決められた運命

野々村

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取り戻す為に

取り戻す為に 2

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「なんで、あんたがいるのよ」
 準備も終わり家から出ると、そこには最大限に膨らんだボディバックを背負ったコルマが居た。
 しかも、一丁前に弓を持っていて、まるでリリーシャに付いて行く装備にもみえる。
「……まさか」
 浮かんだ思いを否定したいが、目の前の人物はさっきの姿とは全く違う。
 にっこり笑ったコルマは、だがしっかりと頷いた。
「そのまさかだよ」
「………」
「危険を承知で君を見送るなんてそんな薄情な人間じゃないよ、俺はね」
 リリーシャが心底面倒臭い顔をするのにもコルマは気にした素振りも見せず、鞄を背負いなおして町の外を向く。
「それに俺は君と同じで家族も居ないから、俺が旅に出ても心配する人間なんて居ないしね」
「コルマ……」
 彼の母親は病で随分前に亡くなったが、五年前に父親を魔物に殺された被害者でもある。
 だが、リリーシャと違ったのはコルマがリリーシャよりも二歳年上で、戦い慣れもしていたからだ。
 あの日もコルマは誰よりも早く危険を察知して町の皆を守ろうとしていた。だからだろうか、中々邪険には出来ないのは。
「とりあえず、初めて旅に出るんだし必要不必要なものは追々分かっていくだろうから、あまり買い込まないようにしよう。自生してる植物や、動物だって居るんだし。ムダ食いをしなければ食べ物には中々困らないだろうしさ」
「え、えぇ、そうね」
 早口でまくし立てられる最もな問いに頷く事だけしか出来ない。
 遊びではないその声音に何を言ってもムダだと感じ、大きく肩を落としたリリーシャは腰にまわしたウエストポーチに付けていた石のキーホルダーを握った。その石は皮ひもで簡単に編んだものを幼い頃に弟がくれたものだ。
(待っててね、絶対に助けるから)
 冷たいそれは、リリーシャの熱い思いを受け取るように、次第に冷たさはなくなった。
 町の入り口まで行くと、親方が一人で立っていた。
「お、来たな」
「どうしたんですか?」
「ちょっと忘れ物があってな」
 リリーシャの横に居るコルマに視線を向けると懐から小太刀を取り出した。
「やっぱり、君も着いていくと思ったよ。これは俺からだ」
 親方が渡した小太刀を鞘から抜いたコルマは、感嘆の声を上げた。滑らかな美しい曲線を描いた刃が太陽に反射してキラキラと輝く。
「ありがとうございます」
 お礼を言ったコルマは小太刀を腰に下げて苦笑いを浮べた。
「こんなにいい物を渡してたら赤字になってまた奥さんにどやされますよ」
「大丈夫だよ。了承済みだ」
 苦笑いでリリーシャたちの背中に回りこみ、二人を町の外へと背中を押し出した。
「別れが惜しいが、早く行かないと……だろうしな」
「ありがとう、絶対連れて帰ってくるから。だからそれまで元気でね!」
「小太刀、嬉しかったです。元気でいてくださいね。奥さんと仲良く」
「二人も元気でな」
 親方に元気よく別れの挨拶をした二人は草原に立つと、遠目に魔物が見えて嫌な気分になる。
 生まれ育った町が小さく見える頃、大きな岩陰からキラービーと呼ばれる大きな蜂の魔物と、黄緑色の肌をもつゴブリンが二人に襲い掛かってきた。
「ちょっとは遠慮しなさいよね!」
「魔物に言っても意味が無いと思うけど」
 ゴブリンの振るうこん棒をリリーシャは剣でいなし、柔軟さを活かし頭に回し蹴りを喰らわせる。倒れたのを視界に入れたまま背後に居るキラービーには振り返りざまに斬りつけると首と体が真っ二つになって地面に落ちた。
数秒間倒れていたゴブリンがゆっくり起き上がると背中にコルマの矢が刺さる。
 鈍い悲鳴を上げたその喉を突き刺したリリーシャと、まだもがこうとする体に数発の矢を打ち込んだコルマに、ゴブリンはやっと大人しくなった。
「全く、前より魔物が増えてる気がするんだけど」
「最近は動物を狩るのも少し難しいからね」
 その後五回ほど連続で戦闘をする二人は流石に疲れが出たようで小さく息があがる。
 大きく肩で息をしているリリーシャを横目に、コルマは魔物に刺さったまだ使えそうな矢を抜いている。
体格や性別の差か、コルマが疲れた素振りを一切見せないのをリリーシャは悔しそうに歯噛みした。
「近くの村で休憩しよう。リリーシャも疲れているだろうし」
「私は別に疲れてなんか……」
「前衛は後衛より極端に体力を消費するからね」
 魔物から取れる材料と、矢の本数を数えるコルマを睨むが聞き入れる気は無いのだろう、彼の視線は遠く見える村を見ている。
 こうなったらサッと行ってサッと出るしかないと心の中で溜息を吐いて、血の付いた剣を懐紙かいしで軽く拭くと刀身が直ぐに綺麗になるのが分かり改めて良い剣だと思った。
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