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おまけ
プレシーズン・マッチ 2
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ワアッという歓声が、二人の男の注目を引いた。〈南のセキレイ〉側がゴールを決めたらしい。
「ところで、なんの用だ」
「うん?」
「とぼけるな、おまえは竜球にも俺の休日にも興味などないだろうが。なぜわざわざここを探しあててきた?」
今日はもともとの会合予定が流れたことによる不意の休日だったし、競技場の、しかも安席にいるなどとはもちろん誰にも告げていない。さも待ち合わせでもしているかのようにやってきたフィルだが、これがもし政敵なら、『おまえなどいつでも暗殺できる』と言われているに等しい。
「ははは」
アーシャ姫をたぶらかしたその笑顔、さわやかと言うべきか、うさんくさいと言うべきか。
「実は、半月くらい王都を留守にするつもりなんだ。リアナの護衛のこともあるし、代わりのヤツを紹介しようと思って。……そろそろ来るよ」
「留守にする?」デイミオンは腰を浮かしかけた。「どこでなにをするつもりなんだ?」
「それはまた事後に」
「おい、おまえだっていつまでもフラフラしていられる立場じゃないんだぞ――」
弟が笑顔のまま手を軽く上げると、混雑した競技場のどこからともなく屈強な男があらわれた。
「じゃ、俺はこれで。頼むぞテオ」
文句も説教もする間を与えず去っていく後ろ姿に、デイミオンは浮かした腰を落として息をつく。
「……なんだったんだ、あきれたやつだな」
秘密主義は昔からだが、妙に頑固というか、他人に有無を言わさないところがある。それにくわえてこの唐突さ、いったいなんだというのだ。
「ハーイ、代打の俺です」
見たことのある金髪が、断るでもなく勝手にフィルのあとに座った。フィルと同じ〈ハートレス〉の兵士で、たしか……リアナから名前を聞いた覚えがある。
「殿下におみやげもってきましたよ。ハダルク卿からは竜騎手団の再編成についての計画書。目ぇ通してサインくださいだそーです。こっちは東のご領地からの定期報告書、おっ、いまキノンがいいキャッチしましたよ。見ました?」
この男のことをリアナはなんと言っていたんだったか?
そう……『口は悪いけど優しかった、けっきょく頼み事も聞いてくれたし。幼なじみのケヴァンに似てる』……だったか?
デイミオンの不機嫌はいざ知らず、テオバールはぺらぺらと陽気にしゃべりながら書類を渡してきた。貴重な休日に仕事を思い出させられて、さらにげんなりした。これから繁殖期に入れば、いま以上に忙しくなるというのに。
そういえば、リアナはエサル公にも懐いている。この〈ハートレス〉とは、金髪で、快活で、よくしゃべるという共通項がある。そういう男が好きなのか?
「……あいつがリアナの護衛役を譲るとは思わなかったな」
なんとなく面白くない思いで、そうつぶやく。
大陸中を放浪していたのが王城に常駐するようになったのも、悲願だった連隊の再建をためらっているのも、王になったばかりの少女の護衛役を他人に譲りわたしたくないがためなのかと思っていた。
「譲る? はっはぁ」テオは笑った。
「あれで譲るって言うんですかねぇ。『任務以外でリアナに触れたらおまえを128のパーツに切り分ける。解説つきで』とか『彼女をじろじろ見るな。首より下を一切見ないという条件なら、ちらっと見るくらいは許す』とか、むちゃくちゃなことを真顔で言ってましたけどね」
フィルの残していったフリッターなどを食い散らかしながら、「どうしちゃったんですかねあの人、なにか悪いモンでも食ったかな、まぁ春ですしね」と続けた。
テオが意地きたなく咀嚼している横で、デイミオンは端正な顔でうなずき、なにごとかを考えている風情だった。
「殿下?」
「いい考えだ。上司として俺が認める。そのルールでやれ」
「あんたもかよ! マジ意味わからんところで兄弟だな、あんたら!」
競技場にふたたび歓声が響きわたり、それから間もなくしてゲームは終了を告げた。
「ところで、なんの用だ」
「うん?」
「とぼけるな、おまえは竜球にも俺の休日にも興味などないだろうが。なぜわざわざここを探しあててきた?」
