天才魔法士がオレを離してくれません

湯川岳

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番外編

授かったもの

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 今日はイザベラに呼ばれ、2人だけで茶会をしていた。

「どうですか?新しい生活は」
 
 ややふっくらとしたお腹。イザークとの子供だ。オレはルシアンから聞いた時、とても嬉しかった。

「ええ、とても楽しく過ごさせてもらっていますよ」

 本格的に子作りを最近始めた。
 イザベラが羨ましい。と少し思ってしまう自分がいる。ルシアンとイザークが貴族を黙らせてくれてはいるが、きっとオレの焦りもいけないんだろう。分かっている。授かりものなのだから。
 子供は奇跡だ。

「……テオドール様、大丈夫ですよ」

 ふわり、と微笑むイザベラにオレも笑い返す。
 じっとイザベラはオレの腹部を見つめた。

「大丈夫、美味しいものを食べてお過ごし下さい。今のうちに食べておいた方がいいわ」

「分かりました。好きなもの食べます」

「そうよ。それでいいのよ」

 イザベラはオレを見ていなかった。にこにこ、とオレの腹部を、見ていた。




 別邸に帰るとビッグキャット達がオレに擦り寄って来る。
 どこへ行くにも共に行動をしたがる。

「ただいま、テオ。どうだった?」

「ルシアン、おかえり。イザベラ様とのお茶会楽しかったよ」

 頬にキスを落とされ、口にもキスされる。

「なんだ、これは」

 ルシアンが間にいるビッグキャット達を退かす。しかし、オレを守るようにまた足にまとわりついてしまう。

「オレも分からないんだよ」

「……テオ、体調に何か変化あるか?」

「いや、なんも?」

「そうか」

 ルシアンは何か考え事をしているようだった。

「イザベラは何か言わなかったか?」

 ーーー美味しいものを食べてお過ごし下さい。今のうちに食べておいた方がいいわ。

 イザベラの言葉が頭に浮かぶ。しかし、特に関係ないことだろう。

「別に言ってなかったけどなー」

「そう、ならいいんだけど」

 ルシアンはまたビッグキャット達を見て悩んでいるようだった。
 オレはこの時、すっかり忘れていた。イザベラは魔力感知に優れた家系だったということを。
 彼女が言っていたこと、あの笑顔、その意味が分かるのは数日後だった。



 オレはいつもの様に第3部隊の訓練場で新人達をみっちり扱いていた。
 ふと、お腹が空いたなと思っていた頃。急に気持ち悪くなった。オレはトイレに駆け込む。

「おぇっ……げほっげほっ」

 内容物は出なかった。しかし、気持ち悪さは一向に良くならなかった。ふらふら、と外に出るとリュークと目が合った。

「テオドールさん!?大丈夫ですか?顔、真っ青ですよ」

「気持ち悪くて……」

 オレはまた吐きそうになる。

「悪い、今日はもう帰る」

「ルシアン様呼ぶので、待ってて下さい」

「いや、いいよ」

 オレはリュークが用意してくれた馬車で別邸に戻った。
 

 帰宅してから食事を摂ったが戻してしまった。オレは病気になったんだろうか。ビッグキャット達がベッドで休んでるオレが心配なのかずっと横にいてくれる。
 ガチャン!と物凄い音が聞こえる。ドタドタと階段が上がる音が聞こえた。扉を開けて入って来たのは息を切らしたルシアンだった。

「テオ、大丈夫?」

「うん」

「ちょっと診るね」

 ルシアンはオレの腹部に優しく手を当てる。ぽわっと流れ込む魔力がとても心地良かった。全身に隅々行き渡っていく。
 気持ち悪さが一時的に良くなっていく。
 
「テオ!」

 嬉しそうにルシアンが顔を上げる。じっと、オレを見てから腹部にキスを落とした。そして優しく抱きしめられる。

「俺たちの子が……」

耳元で聞こえるルシアンの声はふるえていた。

「……え」

「テオの中にいるよ」

 オレはルシアンに抱きついた。嬉しかった。ぎゅっ、とルシアンを強く抱きしめれば、頭を優しく撫でてくれる。
 目頭が熱くなった。

「テオが気持ち悪いのはきっとつわりっていうやつだね。お腹は空いてはいるんだろう?」

「うん」

「ちょっと待ってて」

 部屋を出て行くルシアンを見送りオレはビッグキャット達を抱きしめた。

「お前たち分かってたんだね。ありがとう」

 ゴロゴロと喉を鳴らすビッグキャットがオレに顔を擦りつける。そんなことをしているとルシアンが何かを持ってきた。
 フルーツだった。ひとつひとつ丁寧に剥いてオレの口に入れてくれる。

「……おいしい」

 吐き気が薄れて行く気がした。

「しばらくはこういうものしか食べれないと思う。明日からは教官の仕事は休んで」

「でも」

「無理はダメだよ。テオはもう1人の身体じゃないんだから」

 頭を撫でられる。しばらくってどのくらいなんだろう。1人で別邸にいるのは嫌だった。

「なら、ルシアンと魔法塔に行ってもいいか?」

 ルシアンは少し悩む仕草をした。やっぱり無理なのだろうか。

「じゃぁ、テオが食べられそうなものとベッドとか用意してから連れて行くよ。冷やしちゃ困るしね」

 ルシアンは通信具でエリオに連絡を取り、何かを指示し始める。
 オレはその様子を見ながらうとうととしてきた瞼を擦り、目を閉じた。


 「テオー!」

「パパー!」

 2人の子供がオレ達の周りを走り回っている。
 オレはその様子をルシアンと眺めている。


「ーーゴロゴロ」

 ゴロゴロ?

 目を覚ますと当たりは真っ暗だった。隣にビッグキャットがいた。どうやらオレは夢を見ていたらしい。幸せな夢だった。
 オレはお腹をさする。

「会えるの楽しみにしてるぞ」

「……いい夢でも見たの?」

 どうやらルシアンも横に居たらしい。オレを後ろから抱きしめる。

「うん、幸せな夢だった。本当にそんな現実があればいいのに」

「きっとなるよ」

「うん」

 ルシアンがオレの頭にキスを落とす。

「ごめんね。しばらくは大変な思いさせると思う。テオ、苦しかったりしたら全部俺に吐き出してね」

「ごめん、なんて言うなよ。選んだのはオレだろ」

「無理はしないで」

 オレは幸せだな、と片手はお腹に、もう1つの片手はルシアンの腕に置いた。

「わかってるよ」

 オレは肩に置かれたルシアンの頬にキスをする。

「愛してるって言ってくれよ」

「愛してるよテオ。……ありがとう」

「うん、オレも愛してる」

 ルシアンと目が合う。エメラルドの瞳は少しキラキラとしていた。

「キスしてもいい?」

「してくれよ」

 急に聞いてくるもんだから笑ってしまった。

「必ずテオとお腹の子、守るから」

 そう言ってルシアンはオレにキスをした。

「うん」

 オレはルシアンの頬に触れ深いキスを強請った。



授かりもの  end
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