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取り戻す為に
黒の男
しおりを挟む「止まれ!」
背中に刺さるその声に男は小さく笑った。
自身に向けられた兵士が構える槍の先にも恐怖ではなく、ただ可笑しそうに笑みを浮べる男。
兵士は男の態度に嫌な気配を感じ、それを悟られないように先ほどよりも大きな声で言った。
「止まれと言っているのが聞こえないのか!」
中々にしっかりとした塀を見上げ、馬鹿にしたように肩を揺らした男は先ほどから声を荒げる兵士に顔を向けた。
長い黒髪から見える赤い瞳を見た兵士はぎくりと体を揺らしたのを、男は見逃さなかった。
「ば、ばけもの」
紡がれるその言葉に喉の奥で笑い、両手を広げ空に張り上げるかのように声高々に言った。
「さぁ、狩の始まりだ! 我が王は生贄を所望されているからな!」
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