決められた運命

野々村

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絶望が見えるか

絶望が見えるか 4

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 そこはヘンリーが良く通っているのだろう、彼は席に着くとメニュー表を見ずに二人を待った後ラザニアを頼み、リリーシャはパフェ、コルマは大盛りサラダを頼んだ。
「……んで、あの店は品揃えは良いし、偶におまけをしてくれたりする良い店主なんだよ」
「へぇ……」
 テラスから見える店の情報を片っ端から教えてくれるヘンリーに相槌を打つリリーシャと、奢ってもらったサラダを黙々と食べ続けているコルマ。柑橘で作ったドレッシングが酸っぱいのか、時折眉を寄せて食べている。
 ヘンリーが次に指したのはリリーシャが先ほど一人で入って行った店。
「あの武器屋は質が良いから少し高めな値段が多いな。あんまりお勧めはしないけど」
「じゃあ他に違う武器屋があるの?」
「あぁ、俺のオススメの店があるぜ。連れて行こうか?」
 自信満々に頷くヘンリーにリリーシャは一二もなく頷いた。横でコルマが「マジか」という顔で見ていたが、リリーシャには知らない事だ。と、そこに現れたのは先ほど男を連れて行った女性、エマだ。
「ヘンリー様」
「お、来たか」
 ヘンリーは横に空いていた椅子を引いて、座るように促すとエマは丁寧に「失礼します」と挨拶をして座った。
エマは体ごとコルマの方を向き、綺麗なお辞儀を見せる。
「この度は不愉快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」
「いえ、それは本当に大丈夫です。ヘンリーさんにも言われたし」
「それに奢ってもらったしね」
 笑顔で「大丈夫」だと言えばエマはホッとした表情を見せた。
(この人たちは本当に皆の事をちゃんと考えてくれる優しい人たちなんだ)
 リリーシャは嬉しくなり笑顔を浮べていると、エマが真面目な表情で口を開いた。エマの纏う空気が一瞬で変わる。
「あなた達が今日此処に来たことを理解した上で聞きたい事があります」
「は、はい」
 リリーシャは食べ終えたパフェの容器を脇に避けて少しだけ姿勢を正す。
 彼女が持っていた鞄から出したのは書類の一部だ。断りを入れてリリーシャはその書類を取った。日付は昨日となっている。
 読み進めていたリリーシャの表情が瞬時に変わった。
「これは……」
「これは昨日魔物に襲われた村の情報です。もし、私たちの知らない事があれば教えてほしいのです」
「でも、俺たちが知ってるのは此処まで詳しくないんで……」
 困った顔をするコルマと、無表情で文字を読んでいたリリーシャ。
 だが、リリーシャはまるで胃に詰まった物を吐くかのように二人に聞いた。
「もしかしたら私が探している事に近いのかも知れないわ。私の事も話すから、もし、ここに書いてない事で貴方たちの知っている情報があったら教えて欲しいの」
「………」
 しっかりと二人の眼を見て話すリリーシャに、ヘンリーは大きく頷いて「エマ」と彼女の名前を呼んだ。
 呼ばれたエマは静かに立ち上がり、机にあった伝票を掴んでレジへと向かう。
 その後姿を見たヘンリーは二人を呼んだ。
「さぁ、俺のオススメの武器屋に行った後、ゆっくり話せる所に案内してやるよ。俺様のとっておきの場所にさ」
 四人が店から出ると空は分厚い雲に覆われ、小雨が降り始めていた。

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