今日はもともとの会合予定が流れたことによる不意の休日だったし、競技場の、しかも安席にいるなどとはもちろん誰にも告げていない。さも待ち合わせでもしているかのようにやってきたフィルだが、これがもし政敵なら、『おまえなどいつでも暗殺できる』と言われているに等しい。
「ははは」
アーシャ姫をたぶらかしたその笑顔、さわやかと言うべきか、うさんくさいと言うべきか。
「実は、半月くらい王都を留守にするつもりなんだ。リアナの護衛のこともあるし、代わりのヤツを紹介しようと思って。……そろそろ来るよ」
「留守にする?」デイミオンは腰を浮かしかけた。「どこでなにをするつもりなんだ?」
「それはまた事後に」
「おい、おまえだっていつまでもフラフラしていられる立場じゃないんだぞ――」
弟が笑顔のまま手を軽く上げると、混雑した競技場のどこからともなく屈強な男があらわれた。
「じゃ、俺はこれで。頼むぞテオ」
文句も説教もする間を与えず去っていく後ろ姿に、デイミオンは浮かした腰を落として息をつく。
「……なんだったんだ、あきれたやつだな」
秘密主義は昔からだが、妙に頑固というか、他人に有無を言わさないところがある。それにくわえてこの唐突さ、いったいなんだというのだ。
「ハーイ、代打の俺です」
見たことのある金髪が、断るでもなく勝手にフィルのあとに座った。フィルと同じ〈ハートレス〉の兵士で、たしか……リアナから名前を聞いた覚えがある。
「殿下におみやげもってきましたよ。ハダルク卿からは竜騎手団の再編成についての計画書。目ぇ通してサインくださいだそーです。こっちは東のご領地からの定期報告書、おっ、いまキノンがいいキャッチしましたよ。見ました?」
この男のことをリアナはなんと言っていたんだったか?
そう……『口は悪いけど優しかった、けっきょく頼み事も聞いてくれたし。幼なじみのケヴァンに似てる』……だったか?
デイミオンの不機嫌はいざ知らず、テオバールはぺらぺらと陽気にしゃべりながら書類を渡してきた。貴重な休日に仕事を思い出させられて、さらにげんなりした。これから繁殖期に入れば、いま以上に忙しくなるというのに。
そういえば、リアナはエサル公にも懐いている。この〈ハートレス〉とは、金髪で、快活で、よくしゃべるという共通項がある。そういう男が好きなのか?
「……あいつがリアナの護衛役を譲るとは思わなかったな」
なんとなく面白くない思いで、そうつぶやく。
大陸中を放浪していたのが王城に常駐するようになったのも、悲願だった連隊の再建をためらっているのも、王になったばかりの少女の護衛役を他人に譲りわたしたくないがためなのかと思っていた。
「譲る? はっはぁ」テオは笑った。
「あれで譲るって言うんですかねぇ。『任務以外でリアナに触れたらおまえを128のパーツに切り分ける。解説つきで』とか『彼女をじろじろ見るな。首より下を一切見ないという条件なら、ちらっと見るくらいは許す』とか、むちゃくちゃなことを真顔で言ってましたけどね」
フィルの残していったフリッターなどを食い散らかしながら、「どうしちゃったんですかねあの人、なにか悪いモンでも食ったかな、まぁ春ですしね」と続けた。
テオが意地きたなく咀嚼している横で、デイミオンは端正な顔でうなずき、なにごとかを考えている風情だった。
「殿下?」
「いい考えだ。上司として俺が認める。そのルールでやれ」
「あんたもかよ! マジ意味わからんところで兄弟だな、あんたら!」
競技場にふたたび歓声が響きわたり、それから間もなくしてゲームは終了を告げた。
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こんにちは(^_^ゞ
第1部の始まりのところ。
すごく好き好き(*⌒∇⌒*)です。
ふきわたる風の色。美味しいパンのにおい。
おだやかで愛に満ちた里の暮らし。
3部まで読み終えてるから、なおさら切なくもあり……。
ありがとうございます(*´∀`*)
ちょっと地味な出だしかなぁといつも思うんですが、そう言っていただけるとほんとにうれしいです!
この南部風のパンは、王都では食べることができない味です。
南部のパンは、イーストを使ってふわふわ。王都風は平たくてかため。
リアナにとってもせつない思い出の味じゃないかな~と想像しています。
3部の途中で更新とまってる~! せめて3部までは完結させないとですね(;'∀')