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絶望が見えるか
絶望が見えるか 2
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リリーシャたちが旅を始めて数十日が経ち、簡易テントの床の固さにも慣れてきた頃。
二人の前には瓦礫と建物が燃え残った小さな村があった。
死臭が残るそこを見たリリーシャは顔を真っ青に染め、何処から派遣されたのか兵士が村の使えそうな残骸を馬車に運んでいた。
リリーシャから離れていたコルマは、頭や服から包帯が巻いているのが僅かに見える男性から話を聞き終わったのだろう、メモ紙に書き込んだものを見ながら歩いてきた。
「何を聞いたの?」
「この村を襲った者について聞いてきた」
「……で、何だったの?」
「魔物が襲ってきたらしい。子供数人が連れ去られたけど他の人間は殺されたって。見慣れない魔物もいたらしい。彼は瓦礫の隙間に居たらしくて助かったとか」
「私達がもっと早くここに着いていれば……」
「後悔しても仕方ないよ、今は出来る事をやろう」
読み終わった紙を折りたたんでポケットに入れた後に優しく笑った。
リリーシャはコルマの優しさに心が軽くなったが、苦くなった気持ちは消える事は無い。
「ごめんなさい」
未だ燃え続ける家屋を見て、リリーシャは顔を歪め両手を力強く握り締めて搾り出すように呟いた。
「もうこんな悲劇、見たくない」
「リリーシャ……」
(絶対助けるから……。それにきっとそこに弟も一緒に居る)
強い覚悟と、確かな手がかりが見つかった所為か、その瞳はいつにも増して碧く輝いている。
「リリーシャ、彼のことは兵士がなんとかしてくれるから俺たちは次の街に行こう」
「そう……ね」
コルマが静かに見上げた空の先は、厚い雲に覆われていた。
(ひと雨来そうだな)
天気で変わる自身の持つ弓の弦を心配しながら軽くなった鞄を背負いなおし、気付かれないように溜息を吐いた。
「雨が全部流してしまえばいいのに」
無理だと知っているからこその愚痴だ。
地面に描かれた町や人々の絵を消されるのとは訳が違う。
瓦礫となった村から二人は少し歩いたところで見えたそれに、リリーシャは指を差した。
「ねぇコルマ、あそこに見える街は何?」
蜃気楼のようにぼんやりと見えるそれは、遠目からでも分かる城壁。
コルマは目を細めながら何度も持っていた弓の弦を軽く弾いて答えた。
「俺たちの住む大陸一帯を治める領主が住まう街だって。だからこそ街は栄えるし、人は多いから情報は期待出来ると思うよ」
「そっか」
「……リリーシャ」
「分かってる」
少し遠くに見える三体の魔物に視界を向けたままリリーシャは腰に提げた剣を抜いた。
まだ自分が弱いのを戦う中で知ったからこそ、先手必勝を狙って魔物の背後に入り込む。
「――っせい!」
こん棒を持ったゴブリンの背を斬りつけると、甲高い鳴き声を上げて武器を落とした。その隙を見逃さずリリーシャは剣先を垂直に構えると足に力を込めて地面を蹴る。
「一閃!」
声と共に真上に刃を振り上げると、ゴブリンは倒れ、そのまま動かなくなった。
「コルマ!」
残った魔物を探すとゴブリン、そしてワームと呼ばれる大芋虫がコルマの方に行っているのが見えて、リリーシャは力いっぱい剣を投げるとゴブリンの体に突き刺る。
その勢いのまま地面へと倒れたゴブリンに背中に乗ると剣を思いっきり引き上げた。その姿を見たコルマは追撃の矢をゴブリンの脳天に射抜くと魔物は声もなく絶命した。
弦の音が耳に響く。コルマは顔を歪めると持っていた弓を直し、腰に提げていた小太刀で今にも噛み付こうと口を開けていたワームに応戦するべく腰を落とす。
小太刀の頭の部分に当てていた左手に力を入れた時、ワームは体を揺らして緑色の液体を吐いて事切れた。
「?」
どうしたんだ? と思っているとリリーシャが大きく剣を振るのが見えて静かに納得した。
「大丈夫!?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。悪い、弦が嫌な音を立ててたから小太刀で応戦しようとしたんだけど、リリーシャの方が早かったようだな」
「……街で張り直してもらう?」
