天才魔法士がオレを離してくれません

湯川岳

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第1部

17.再会

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 オレは、ルシアンの何を今まで見ていたのだろう。 
 隣にいるのが当たり前になっていた。
 あの日、魔法で身体が変わらずいつも通りの毎日だったらオレはきっと「親友」として側にいただろう。
 可愛い婚約者と結婚して幸せそうなルシアンの顔を近くでみて茶化して。そんな未来をオレは想像していた。
 ただ、それはオレが押し付けたオレの夢だった。
 彼はずっと。ずっと、オレだけしか見ていなかったというのに。

赤く染っていく雪はルシアンが使う赤い魔力よりも鮮やかだった。

「ルシアン!!!」

  彼は倒れ行く中でオレを見て笑った。



ーーー遡ること、数時間前。

 「……死ぬって。やめて下さいよ」

 ルシアンならやりかねない。今までのオレの知らなかった部分を聞くとやりそうな気がした。

「まぁ、いい。僕だったらっていう話だしね。イザベラ、一応アレ渡しておいて」

「はい、イザーク様」

 イザベラが液体が入った小瓶を渡す。

「ルシアンが5年前くらい作ったポーションだ。なんでも切断した足でもくっつくらしい。確か副作用は、ちょっと寝すぎちゃうとかだったかな」

 ーーこの人はルシアンに色んな物を作らせ過ぎだろ。

 ルシアンはイザークの言う事はよく聞くらしい。何故だか分からないが、きっと禁書の件もあるのだろうな、と察する。

「何かあったら使うといいよ」

「ありがとうございます」

 嫌な予感が胸を焦らせる。
 イザベラから受け取り、この小瓶を使うことがありませんように、と祈りながら仕舞う。

「この国でルシアンを失うことは非常に困る。彼は僕の貢献者だし、大事な友だ。……頼んだよ、テオドール隊長」

「承知しました。お先に失礼します」

 執務室を出ると準備ができた隊員達の姿があった。

「これより、魔獣討伐に向かう。第1部隊と魔法士がもう既に戦っている!遅れを取るなよ!怪我人も見捨てるな!」

「はっ!」

 隊員達の声が騎士団第3部隊内に響き渡った。



 外は視界が真っ白になるくらい悪かった。それでもオレは魔獣を薙ぎ倒し走る。

「テオドール!先に行き過ぎだ!」

 トリスタンの声が背後から聞こえる。

「オレは先に行く!お前に指揮を任せる!」

 呼び止める声を振り切る。オレは大した魔法は使えない。それでも隊長に選ばれたのは理由があったと自負している。身体に魔力をまとい走る。周囲が風のように過ぎていく。
 道すがら後ろにいる隊員達に負担になりそうな魔獣は倒していった。

 荒くなった呼吸を整え、周囲を見渡す。
魔獣はほとんど倒した気がする。あぶれた弱い魔獣は後ろの部隊が倒してくれるだろう。
 近くに人がいる。第1部隊と魔法士のようだ。
 無我夢中で走って来たが、ルシアンのところまで来れたようだ。
 吹雪が弱まり、視界が開けていく。

 唸り声が聞こえた。
 魔法士達の詠唱が聞こえ、その方向に向かっていく。
 その場所には黒いドラゴンがいた。
 ルシアンの白銀の長い髪が雪と共に揺れていた。

ーーー良かった。無事だった。

 安堵したのもつかの間だった。
 ドラゴンが腕を振り上げルシアンに振り下ろす。
 ルシアンなら避けることなど容易い攻撃だったはずだった。

 全てがゆっくり動く。
 貫いた爪はルシアンを切り裂く。舞い上がった血しぶきは雪に落ち鮮やかな赤い花を咲かせた。

「ルシアン!!!」

 ふらり、と倒れる瞬間、オレと目が合う。ルシアンは笑っていた。

「ばかやろぉぉぉぉ!!!」

 オレは先程と同じ魔法を使い、ドラゴンの首元まで一瞬で行き首を落とした。
 残りの周囲にいた魔獣も蹴散らした。

「ルシアン様!ルシアン様ぁぁあ!!」

 魔法士達が倒れたルシアンの周りにいた。
 エリオは回復魔法をかけているが溢れる血は止まらないようだった。
 オレはルシアンの上に馬乗りになった。

「ルシアン、お前ふざけるなよ!」

「テオドール様、やめて下さい!」

「死んでしまう!」

 魔法士達が泣きながらやめてくれ、と懇願してくる。
 オレはうるさい!と一喝し、ルシアンの胸ぐらを掴んだ。

「……どうして、わざと受けた」

 ルシアンは優しい目で笑う。

「だって……テオの、いない……せか、いは生きて、いけない」

「お前はオレに酷いことしたんだから、嫌われて当然だろ」

「ごめん、ね……」

「許すわけねえよ、バカ」

 横でエリオが涙をボロボロと零す。

「テオドールさんっ!ルシアン様のこと嫌わないであげて下さいっ。お願いだからっ、今はそんなこと言わないでっ」

 他の魔法士からも泣きながら懇願される。部下達に信頼され、死なないでくれ 、と言われているのに当の本人はオレだけしか見ていない。

ーーーどんだけオレが好きなんだよ。

  オレは大事に仕舞っておいた小瓶を出す。ルシアンは何か分かったような顔をする。
 液体を傾けるが飲もうとしなかった。

「お前、オレを1人にする気かよ」

 オレは小瓶の液体を口に含みルシアンに口付けをする。
 久しぶりの口付けは血の味がした。
辺りが静寂に包まれる。
液体をゆっくりと流し込むとルシアンは、それを受け取る。
 ごくり、と飲み込んだ音がした。
 全て飲ませきったあと、口を離すと顔を赤くしたルシアンがいた。
 ルシアンの身体を光をつつ見込む。出血していた所はゆっくりと塞がっていく。

「……好きだ、ルシアン」

 ルシアンは嬉しそうに泣きそうな顔で笑い、そのまま気を失った。

「次、起きたら覚えておけよ」

 オレは、人目も憚らずルシアンに口付けを落とした。




 
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