リアナ3 約束の王国

西フロイデ

文字の大きさ
40 / 58
3 黒の王

黒の王 ③

しおりを挟む
「王は病を得られ、生地ノーザンにて長期の療養状態に入られた」エンガスが隣に立って説明をはじめた。「このような場合には、五公会と神官長の賛同を得て王の退位が認められており、このたび、リアナ陛下は王位を譲られることとなった」
 ざわめきがいっそう大きくなった。
「譲位の手続きは正式なものだ。非常事態につき、戴冠の儀は簡略化してすでに執り行っておる。また、陛下のご不在により〈ばい〉の切断がまだ行われていないため、次の継承者は決定していない。
 正式な継承者が決まるまで、王太子としてジェンナイル・カールゼンデン卿を置くこととする」
 五公の一人としてすでに席を得ていた栗毛の青年に、全員の視線が集中した。髪と目の色、地味な容姿は、エリサ王と似ているとよく指摘されてきたし、リアナ王から見ても近い血縁になる。が、メドロートの陰に隠れて王都の貴族たちからはほとんど顔を知られていなかった。
 そのあまりの性急ぶりに、貴族たちの多くは陰謀の匂いを嗅ぎとるが、しかし五公の権力者エンガス公と、〈黒竜大公〉にあえて意見する愚はおかせないと考えたようだった。
 エンガスがデイミオンになにごとかをささやいた。その長さからして、おそらく、議会の流れを報告したのだろう。デイミオンはうなずきながら聞き、そして場に向きなおった。
「ノーザンの新領主からは、天候不順への詫びとして、今年と来年の〈日和見ウェザーチェッカー〉への給与を肩代わりするとの申し出をもらっている。さらに、来年の種については、これを無償で貸与する」
 命令を発しなれた男の、よく通る低い声が場に響きわたった。
 おぉ……。領主たちから安堵のため息がもれ、広がった。

「わかっているだろうが」デイミオンは効果的な一拍を置いて続ける、「買いだめ屋への協力行為を働いたものは、いかなる大貴族であっても、私みずから火あぶりにしてやる」
 ぐるりと会場内を見渡す。玉座は中央のやや高いところにあるが、会場全体はすり鉢状になっているので、見上げる形になる。
「それから、灰死病についてだが、エンガス公と青竜の一族だけでは〈癒し手ヒーラー〉が不足する。……そこで……」
 デイミオンがちらりと神官たちのほうを見た。それは一種の合図であったらしく、副神官長がうなずいて立ちあがった。いちおうローブは身につけているが、まだ若く、使い走りの小姓といっても差し支えないほど小柄な少年だ。
「〈御座所〉は、〈癒し手〉の能力を持つ神官たちをデイミオン陛下へとお貸しいたします。また、一定の条件付きではありますが、私が代表を務めます学舎より、訓練生たちを交代制で派遣することを許可いたします」
 声変わりも途中なのではと思われるような高音に貴族たちは不安顔をつくったが、告げられた内容を聞くといくらか愁眉を開いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...