「そうだな。弦を変えたのはもう随分前だったし。俺が持っている弦より街で売っている方が質は良さそうだしな」
コルマが軽く弾いた弦は別段何処が悪いのかは分からなかったが、使用者が言っているのだから、そうなのだろうと頷いた。
二人の前には瓦礫と建物が燃え残った小さな村があった。
死臭が残るそこを見たリリーシャは顔を真っ青に染め、何処から派遣されたのか兵士が村の使えそうな残骸を馬車に運んでいた。
リリーシャから離れていたコルマは、頭や服から包帯が巻いているのが僅かに見える男性から話を聞き終わったのだろう、メモ紙に書き込んだものを見ながら歩いてきた。
「何を聞いたの?」
「この村を襲った者について聞いてきた」
「……で、何だったの?」
「魔物が襲ってきたらしい。子供数人が連れ去られたけど他の人間は殺されたって。見慣れない魔物もいたらしい。彼は瓦礫の隙間に居たらしくて助かったとか」
「私達がもっと早くここに着いていれば……」
「後悔しても仕方ないよ、今は出来る事をやろう」
読み終わった紙を折りたたんでポケットに入れた後に優しく笑った。
リリーシャはコルマの優しさに心が軽くなったが、苦くなった気持ちは消える事は無い。
「ごめんなさい」
未だ燃え続ける家屋を見て、リリーシャは顔を歪め両手を力強く握り締めて搾り出すように呟いた。
「もうこんな悲劇、見たくない」
「リリーシャ……」
(絶対助けるから……。それにきっとそこに弟も一緒に居る)
強い覚悟と、確かな手がかりが見つかった所為か、その瞳はいつにも増して碧く輝いている。
「リリーシャ、彼のことは兵士がなんとかしてくれるから俺たちは次の街に行こう」
「そう……ね」
コルマが静かに見上げた空の先は、厚い雲に覆われていた。
(ひと雨来そうだな)
天気で変わる自身の持つ弓の弦を心配しながら軽くなった鞄を背負いなおし、気付かれないように溜息を吐いた。
「雨が全部流してしまえばいいのに」
無理だと知っているからこその愚痴だ。
地面に描かれた町や人々の絵を消されるのとは訳が違う。
瓦礫となった村から二人は少し歩いたところで見えたそれに、リリーシャは指を差した。
「ねぇコルマ、あそこに見える街は何?」
蜃気楼のようにぼんやりと見えるそれは、遠目からでも分かる城壁。
コルマは目を細めながら何度も持っていた弓の弦を軽く弾いて答えた。
「俺たちの住む大陸一帯を治める領主が住まう街だって。だからこそ街は栄えるし、人は多いから情報は期待出来ると思うよ」
「そっか」
「……リリーシャ」
「分かってる」
少し遠くに見える三体の魔物に視界を向けたままリリーシャは腰に提げた剣を抜いた。
まだ自分が弱いのを戦う中で知ったからこそ、先手必勝を狙って魔物の背後に入り込む。
「――っせい!」
こん棒を持ったゴブリンの背を斬りつけると、甲高い鳴き声を上げて武器を落とした。その隙を見逃さずリリーシャは剣先を垂直に構えると足に力を込めて地面を蹴る。
「一閃!」
声と共に真上に刃を振り上げると、ゴブリンは倒れ、そのまま動かなくなった。
「コルマ!」
残った魔物を探すとゴブリン、そしてワームと呼ばれる大芋虫がコルマの方に行っているのが見えて、リリーシャは力いっぱい剣を投げるとゴブリンの体に突き刺る。
その勢いのまま地面へと倒れたゴブリンに背中に乗ると剣を思いっきり引き上げた。その姿を見たコルマは追撃の矢をゴブリンの脳天に射抜くと魔物は声もなく絶命した。
弦の音が耳に響く。コルマは顔を歪めると持っていた弓を直し、腰に提げていた小太刀で今にも噛み付こうと口を開けていたワームに応戦するべく腰を落とす。
小太刀の頭の部分に当てていた左手に力を入れた時、ワームは体を揺らして緑色の液体を吐いて事切れた。
「?」
どうしたんだ? と思っているとリリーシャが大きく剣を振るのが見えて静かに納得した。
「大丈夫!?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。悪い、弦が嫌な音を立ててたから小太刀で応戦しようとしたんだけど、リリーシャの方が早かったようだな」
「……街で張り直してもらう?」
「そうだな。弦を変えたのはもう随分前だったし。俺が持っている弦より街で売っている方が質は良さそうだしな」
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