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第1章:蒼天の神子
9話:助けてもらおう陰陽師
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「そんな急に言われても!せめてもうちょっと時間と情報が欲しい!です!」
「そうですか。まあそうですよね。すみません、少し先走りましたね」
師忠は一瞬だけすまなさそうな顔をして、いつも通りの落ち着いた口調で続ける。
「まず、陰陽師がどういう職種であるかはご存知ですか?」
「まあ、多少は。なんか何でも屋の占い師って感じの人ですよね」
「大体その通りです。様々な分野に精通し、邪気を払い、先の世を予見する。そういった方々です。そして彼らが用いる秘術が」
「陰陽術というわけですね」
「ご名答。唐国の影響を受け、皇国において契神術とは異なる発展を遂げた秘術です。彼らは式神を使役し、自然、そして気脈の声を聴くことが出来る。朝廷における異能力者集団というわけですね」
――式神!実在するのか?それとも迷信?
聞きなれたワードに少年は少し思索にふける。だがこの世界は少し常識が異なるのだ。頭で考えても答えなど出ない。
「さて、陰陽師について共通認識が確認できたところで、彼の紹介を軽くしておきましょうか」
「彼?」
「そう、今回依頼をした陰陽師です。彼の名は」
――陰陽師ってもしかして安倍晴明か!?
安倍晴明。数多くの逸話を残し、今なお語り継がれる伝説の陰陽師。
――そんな超有名人と会えるのでは?
少年はそう期待するが、
「賀茂忠行と言います」
「いや誰?」
全く聞き覚えのない名前が飛び出してくる。少々落胆。
「彼は覆いの向こう側を見ることに秀でております。もしかすると貴方の本名も看破して見せるかもしれませんね」
「覆いの、向こう側…?」
――なんかすごそうな人だけど、話だけじゃ想像もつかないな…
「じゃあ、取りあえず会ってみましょう!」
「それがよろしい」
少年の好意的な返事に微笑む師忠。そして、おもむろに手を掲げる。
「!?」
突如空間に緊張が走る。
部屋自体に変化はない。だが、外に見える風景が二転、三転し、全く違う景色が外に広がった。
「これは!?」
冷静な仁王丸、犬麻呂とは対照的に、少年は動揺する。
「元の場所からは少し距離がありすぎるので少し場所を変えてみました」
平然と離れ業をやってのける師忠。少年は状況に取り残され呆然とする。
「食後の運動がてらに歩いて向かいましょうか」
「あ、え、ええ…」
終始師忠のペースだ。どうやら少年にとって彼は相性が悪いらしい。いや、師忠に相性のいい人などいないのかもしれない。
「そうだ、服装とかこのままでいいんですか?悪目立ちしません?」
「まあ構いませんよ。公的な場ではありませんし、貴方が何者かを理解してもらうにはそちらの方が都合がいい」
「そんなもんですかね」
「さて、では行きましょうか」
師忠が席を立つ。それに仁王丸たちも続き、少年が遅れてついていく。
――そういえばこっちの世界でゆっくり歩くのは初めてか…
そんな感慨を抱きつつ廊下を行く。
にしても広い屋敷である。彼がどのようにして場所を変えたのかは見当もつかないが、さすがに屋敷ごと飛ばしたということはないだろう。
玄関、といっていいのか、そこで靴を履き、これまた広い庭を歩いて門をくぐる。
すると、そこに広がっていたのは時代を感じさせる京のにぎやかな街並みであった。
「昨日の町はすごい荒れてたけど、この辺はそれなりにちゃんとしてるな」
「ええ、この辺りは商業都市として発展しておりますから、治安も良いし、復興も早いのですよ」
「へえ」
たしかによく見ると大路沿いの建物はなにかしらの店のようだ。町を行く人も商売人といった感じである。そして、少年たちの隣を馬車が通り過ぎていく――
「って馬車!?馬車あるの!?なんで?」
少年の記憶が正しければ馬車が日本に普及するのは明治以降のはずだ。なのに平安の町を馬車が通り過ぎていく。それも恐らく庶民を乗せて。流石に違和感を禁じ得ない光景に思わず声を出す。
「なぜと言われましても、近江に都があった時よりありますので。まあ庶民の乗り物ですよ」
仁王丸が少年に説明するが、やはり違和感はぬぐえない。
――ガラスといい馬車といい、微妙に文明レベル進んでないか!?この流れだともう電灯とか出てきそうだぞ…
複雑な思いでどこかちぐはぐな町を少年は進む。よく見ると眼鏡をかけている人もいるではないか!
