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第2部
8.帰還
しおりを挟む山には木の実がなり始めた。
オレは木から実を取ると豪快に食べる。
眼下には久しぶりの王都が見えていた。
今回の討伐遠征は過酷だった。しかし、魔獣の巣ごと討伐したことにより、暫くはこういった任務はないだろう。
オレは隊員たちを見回す。誰一人かけなかった。
今の自分にとって1番誇らしく、やっと区切りを付けることが出来た気がした。
「テオドール、傷は大丈夫か?お前が1番酷い」
ウィングが聞いてくる。
「まぁ、痛いけど大丈夫だよ」
腕や背中、腹部には包帯が巻かれている。滲んだ血は止まりつつあるが歩く度に痛いこともある。
早く帰りたくて一人先行してしまったのが原因だった。
本来なら馬に乗るはずが乗れるはずもなく、怪我人ように用意された車両に他の隊員と座る。
山を抜け、王都に入れば住人達が歓迎してくれた。
その光景はとても綺麗だった。
手を振るとじわじわと血が広がって行く。傷口が開いたようだった。
「隊長、それ」
同じく傷を負っていた隊員が滲んでいく腹部をみて青ざめていた。
その顔に気付いた他の隊員達も不安そうな表情になる。
「大丈夫だ。ほら、みんなお前たちを見ている。笑え」
王城に着くと他の部隊がオレたちを待っていてくれた。
イザーク、イザベラ、そしてルシアンもいた。
ルシアンはオレが見つからないのか不安そうな表情をしている。人前なのに取り繕う暇もないようだった。
その姿を見てオレは笑ってしまう。
嬉しかった。ルシアンが待っていてくれたのだ。
「今回の討伐遠征、ご苦労だった。存分に休んでくれ」
イザークの話が終わると残っていた他の隊員達が駆け寄って生きて帰って来れた喜びを噛み締めていた。
ルシアンはまだオレに気付いていないようだった。
「隊長、顔色悪くなってますよ」
自分でも気づかなかったが車両に血溜まりが出来ていた。
「さすがにいてぇし、疲れたかも」
隊員が近くにいたトリスタンとリュークに声を掛ける。青ざめていくリュークはどこかに走り出し、トリスタンはオレの腹部を止血し始める。
リュークが駆け寄ってくる。
「隊長!ルシアン様、ここです!」
「テオ!」
ルシアンと目が合う。
「ただいま」
「テオ!テオ!」
「うるさいなぁ、生きてるって。ちょっと疲れたから寝かせてくれよ」
オレはプツリ、と気を失うように眠った。
目が覚めると見た事があるベッドの上にいた。ルシアンが半年も眠っていた魔法塔の部屋だった。
隣から寝息が聞こえる。
ルシアンだった。1年弱ぶりだが、相変わらず綺麗だった。
オレはルシアンの髪に触れる。
さらり、と指から零れ落ちていく。
残った髪を握り口付けをする。
「テオ、それはどういうキスなの?」
起きて見ていたのかルシアンは嬉しそうに見てくる。
「んー、ただいま、とか?」
「もう聞いたよ、それは」
ルシアンは吹き出して笑う。
オレの手を握るルシアンの手が震えている。
「……っ……」
静かな泣き声が聞こえた。
「ごめんって。泣くなよ」
「怖かった。帰って来たはずのテオはいないし……リュ、あいつが来たと思ったらテオが危ないって呼ばれるし……気絶するし」
「ごめん」
オレはルシアンの頬を手で包む。涙で濡れたエメラルドの瞳は綺麗だった。
涙で濡れた頬に啄むようなキスを落とす。
「待っててくれて、ありがとな」
オレは自分からルシアンに口付けをした。
オレはどうやら3日程、眠っていたらしい。傷口は改良されたポーションで治っていた。他の怪我した隊員達も完治して元気に勤務しているとのことだった。
「なぁ、ここに何のようだよ」
オレはルシアンの研究部屋にいた。
「テオと始まったのはこの部屋だったからさ」
性別を変えられて初めてルシアンと一線を超えた日。
今思い返してもルシアンの執念は恐ろしい。オレは笑ってしまう。
「そうだな。懐かしいな」
ルシアンは引き出しの1枚の汚れた手紙を出す。
「これ、嬉しかった」
それは一言だけ書いたオレが送った手紙だった。
「まぁ、今のオレたちはその言葉が必要かなって思ったんだよ」
照れくさくなった。きっと顔が赤くなっているだろう。オレはルシアンから目を逸らす。
ルシアンはオレの手を取ると口付けをした。
「俺からも言わせてくれ。結婚しよう」
「……おう」
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