決められた運命

野々村

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取り戻す為に

取り戻す為に 4

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「リリーシャ」
「コルマ」
 随分と時間が掛かった気がするが、確かに最初の頃よりも荷物は減っている。
 軽くした鞄を背負ったコルマに近寄ろうと立ち上がれば、小さな手が服を掴んだ。
「もう行っちゃうの?」
「もっとお話したかったのに」
「………」
 不機嫌そうに口を尖らせる二人に優しく頭を撫でると次第に頬が緩んでくるのが見て取れた。
 リリーシャは二人の目線に合うように膝を折り、両方の小指を出して「約束」と呟く。
「いつか、弟と遊びに来るから」
「本当だよね?」
「嘘じゃないよね?」
「うん、本当。だから……ね」
 優しく微笑むと二人は一度顔を見合わせて頷いた。
 二人は小指を出そうとしたが、上手く出来ないのか、小さな掌いっぱいに小指を握り締めて頬を染めた。
「絶対だから!」
「嘘ついたら許さないから!」
 強く力を込めた手をパッと放して二人は自宅のある方に駆け出して行く。
 二人は少し遠くの方で振り返ると手を大きく振ってきた。
「お姉ちゃん! 待ってるから!」
「絶対遊びに来てよ!」
 楽しそうに大きく声を上げる二人に手を振り返して何度も頷く。
 嬉しそうに手を繋いで掛けていく二人を見ていると、横にきたコルマが「懐かしいんだな」と言った。
「え?」
 視線を向けるとコルマは見えなくなった子供たちの方を真っ直ぐ見ていた。
 そして手に持っていたマッチ箱ほどの小さな木の札を出してリリーシャに渡してくる。
 何を考えているのか分からず、複雑な気持ちでそれを受け取ると視線を向けたコルマは話を続けた。
「昔、ああやって手を繋いでいたんだろ?」
「何で知ってるの?」
「……さぁ、何でだと思う?」
 質問を質問で返すコルマに眉を寄せたが、幼い頃あまり顔を付き合わせたことが無いとはいえ、知ってる可能性もゼロだとは言えない。
 だって二人きりだったから。早くに両親が死んで、二人は手を取り合って生きてきた。
 周りの人だってあの頃は弟に優しかった。
 何時の頃からか、急に周りが弟を見る眼が変わったけれど。
 不意にコルマは顔を背け、軽い調子で言った。
「まぁ、答えは簡単。目立ってたからな」
「え?」
「嫌われてたろ? 弟」
「……理不尽にね」
 昔の事を思い出したのか、リリーシャは腕を組むと地面を蹴った。巻き込まれた小石は一度だけ小さく飛んだだけだ。
 その行動にコルマは少しだけ笑うと、さっき渡してきた木の板を指さして言う。
「あ、そうだその板無くすなよ。それはいずれ必要になるから」
「このただの木の板が?」
 ジッと見つめると所々表面に凹凸があるが、やはり大事なものとは思えなかった。
 仕方なくそれをポーチに入れるリリーシャに、肩を僅かに上げたコルマは聞く。
「ここで宿をとる? それとも次の場所まで行く?」
 そんなコルマの問いに、リリーシャは腰に手を当て言い切った。
「当然、次の場所まで行くに決まってるでしょ!」
「だと思った」

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