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第2章 奴隷の兄妹
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ティナは別館の建物に入ると階段を駆け上がった。ここまでの制圧に大きな物音は立ててはいない、魔女はまだ油断しているだろうと思ったが、二階に辿り着くと俄かに足音をひそめた。
階段の踊り場の手すりの陰に身をひそめて、二階の気配を読む。いつもより勘が効くような気がするが、油断は禁物だ。二階の端の部屋に人の気配を感じ、そのまま足音をひそめて進んだ。
ドアの前で身を構え、室内の様子を窺う。ドアの向こうでかすかな声が聞こえる…… 呪文を唱えているようだ。どんな意図で呪文を唱えているのかよくわからない、彼女は身を低めたままドアを開いた、と。
どうやら魔女は油断していたのだろう、いきなりの訪問者の姿を見て驚いた。
「おい、なんだい? この小娘!」と耳障りな声を上げながら立ち上がった。
「こんにちは!」とティナは陽気に挨拶した。
「これでも食らいな! ファイアボール!」言うが早いか、魔女は素早く火球を飛ばしてきた。
「ひゃ!」とティナは小さく叫び、剣で魔法を遮った。魔法は弾けるというよりも、雲散霧消するかのように素早く消えた。
「えぇ?」と魔女。「魔法が効かない?」
怯んだ隙にティナは立ち上がり、乱雑に魔女の机を覆っていたテーブルクロスを手に取るや、丸めて魔女の口に捻じ込んだ。
「う、うう!」
魔女は呻きを上げて口を覆う布を取ろうとするが、ティナは手早くその手を打ち払い、そのままひねり上げるように床に組み伏せた。体重を乗せて自由を奪うと、魔女が着ていたローブを引きはがし、腕をまとめるようにねじり、そのまま身体に巻き付けて体の自由を奪った。
「ぐ、うぅうう!」
魔女は不満げに唸り声を上げたが、ローブを括り付けられると完全に制圧されてしまった。
「手荒な真似してごめんね、おばさん」と言いながら身を起こすと、足元に転がった魔女を見下ろした。驚くほど、身体が動く、気持ちいいほどだ。
「ティナ!」とそこにウィルフレッドが到着した。
「先生!」
ウィルフレッドは床の上の魔女を眺め、
「思ったよりも見事に制圧したな」と感想を漏らした。「呪文を唱えられないように口も封じている」
「うん……?」
無意識に口に布を捻じ込んだが、特にそんな意図はなかった。身体が勝手に反応したのだ。
「向こうに連れて行こう」と彼は魔女をずた袋のように肩の上に担ぎ上げた。
本館の奥の使用人控室に使用人たちを押し込んだ。既にジーンによって二人の兵士は武器を取り上げられ、柱に括り付けられていた。少々ジーンに脅されたのだろう、顔色の悪い三人組の小悪党たち、後はおどおどとした表情のメイドと初老の執事、そして連行されてきた魔女。
「さて、魔女に呪いをかけさせていたのは誰か、正直に言ってもらおうか?」と囚われた魔女を示してウィルフレッドが揺さぶりをかけた。
兵士たちは青褪めて視線を逸らす。
「農場の管理人、ハフナーだな?」とジーンが確認すると、さすがに観念したのか、
「そうだよ」と兵士の一人が応じた。
「おい、お前、後で旦那に言いつけるぞ!」と小悪党の一人が小声でたしなめた。
「はぁ? この状況で何を言っていやがる? 俺は端から嫌だったんだよ。金貨2枚程度で裏切るんじゃなかった!」
小悪党は舌を打ち、視線をそらした。
「あ、あの、私は違うんです!」おどおどした表情のメイドが声を上げた。「脅されてただけです! 本当です! ここをクビになったら、田舎に仕送りできなくて……!」
「わ、私も……!」と執事も慌てて付け加えるように口にした。
