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7 ふたたび、ケイエへ
第36話 ケイエ炎上――わたしにも、きっとできる 1
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「下を見て!」
飛竜の背から、リアナは悲鳴をあげた。
「火が見える!」
それは、神話の光景と言われても信じられそうだった。
美しく巨大なドラゴンが十頭近くの群れになって、夜空を飛んでいる。
エサルの駆る赤い竜を先頭に、白い竜とより小型の竜たちが続く。巨きな竜は力ある古竜、そして水が流れるようになめらかに駆けるのが飛竜。リアナと飛竜ピーウィは、メドロート公の古竜シーリアのやや後方にいた。
結局、あれほど出兵に反対していたメドロートは、リアナのためについてきたのだった。
冬の夜空は紺色に冷たく澄んで、全天《ぜんてん》に銀の星を散らせている。ライダーたちが街の方角に向かって目を下ろすと、灰色の煙が雲のように渦を巻きながら東へと流れていく。煙の間から、ちらちらと明るく燃える火の手がはっきり見える。竜の距離では小さく見えるが、町を焼く大火事に間違いない。
「ケイエから火が!」
竜騎手の一人が叫ぶ。「連竜山のふもとも。山火事か!?」
「いや、違う。見ろ――」
〔閣下!〕
エサルに向けて放たれた強い念話が、リアナとメドロートにも届いた。〔畜生、届いているのか?!――閣下、エサル公、火事です!〕
通信兵と呼ばれる、念話の能力に優れた兵士が、ケイエからあらゆる方角に向かって呼びかけているらしい。
〔見えている!〕エサルが叫んだ。〔エサルだ!〕
〔閣下! ご無事で……!!〕
フロンテラの領主は、リアナの目に、遠目にも見たこともないほど険しい表情をしている。王の葬儀で長く留守にしていた領地が、急いで戻ってきて焼けているのを見れば、内心怒り狂って当然だろう。
〔状況を説明しろ!〕
〔四半刻前に、黒衣の兵団がケイエを急襲。黒竜が二柱含まれ、デーグルモールと思われます。国境警備兵とともに応戦、消火に当たっていますが、黒竜が火炎を吐き、街の四半分の一ほどが延焼しています〕
〔了解した。こちらはエサル、メドロート公、リアナ殿下の三人だ。白竜が二柱、黒竜が三柱おわしめす〕
怒りを押し殺すような、領主の低い声が響いた。
〔いま駆けつけるから、待っていろ! 必ず助ける!〕
エサルが白竜について言及したわけは、それからすぐにわかった。シーリアに乗ったメドロートが下降していくと、焦げ臭い空気が消え、灰色の煙が薄れる。
その光景は、まるで霧がかき消えたかのようだった。
(空気を操っているの?)
リアナはメドロートに目を凝らしたが、どうやっているのかはわからない。彼女にはまだ出来ない技だった。すべての煙を消しているわけではなく、竜と乗り手たちだけを煙から守るように調節しているようだ。煙が全部消せれば、とリアナは思ったが、空気を遮断すれば、まだ逃げのびていない人間も息ができずに死んでしまうかもしれない。黒竜のライダーであるハダルクのほうを見ると、彼が手を差しのべた方角の炎があっという間に勢力を弱めていく。
(黒竜の力で――火事の火を消すことができるの!?)
どうやら、まだリアナが知らない竜の力が、たくさんあるようだった。
飛竜の背から、リアナは悲鳴をあげた。
「火が見える!」
それは、神話の光景と言われても信じられそうだった。
美しく巨大なドラゴンが十頭近くの群れになって、夜空を飛んでいる。
エサルの駆る赤い竜を先頭に、白い竜とより小型の竜たちが続く。巨きな竜は力ある古竜、そして水が流れるようになめらかに駆けるのが飛竜。リアナと飛竜ピーウィは、メドロート公の古竜シーリアのやや後方にいた。
結局、あれほど出兵に反対していたメドロートは、リアナのためについてきたのだった。
冬の夜空は紺色に冷たく澄んで、全天《ぜんてん》に銀の星を散らせている。ライダーたちが街の方角に向かって目を下ろすと、灰色の煙が雲のように渦を巻きながら東へと流れていく。煙の間から、ちらちらと明るく燃える火の手がはっきり見える。竜の距離では小さく見えるが、町を焼く大火事に間違いない。
「ケイエから火が!」
竜騎手の一人が叫ぶ。「連竜山のふもとも。山火事か!?」
「いや、違う。見ろ――」
〔閣下!〕
エサルに向けて放たれた強い念話が、リアナとメドロートにも届いた。〔畜生、届いているのか?!――閣下、エサル公、火事です!〕
通信兵と呼ばれる、念話の能力に優れた兵士が、ケイエからあらゆる方角に向かって呼びかけているらしい。
〔見えている!〕エサルが叫んだ。〔エサルだ!〕
〔閣下! ご無事で……!!〕
フロンテラの領主は、リアナの目に、遠目にも見たこともないほど険しい表情をしている。王の葬儀で長く留守にしていた領地が、急いで戻ってきて焼けているのを見れば、内心怒り狂って当然だろう。
〔状況を説明しろ!〕
〔四半刻前に、黒衣の兵団がケイエを急襲。黒竜が二柱含まれ、デーグルモールと思われます。国境警備兵とともに応戦、消火に当たっていますが、黒竜が火炎を吐き、街の四半分の一ほどが延焼しています〕
〔了解した。こちらはエサル、メドロート公、リアナ殿下の三人だ。白竜が二柱、黒竜が三柱おわしめす〕
怒りを押し殺すような、領主の低い声が響いた。
〔いま駆けつけるから、待っていろ! 必ず助ける!〕
エサルが白竜について言及したわけは、それからすぐにわかった。シーリアに乗ったメドロートが下降していくと、焦げ臭い空気が消え、灰色の煙が薄れる。
その光景は、まるで霧がかき消えたかのようだった。
(空気を操っているの?)
リアナはメドロートに目を凝らしたが、どうやっているのかはわからない。彼女にはまだ出来ない技だった。すべての煙を消しているわけではなく、竜と乗り手たちだけを煙から守るように調節しているようだ。煙が全部消せれば、とリアナは思ったが、空気を遮断すれば、まだ逃げのびていない人間も息ができずに死んでしまうかもしれない。黒竜のライダーであるハダルクのほうを見ると、彼が手を差しのべた方角の炎があっという間に勢力を弱めていく。
(黒竜の力で――火事の火を消すことができるの!?)
どうやら、まだリアナが知らない竜の力が、たくさんあるようだった。
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