決められた運命

野々村

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絶望が見えるか

絶望が見えるか

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 何度も空を切る音が辺りに響く。
 青年は己の身長ほどもある大剣を、縦に大きく振ると空気の波が伸びて前にある瓦礫を吹き飛ばした。
と、そこに近づく足音が一つ。
「王子、先日近くの村が魔物に襲われた件ですが、その時に人型の魔物が居たらしいと、生き残った住民が言っていました」
 背筋を伸ばした姿が様になる女性に、青年は顔だけを向けて首を傾げた。
「人型の魔物ぉ? ゴブリンとかじゃなくてか?」
「そこまでは分からないそうですが、聞くところによると人の言葉も喋るとか」
「……ケッ、人間の真似なんてふざけた事しやがって」
「王子」
「エマ、俺をその呼び方で呼ぶんじゃねぇよ。俺は親父とは違う」
「申し訳ありません、ヘンリー様」
 スッと姿勢を正して頭を下げるエマにヘンリーは無言で持っていた大剣を渡す。
 どこにそんな腕力があるのか、細腕のラインが目立つメイド服を着た彼女は渡された大剣を両手で掴み、武器を仕舞うために静かに城の中にある倉庫へ体を向けた。
「エマ」
「はい、なんでしょう」
 足を止め、体ごとヘンリーを見るとなんだか悪い予感がしてエマは頬をヒク付かせた。
 ヘンリーが顎に指を当て、何かを考えている時はいつも面倒事に巻き込まれるのを、エマは長年の勘で分かった。
「それを置いてきたら街に下りるぞ」
「……はい」
 無言の抵抗を無理だと察したエマは、肩で溜息を吐くと仕える主の為に仕事に戻るのだった。

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