ウィルフレッドとジーンは顔を見合わせた。
「まあ、それは公爵に決めていただこう」とウィルフレッドは囚われた者たちを見て言った。
階段の踊り場の手すりの陰に身をひそめて、二階の気配を読む。いつもより勘が効くような気がするが、油断は禁物だ。二階の端の部屋に人の気配を感じ、そのまま足音をひそめて進んだ。
ドアの前で身を構え、室内の様子を窺う。ドアの向こうでかすかな声が聞こえる…… 呪文を唱えているようだ。どんな意図で呪文を唱えているのかよくわからない、彼女は身を低めたままドアを開いた、と。
どうやら魔女は油断していたのだろう、いきなりの訪問者の姿を見て驚いた。
「おい、なんだい? この小娘!」と耳障りな声を上げながら立ち上がった。
「こんにちは!」とティナは陽気に挨拶した。
「これでも食らいな! ファイアボール!」言うが早いか、魔女は素早く火球を飛ばしてきた。
「ひゃ!」とティナは小さく叫び、剣で魔法を遮った。魔法は弾けるというよりも、雲散霧消するかのように素早く消えた。
「えぇ?」と魔女。「魔法が効かない?」
怯んだ隙にティナは立ち上がり、乱雑に魔女の机を覆っていたテーブルクロスを手に取るや、丸めて魔女の口に捻じ込んだ。
「う、うう!」
魔女は呻きを上げて口を覆う布を取ろうとするが、ティナは手早くその手を打ち払い、そのままひねり上げるように床に組み伏せた。体重を乗せて自由を奪うと、魔女が着ていたローブを引きはがし、腕をまとめるようにねじり、そのまま身体に巻き付けて体の自由を奪った。
「ぐ、うぅうう!」
魔女は不満げに唸り声を上げたが、ローブを括り付けられると完全に制圧されてしまった。
「手荒な真似してごめんね、おばさん」と言いながら身を起こすと、足元に転がった魔女を見下ろした。驚くほど、身体が動く、気持ちいいほどだ。
「ティナ!」とそこにウィルフレッドが到着した。
「先生!」
ウィルフレッドは床の上の魔女を眺め、
「思ったよりも見事に制圧したな」と感想を漏らした。「呪文を唱えられないように口も封じている」
「うん……?」
無意識に口に布を捻じ込んだが、特にそんな意図はなかった。身体が勝手に反応したのだ。
「向こうに連れて行こう」と彼は魔女をずた袋のように肩の上に担ぎ上げた。
本館の奥の使用人控室に使用人たちを押し込んだ。既にジーンによって二人の兵士は武器を取り上げられ、柱に括り付けられていた。少々ジーンに脅されたのだろう、顔色の悪い三人組の小悪党たち、後はおどおどとした表情のメイドと初老の執事、そして連行されてきた魔女。
「さて、魔女に呪いをかけさせていたのは誰か、正直に言ってもらおうか?」と囚われた魔女を示してウィルフレッドが揺さぶりをかけた。
兵士たちは青褪めて視線を逸らす。
「農場の管理人、ハフナーだな?」とジーンが確認すると、さすがに観念したのか、
「そうだよ」と兵士の一人が応じた。
「おい、お前、後で旦那に言いつけるぞ!」と小悪党の一人が小声でたしなめた。
「はぁ? この状況で何を言っていやがる? 俺は端から嫌だったんだよ。金貨2枚程度で裏切るんじゃなかった!」
小悪党は舌を打ち、視線をそらした。
「あ、あの、私は違うんです!」おどおどした表情のメイドが声を上げた。「脅されてただけです! 本当です! ここをクビになったら、田舎に仕送りできなくて……!」
「わ、私も……!」と執事も慌てて付け加えるように口にした。
ウィルフレッドとジーンは顔を見合わせた。
「まあ、それは公爵に決めていただこう」とウィルフレッドは囚われた者たちを見て言った。
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