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第1章 錆びた魔剣
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夕食後、ウィルフレッドの書斎の机の上に謎の剣は置かれていた。屋敷の使用人のロブが燭台を運んでくると机の上にそっと置いた。
「旦那様、これが例の剣ですか」と彼はまじまじと剣を眺めた。
「そうだ。ボスコークの工房の蔵にあったものだ」とウィルフレッド。「……とはいえ、彼が打ったものかどうかはわからぬ」
「最初は錆びているのかと思ったよ。本物の錆じゃなかったけど」とティナ。
ロブはそっと剣を包んでいる羊皮紙をめくった。
「なるほど……」
「呪文の種類はわかるか?」
「おそらく、この剣の魔力が駄々洩れにならないように覆っていた、というところかと思います」とロブは羊皮紙を机に戻した。「もしかしたら、隠していたのかもしれません」
「……羊皮紙を剝がしてまずかったか?」
ロブは眉根を寄せた。
「さあ、そこまではわかりかねますが……」と言ってから目を上げた。「ただ一つ言えることは、こいつはいわゆるアーティファクト級って奴ですな」
ティナとウィルフレッドは思わず顔を見合わせた。
「つまり、すごいお宝ってこと? いくらくらい?」
「いや、本当にアーティファクト級なら、値段のつけようがないぞ」とウィルフレッド。「ロブ、シモンズ伯に使いを出しておいてくれ。訪問の約束を取り付けてほしい」
「承知しました、旦那様」と丁重に一礼してロブは去っていった。彼はウィルフレッドが現役のころから懇意にしていた諜報員だった。ウィルフレッドが引退するときに、彼も一緒についてきたのだ。そのまま彼は主の身の回りの世話をしながら、時折情報を提供したりしている。多少魔法の知識も持っていた。
「アーティファクトって…… 魔力を持った剣ってこと?」
「そうだ。ただ単に出来上がった剣に魔力を纏わせたものとは違う。どういう原理かはわからぬが、お前は気に入られたのかもしれんな?」
「えへぇ……」
「……気味が悪いか?」
「ううん、それはないけど、不思議だなって……」とティナは剣を手に取った。「明日は調べものをしに出掛けるし、あたしはそろそろ部屋に戻るね?」
「ああ、おやすみ、いい夢を、ティナ」
ウィルフレッドの部屋を出ると、彼女は剣を片手に自分の部屋へと戻った。自室とはいえ、仮住まいのため大した私物はない、年頃の娘の部屋にしては殺風景な部屋だ。彼女はベッドサイドのチェストの上に無造作に剣を置いた。
「んん…… 爺ちゃんの残したものを売れば、町中にそれなりの部屋が借りられるかと思ったんだけどな……」
祖父が亡くなる直前に、彼女はウィルフレッドに託された。独身の若いドーハンと工房に住まわせておくのが心配だったのだろう。ウィルフレッドは幼いころから彼女に剣を教えていたため、まるで孫同然に扱ってくれはする、が、その好意にいつまでも甘え続けるわけにもいかない。彼女はいずれウィルフレッドの屋敷を出るつもりでいた。
「……となると、お金を手に入れるためにも、仕事見つけなきゃ」と彼女は呟き、ベッドに腰を下ろした。「……先生、許してくれるかな?」
孫同然に扱ってくれているからこそ、相談しにくい。心配するのは目に見えている。
彼女は服を脱ぎ捨てると、ごろりとベッドに身を横たえた。夜陰に静まり返った沈黙の中でかすかな音が続いている。
剣の歌だ。
彼女はベッドの上で寝返りを打ち、サイドチェストの上の剣を眺めた。半分以上は錆の偽装の羊皮紙が残っているものの、その陰から淡い光がこぼれている。その光を眺めながら歌に耳を傾けていると、徐々にまぶたが重くなってきた。やがて彼女は眠りに落ちていった……
「旦那様、これが例の剣ですか」と彼はまじまじと剣を眺めた。
「そうだ。ボスコークの工房の蔵にあったものだ」とウィルフレッド。「……とはいえ、彼が打ったものかどうかはわからぬ」
「最初は錆びているのかと思ったよ。本物の錆じゃなかったけど」とティナ。
ロブはそっと剣を包んでいる羊皮紙をめくった。
「なるほど……」
「呪文の種類はわかるか?」
「おそらく、この剣の魔力が駄々洩れにならないように覆っていた、というところかと思います」とロブは羊皮紙を机に戻した。「もしかしたら、隠していたのかもしれません」
「……羊皮紙を剝がしてまずかったか?」
ロブは眉根を寄せた。
「さあ、そこまではわかりかねますが……」と言ってから目を上げた。「ただ一つ言えることは、こいつはいわゆるアーティファクト級って奴ですな」
ティナとウィルフレッドは思わず顔を見合わせた。
「つまり、すごいお宝ってこと? いくらくらい?」
「いや、本当にアーティファクト級なら、値段のつけようがないぞ」とウィルフレッド。「ロブ、シモンズ伯に使いを出しておいてくれ。訪問の約束を取り付けてほしい」
「承知しました、旦那様」と丁重に一礼してロブは去っていった。彼はウィルフレッドが現役のころから懇意にしていた諜報員だった。ウィルフレッドが引退するときに、彼も一緒についてきたのだ。そのまま彼は主の身の回りの世話をしながら、時折情報を提供したりしている。多少魔法の知識も持っていた。
「アーティファクトって…… 魔力を持った剣ってこと?」
「そうだ。ただ単に出来上がった剣に魔力を纏わせたものとは違う。どういう原理かはわからぬが、お前は気に入られたのかもしれんな?」
「えへぇ……」
「……気味が悪いか?」
「ううん、それはないけど、不思議だなって……」とティナは剣を手に取った。「明日は調べものをしに出掛けるし、あたしはそろそろ部屋に戻るね?」
「ああ、おやすみ、いい夢を、ティナ」
ウィルフレッドの部屋を出ると、彼女は剣を片手に自分の部屋へと戻った。自室とはいえ、仮住まいのため大した私物はない、年頃の娘の部屋にしては殺風景な部屋だ。彼女はベッドサイドのチェストの上に無造作に剣を置いた。
「んん…… 爺ちゃんの残したものを売れば、町中にそれなりの部屋が借りられるかと思ったんだけどな……」
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彼女はベッドの上で寝返りを打ち、サイドチェストの上の剣を眺めた。半分以上は錆の偽装の羊皮紙が残っているものの、その陰から淡い光がこぼれている。その光を眺めながら歌に耳を傾けていると、徐々にまぶたが重くなってきた。やがて彼女は眠りに落ちていった……
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