もう気にするだけ無駄なような気がしてきた。そんな諦観の中、ある一つの疑問が浮かんだ。
「そういえば、師忠さんみたいな身分の人がこう普通に出歩いていいんですか?」
「といいますと?」
「いや、貴族が普通に町を歩いて危険はないのかなあとか。いや、師忠さんに限って言えばないか」
昨夜の戦闘を思い出しつつ一言付け加える。だが一応彼は上級貴族なのだ。もっとこう、護衛がたくさん付いていても良さそうなものだし、庶民も彼を見たら跪くぐらいしてもおかしくなさそうなものだが、その様子は一切ない。
「そうですね、考えたこともありませんでした。まあ従者を多数従えて人払いもした上で町を闊歩する方もいますし、私のようにあまり気にしない人もいますね」
「そんなもんなんだ…」
やはり微妙にイメージと異なるこの世界に困惑する。
――一体どんな進歩を遂げてきたんだ?この世界は。
聞けば聞くほど、見れば見るほどイメージと離れていく。少年は考えることをやめた。
「さて、そろそろ着きますよ」
少し向こうに、それなりの広さの屋敷が見える。師忠邸の三分の一ほどの広さと見えるそれが賀茂邸であろう。
「犬麻呂、屋敷の者を呼んでまいりなさい」
「へーい」
主人に礼節を尽くす仁王丸とは違って相変わらずの犬麻呂。だが、命令には素直に応じて賀茂邸に走っていく。
門番と少々話をしたのち、犬麻呂は屋敷に入っていった。そしてしばらくした後、少年と同い年くらいの人物が犬麻呂と共に出てきて師忠一行を出迎える。やや薄い緑がかった髪、高くも低くもない背丈、そして青と緑のオッドアイ。そんな美少年といったふうの彼は、どこか神秘的な雰囲気をまとっていた。
「宰相殿、よくおいでなさいました。師匠が中でお待ちです。どうぞこちらへ」
そう言い、一行に一礼する。
そして顔を上げると彼は何かに気付いた様子で、少年に近づいてゆき、顔をじっと見た。
「えっと…近くない?」
少年は思わずたじろぐ。
「もしかして、なにか付いてる?」
「ええ。憑いてますね」
彼はニコっと笑い、そう答える。
「貴方が再臨の神子様ですか。初めまして。ワタクシ賀茂忠行の弟子、安倍晴明と申します。今後お見知りおきを」
「そうですか。まあそうですよね。すみません、少し先走りましたね」
師忠は一瞬だけすまなさそうな顔をして、いつも通りの落ち着いた口調で続ける。
「まず、陰陽師がどういう職種であるかはご存知ですか?」
「まあ、多少は。なんか何でも屋の占い師って感じの人ですよね」
「大体その通りです。様々な分野に精通し、邪気を払い、先の世を予見する。そういった方々です。そして彼らが用いる秘術が」
「陰陽術というわけですね」
「ご名答。唐国の影響を受け、皇国において契神術とは異なる発展を遂げた秘術です。彼らは式神を使役し、自然、そして気脈の声を聴くことが出来る。朝廷における異能力者集団というわけですね」
――式神!実在するのか?それとも迷信?
聞きなれたワードに少年は少し思索にふける。だがこの世界は少し常識が異なるのだ。頭で考えても答えなど出ない。
「さて、陰陽師について共通認識が確認できたところで、彼の紹介を軽くしておきましょうか」
「彼?」
「そう、今回依頼をした陰陽師です。彼の名は」
――陰陽師ってもしかして安倍晴明か!?
安倍晴明。数多くの逸話を残し、今なお語り継がれる伝説の陰陽師。
――そんな超有名人と会えるのでは?
少年はそう期待するが、
「賀茂忠行と言います」
「いや誰?」
全く聞き覚えのない名前が飛び出してくる。少々落胆。
「彼は覆いの向こう側を見ることに秀でております。もしかすると貴方の本名も看破して見せるかもしれませんね」
「覆いの、向こう側…?」
――なんかすごそうな人だけど、話だけじゃ想像もつかないな…
「じゃあ、取りあえず会ってみましょう!」
「それがよろしい」
少年の好意的な返事に微笑む師忠。そして、おもむろに手を掲げる。
「!?」
突如空間に緊張が走る。
部屋自体に変化はない。だが、外に見える風景が二転、三転し、全く違う景色が外に広がった。
「これは!?」
冷静な仁王丸、犬麻呂とは対照的に、少年は動揺する。
「元の場所からは少し距離がありすぎるので少し場所を変えてみました」
平然と離れ業をやってのける師忠。少年は状況に取り残され呆然とする。
「食後の運動がてらに歩いて向かいましょうか」
「あ、え、ええ…」
終始師忠のペースだ。どうやら少年にとって彼は相性が悪いらしい。いや、師忠に相性のいい人などいないのかもしれない。
「そうだ、服装とかこのままでいいんですか?悪目立ちしません?」
「まあ構いませんよ。公的な場ではありませんし、貴方が何者かを理解してもらうにはそちらの方が都合がいい」
「そんなもんですかね」
「さて、では行きましょうか」
師忠が席を立つ。それに仁王丸たちも続き、少年が遅れてついていく。
――そういえばこっちの世界でゆっくり歩くのは初めてか…
そんな感慨を抱きつつ廊下を行く。
にしても広い屋敷である。彼がどのようにして場所を変えたのかは見当もつかないが、さすがに屋敷ごと飛ばしたということはないだろう。
玄関、といっていいのか、そこで靴を履き、これまた広い庭を歩いて門をくぐる。
すると、そこに広がっていたのは時代を感じさせる京のにぎやかな街並みであった。
「昨日の町はすごい荒れてたけど、この辺はそれなりにちゃんとしてるな」
「ええ、この辺りは商業都市として発展しておりますから、治安も良いし、復興も早いのですよ」
「へえ」
たしかによく見ると大路沿いの建物はなにかしらの店のようだ。町を行く人も商売人といった感じである。そして、少年たちの隣を馬車が通り過ぎていく――
「って馬車!?馬車あるの!?なんで?」
少年の記憶が正しければ馬車が日本に普及するのは明治以降のはずだ。なのに平安の町を馬車が通り過ぎていく。それも恐らく庶民を乗せて。流石に違和感を禁じ得ない光景に思わず声を出す。
「なぜと言われましても、近江に都があった時よりありますので。まあ庶民の乗り物ですよ」
仁王丸が少年に説明するが、やはり違和感はぬぐえない。
――ガラスといい馬車といい、微妙に文明レベル進んでないか!?この流れだともう電灯とか出てきそうだぞ…
複雑な思いでどこかちぐはぐな町を少年は進む。よく見ると眼鏡をかけている人もいるではないか!
もう気にするだけ無駄なような気がしてきた。そんな諦観の中、ある一つの疑問が浮かんだ。
「そういえば、師忠さんみたいな身分の人がこう普通に出歩いていいんですか?」
「といいますと?」
「いや、貴族が普通に町を歩いて危険はないのかなあとか。いや、師忠さんに限って言えばないか」
昨夜の戦闘を思い出しつつ一言付け加える。だが一応彼は上級貴族なのだ。もっとこう、護衛がたくさん付いていても良さそうなものだし、庶民も彼を見たら跪くぐらいしてもおかしくなさそうなものだが、その様子は一切ない。
「そうですね、考えたこともありませんでした。まあ従者を多数従えて人払いもした上で町を闊歩する方もいますし、私のようにあまり気にしない人もいますね」
「そんなもんなんだ…」
やはり微妙にイメージと異なるこの世界に困惑する。
――一体どんな進歩を遂げてきたんだ?この世界は。
聞けば聞くほど、見れば見るほどイメージと離れていく。少年は考えることをやめた。
「さて、そろそろ着きますよ」
少し向こうに、それなりの広さの屋敷が見える。師忠邸の三分の一ほどの広さと見えるそれが賀茂邸であろう。
「犬麻呂、屋敷の者を呼んでまいりなさい」
「へーい」
主人に礼節を尽くす仁王丸とは違って相変わらずの犬麻呂。だが、命令には素直に応じて賀茂邸に走っていく。
門番と少々話をしたのち、犬麻呂は屋敷に入っていった。そしてしばらくした後、少年と同い年くらいの人物が犬麻呂と共に出てきて師忠一行を出迎える。やや薄い緑がかった髪、高くも低くもない背丈、そして青と緑のオッドアイ。そんな美少年といったふうの彼は、どこか神秘的な雰囲気をまとっていた。
「宰相殿、よくおいでなさいました。師匠が中でお待ちです。どうぞこちらへ」
そう言い、一行に一礼する。
そして顔を上げると彼は何かに気付いた様子で、少年に近づいてゆき、顔をじっと見た。
「えっと…近くない?」
少年は思わずたじろぐ。
「もしかして、なにか付いてる?」
「ええ。憑いてますね」
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