決められた運命

野々村

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絶望が見えるか

絶望が見えるか 3

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「コルマ! こっちに武器屋があったよ!」
「リリーシャ、あまり離れないようにしないと。この街は俺たちが居た町とは違って、とても広いんだから……」
 人混みに驚き、様々な店が建ち並ぶ事に目移りして子供のように走り回る彼女にコルマは肩を下げる。
 リリーシャが入って行ったのは剣と盾の絵が描かれた看板。
 綺麗に磨かれたその看板は質の良さそうな武器が売ってありそうだと思ったコルマの背中に誰かがぶつかった。
「す、すいません!」
 慌てたように謝ってきた男性に頷きだけで返すと足早に去ろうとしている。
 急いでいるようにも思えるその男性の腕を誰かが掴んだ。
「ちょーっと待ちな」
「!?」
 コルマより背の高い、同い歳程の青年が男性の腕をつかんだままその手を捻り上げると、叫び声を上げて手に持っていた財布を落とした。
 見るとそれはコルマの使っている財布だ。
「あ、俺の財布」
「チッ!」
「やっぱりテメェ……」
 青年は低い声で鋭く睨みつけるが、効果が無いようで男性は掴まれた手を放そうと必死だ。だが、男性の細腕に比べ、青年の太い腕には敵うとは到底思えない。
「クソッ! 何でバレたんだ!」
 悪態を吐く男性は素手じゃ勝てないと分かったのか、ポケットからナイフを取り出すと青年の腕に突き刺そうとした。
 その行動を見ていたコルマは止めようとしたが、その前に音もなく現れた人物が素早くナイフを弾き飛ばすのが見えて呆気にとられた。
「ヘンリー様、ご無事でしょうか」
「エマ、流石にこんな雑魚に俺が怪我するとでも? まさか」
 突然現れた美人の女性に青年は鼻で笑う。
 地面に落ちてしまった財布を青年は拾い上げ、砂の付いた部分を軽く手で叩いてコルマに渡した。
「ありがとうございます」
「悪いな」
「いや、貴方が悪いわけじゃないから謝られても」
「コルマどうしたの!?」
 青年に謝られてコルマが困惑していると聞きなれた声。
 振り向くといつになっても来ないのを心配したリリーシャが走ってきた。コルマの横にいる見知らぬ二人を見ると不思議な顔を浮べる。
「えっと……誰? 知り合い?」
「いや、知り合いじゃなくて」
 どう言おうかと考えていると、下から呻き声がして皆がそちらに視線を向けると、地面に伸びた男性が居たのを思い出した。
 女性がナイフを弾くと同時に男性の足を払っていた所為で気を失っていたのだが、やっと気がついたようだ。
痛みに頭を押さえている男性の首根っこを掴んで女性は綺麗なお辞儀をした。
「申し訳ありませんが、私はこれで」
「おう、よろしくな」
 女性は改めて三人に礼をした後、片手を上げる青年に視線を向け、頬に掛かる黒髪を指で払いながら嫌な顔をした。
「お願いですから目立つ行動は控えるように。もし勝手に暴れる事がありましたら、その短い髪をさらに短くしてさしあげますので」
「わーってるよ。相変わらずコエーやつ」
 短髪の赤い髪を両手で押さえて笑う青年。信じていないのだろう、女性は大きな溜息を吐いて男性を荷物のように掴み上げて連れて行く。その光景を見ていたコルマは唖然とした表情で見た。
(細身なのに、あんな大柄の男性を軽々と……)
 リリーシャからの尊敬の眼差しを受けながら去って行った女性が見えなくなると、青年はにこやかに話しかけてきた。
「なんか悪かったな。」
「いや、だから貴方が悪いわけじゃないから」
 何が起きたのか、不安そうに顔を歪めるリリーシャの視線を受けるが、コルマは一旦スルーを決める。
 とりあえず目の前にいる彼に謝らないでほしい事を伝えるが、真面目な表情で首を振られた。
「俺はヘンリー、この領地を治める領主の息子だ。折角このダウタの街に来てくれたヤツにスリ遭って嫌な思いはさせたくないしな」
 「だから本当に悪かったな」と呟いたヘンリーに、何となく事情を察したリリーシャは微笑んで手を差し出した。
「立派な考えなんですね、私はリリーシャ。とある目的で旅をしているの」
 握手を交わす二人に続くようにコルマも手を出してヘンリーに握手を求める。
「そんな風に考えられるのは領主の立派な考え方だと俺も思うよ、さっきはありがとうヘンリーさん、俺はコルマ。リリーシャと同じ町で暮らしていたんだ」
 二人に握手をし終わるとヘンリーは「呼び捨てで構わねぇよ」と言った後、閃いたように指を鳴らした。
「そうだ、侘びついでに飯奢るよ。エマにあんまり目立つなって言われてるし。あ、エマって言うのはさっきの男を連れて行った女で俺の従者な」
「さぁ、こっちだ」と親指で後ろの方を指して教えてくれるのを、二人はどうしようと視線を合わせた。
「あ、えっと……」
 渋っているリリーシャに「この街の説明もするよ」と言うと一瞬悩んだ後、頷いてコルマにも同意を求めるように見つめた。
 コルマは少しだけ視線を避けたが、仕方なさそうに大きく溜息を吐いて同意した。
「良いよ、行こう」
 同じく頷いたコルマを確認したヘンリーは笑顔で「近くにあるから」と少し遠くの店に案内した。
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