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3 黒の王
黒の王 ②
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「そんなことよりも、灰死病だ」陰鬱な表情で別の貴族が呟く。北西部の大領主の一人だ。「夏頃からかなり広範にわたって流行しはじめている。正確な罹患者数は確認できていないが、ライダーを多数抱える家は恐慌状態に陥っている」
その言葉に、多くの貴族たちはまた、我も我もと説明をはじめた。
「高貴な血筋のいくつかがすでに断絶の危機にある。……〈青竜大公〉として、公はいかなる対策をお考えなのか?」
「もはや一刻の猶予もない。〈癒し手〉の派遣数を増やしていただきたい」
「無理だ」エンガスはにべもなく答えた。
「すでに、各領地からの問い合わせに応じて、われらの抱えるすべての術者を派遣している。ない袖は振れぬ」
「これは人間たちの汚い計画なのだ!」別の貴族が叫んだ。「疫病によって、尊いライダーの血を絶やし、わが王国に攻め込むつもりなのだ!」
「リアナ王が姿をお見せにならないのも、灰死病のせいではないのか?」
その言葉は、不安と恐れから出た根拠のないものだったが、それが周囲の貴族たちに伝染していき、ざわめきは大きくなるばかりだった。
「静まられよ! このような喧噪で、いかにして議論ができようか?」
エンガスが一喝するが、場は静まることがない。もはや収拾がつかないのではとその場のものたちが危惧しはじめたとき、伝令が王の入場を告げた。それでもざわめいていた議席は、入ってきた王の姿に息をのみ、静まりかえった。
入ってきたのは、年若い少女ではなく、背の高い男。王太子、〈黒竜大公〉デイミオンだった。
だが、その恰好はふだんとまったく違っていた。長衣は竜騎手団の濃紺の制服ではなく、銀糸の縫い取りがきらめく漆黒のもの。黒髪を後ろに撫でつけるように整え、額には銀の簡易冠がはめられていた。
水を打ったように静まり返っていた場内が、再びざわつきはじめる。リアナ王の不在は、彼女の病の噂を裏付けるものではあるが、王太子のあの格好はどういうことだ? 彼女はどこだ?
だが、先だって、ケイエ付近でデーグルモールたちとの戦闘で負傷したはずのデイミオンは、何ごともなかったかのように平然と、大股で歩いてきて中央の玉座に座った。その表情は平静で、感情の動きは読み取れない。彼以外の五公たちもまた、あらかじめ知らされていたのか、落ち着いていた。
その言葉に、多くの貴族たちはまた、我も我もと説明をはじめた。
「高貴な血筋のいくつかがすでに断絶の危機にある。……〈青竜大公〉として、公はいかなる対策をお考えなのか?」
「もはや一刻の猶予もない。〈癒し手〉の派遣数を増やしていただきたい」
「無理だ」エンガスはにべもなく答えた。
「すでに、各領地からの問い合わせに応じて、われらの抱えるすべての術者を派遣している。ない袖は振れぬ」
「これは人間たちの汚い計画なのだ!」別の貴族が叫んだ。「疫病によって、尊いライダーの血を絶やし、わが王国に攻め込むつもりなのだ!」
「リアナ王が姿をお見せにならないのも、灰死病のせいではないのか?」
その言葉は、不安と恐れから出た根拠のないものだったが、それが周囲の貴族たちに伝染していき、ざわめきは大きくなるばかりだった。
「静まられよ! このような喧噪で、いかにして議論ができようか?」
エンガスが一喝するが、場は静まることがない。もはや収拾がつかないのではとその場のものたちが危惧しはじめたとき、伝令が王の入場を告げた。それでもざわめいていた議席は、入ってきた王の姿に息をのみ、静まりかえった。
入ってきたのは、年若い少女ではなく、背の高い男。王太子、〈黒竜大公〉デイミオンだった。
だが、その恰好はふだんとまったく違っていた。長衣は竜騎手団の濃紺の制服ではなく、銀糸の縫い取りがきらめく漆黒のもの。黒髪を後ろに撫でつけるように整え、額には銀の簡易冠がはめられていた。
水を打ったように静まり返っていた場内が、再びざわつきはじめる。リアナ王の不在は、彼女の病の噂を裏付けるものではあるが、王太子のあの格好はどういうことだ? 彼女はどこだ?
だが、先だって、ケイエ付近でデーグルモールたちとの戦闘で負傷したはずのデイミオンは、何ごともなかったかのように平然と、大股で歩いてきて中央の玉座に座った。その表情は平静で、感情の動きは読み取れない。彼以外の五公たちもまた、あらかじめ知らされていたのか、落ち着いていた。
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