもので……。
元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師
まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。
他サイトにも掲載しています。
【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話
紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。
理想の彼氏はスパダリよ!
スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。
受:安田陽向
天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。
社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。
社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。
ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。
攻:長船政景
35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。
いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。
妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。
サブキャラ
長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。
抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。
兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。
高田寿也:28歳、美咲の彼氏。
そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。
義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる