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5 王都タマリス
第29話 試される王 1
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〈御座所〉なる場所からの呼びだしがあったのは、その翌日のことだった。言葉は難しいが、簡単に言えば竜祖信仰の中心地のようなものだ。周辺には関連竜の神殿などもあるという。
丁重な召喚状だったが、簡潔に言えば、「おまえが王かどうかを託宣で確認する」というものだった。それ自体は、リアナにしたところで半信半疑なので、別に否やはない。「やっぱり違いました」と言われれば、そうですかと城を出るだけだ。デイミオンは小躍りするだろうが。
朝からしっとりと雨が降っていて、肌寒く、一日一日と冬の気配を感じる。タマリスは〈隠れ里〉やケイエよりもかなり北にあるから、冬の訪れは早いだろう。
(今日は当たりね)
リアナが思ったのは例の、メドロートの課題のことである。
昨日の夕方、澄みきった秋の空に鱗雲が出たから、今日の天気を予想するのはそれほど難しくなかった。もっとも、この程度の予想なら里の長老に聞くまでもなく、竜に乗る男衆たちにだって簡単に分かるものだ。課題を出した当人は、ときおり帳面をチェックするものの、良いとも悪いとも口に出すことはない。
(天気予報なんかさせて、いったい、なにがしたいんだろう)
白竜の持つ力は、天候や河川の流れに関するものらしい。
教師役のサラートからその程度のことは教わったのだが、あとはメドロートに聞けと言われてしまったし、そのメドロートがこんな調子だ。
(まあ、急がなくてもいいのよね)
本当に王になるならいざしらず、デイミオンの露払いのような今の状況なら、白竜の力を披露する必要に迫られることもないだろう。メドロートが言うには、白竜のライダーたちのほとんどが、彼の領地ノーザンに集められて訓練を受けているらしい。黒竜だけでなく、ほかの竜と比較しても数が少なく希少な白竜のライダーゆえに、国とノーザンが手厚く育成しているという。
メドロートは、彼女が望むならばそのノーザンでライダーの訓練を受けさせてくれる、と約束した。もちろん、王位に就かなかったときの話だが、リアナにとっては願ってもない話だった。行方不明中の養父にはあとで事情を説明しなければならないだろうが、もともとライダーになりたいことはずっと訴えていたのだから、分かってくれるだろう。
ものものしい竜騎手の一団に護衛され、使役竜の背に揺られて、山の中腹にある廟には四半刻もせずにたどり着いた。うっそうと茂る森のなか、物見塔もない平屋建ての目立たない神殿は、遠目にはそうとわからないほど地味に見えた――だが、近寄ってみると異様な建物だ。曇天のような鈍い灰色をした、完璧な直線をもつ巨岩で建築されている。なかにはずらりと白いローブ姿の集団が、列になって彼女を出迎えた。
「リアナ様」
声をかけてきたのは、ローブの長さや装飾からして、その場でもっとも高位の神官らしい。「お越しをお待ちしておりました」
副神官長のテヌーと名乗る男が、彼女を奥へ招き入れた。
「儀式の間までご案内します。竜騎手の方々におかれましては、建物内で竜術を使うことはお控えください」
「念話もですか?」竜騎手ハダルクが眉をひそめた。「警備上、それは問題があるのですが……」
「神聖な場所ですので」
「帯剣は?」
「それはかまいません」
二人はいくらかして合意にいたったようで、ハダルクがほかの竜騎手たちに言い含めた。
「大丈夫?」
「建物内で竜術禁止、といっても、見まわらせている外の兵士もいますし、緊急時には念話も竜術も使うと合意は得ましたから、大丈夫ですよ」ハダルクが安心させるように言う。「それに、フィルバート卿がいますしね」
丁重な召喚状だったが、簡潔に言えば、「おまえが王かどうかを託宣で確認する」というものだった。それ自体は、リアナにしたところで半信半疑なので、別に否やはない。「やっぱり違いました」と言われれば、そうですかと城を出るだけだ。デイミオンは小躍りするだろうが。
朝からしっとりと雨が降っていて、肌寒く、一日一日と冬の気配を感じる。タマリスは〈隠れ里〉やケイエよりもかなり北にあるから、冬の訪れは早いだろう。
(今日は当たりね)
リアナが思ったのは例の、メドロートの課題のことである。
昨日の夕方、澄みきった秋の空に鱗雲が出たから、今日の天気を予想するのはそれほど難しくなかった。もっとも、この程度の予想なら里の長老に聞くまでもなく、竜に乗る男衆たちにだって簡単に分かるものだ。課題を出した当人は、ときおり帳面をチェックするものの、良いとも悪いとも口に出すことはない。
(天気予報なんかさせて、いったい、なにがしたいんだろう)
白竜の持つ力は、天候や河川の流れに関するものらしい。
教師役のサラートからその程度のことは教わったのだが、あとはメドロートに聞けと言われてしまったし、そのメドロートがこんな調子だ。
(まあ、急がなくてもいいのよね)
本当に王になるならいざしらず、デイミオンの露払いのような今の状況なら、白竜の力を披露する必要に迫られることもないだろう。メドロートが言うには、白竜のライダーたちのほとんどが、彼の領地ノーザンに集められて訓練を受けているらしい。黒竜だけでなく、ほかの竜と比較しても数が少なく希少な白竜のライダーゆえに、国とノーザンが手厚く育成しているという。
メドロートは、彼女が望むならばそのノーザンでライダーの訓練を受けさせてくれる、と約束した。もちろん、王位に就かなかったときの話だが、リアナにとっては願ってもない話だった。行方不明中の養父にはあとで事情を説明しなければならないだろうが、もともとライダーになりたいことはずっと訴えていたのだから、分かってくれるだろう。
ものものしい竜騎手の一団に護衛され、使役竜の背に揺られて、山の中腹にある廟には四半刻もせずにたどり着いた。うっそうと茂る森のなか、物見塔もない平屋建ての目立たない神殿は、遠目にはそうとわからないほど地味に見えた――だが、近寄ってみると異様な建物だ。曇天のような鈍い灰色をした、完璧な直線をもつ巨岩で建築されている。なかにはずらりと白いローブ姿の集団が、列になって彼女を出迎えた。
「リアナ様」
声をかけてきたのは、ローブの長さや装飾からして、その場でもっとも高位の神官らしい。「お越しをお待ちしておりました」
副神官長のテヌーと名乗る男が、彼女を奥へ招き入れた。
「儀式の間までご案内します。竜騎手の方々におかれましては、建物内で竜術を使うことはお控えください」
「念話もですか?」竜騎手ハダルクが眉をひそめた。「警備上、それは問題があるのですが……」
「神聖な場所ですので」
「帯剣は?」
「それはかまいません」
二人はいくらかして合意にいたったようで、ハダルクがほかの竜騎手たちに言い含めた。
「大丈夫?」
「建物内で竜術禁止、といっても、見まわらせている外の兵士もいますし、緊急時には念話も竜術も使うと合意は得ましたから、大丈夫ですよ」ハダルクが安心させるように言う。「それに、フィルバート卿がいますしね」
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