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絶望が見えるか
絶望が見えるか 5
しおりを挟むヘンリーが教えてくれた店は、言っていたように中々に安い装備と武器が揃っていて、そこでコルマは弓の弦を買った。張り替えは自分でするそうだ。
そして今はヘンリー住んでいる街の城の中にある彼の自室でエマの淹れてくれたセイロンティーをご馳走になっている。
「で、まずはそちらの話を聞こうか」
街に出ていた服装とは違い、正装に着替えたヘンリーはさっきと雰囲気が変わったように見える。王の風格と言えばいいのだろうか、煌びやかな椅子が玉座に見えない事も無い。
ヘンリーの雰囲気に呑まれないように、静かな部屋の中でリリーシャは一口紅茶を飲んで口火を切った。
「……私の町でその不幸が起きたのは五年前です。私の双子の弟は大群で町を襲ってきた魔物に連れ去られました」
「五年前?」
「そんな前からですか?」
驚く二人に、やはり知らなかったのかと少しだけ悲しくなった。
(そんなに此処から遠くない町なのに)
自分たちの住んでいた町が見放されているように感じて、持っていたティーカップを強く握ってしまう。
「そこでの死亡者はコルマの父親と町の兵士、他の住人数名が土に還りました。攫われた私の弟とはそれから会っていません」
「もしかして、とある目的ってーのが」
「はい、攫われた私の弟を助ける為に旅をしています」
「………」
静かに聴いていたヘンリーはグッと背もたれに体を預け眼を閉じていたが、その瞬間空気を振るわせるほどの音量で声を上げた。
「感動した!」
「!?」
ビリビリと体が震わせるほどの音量。そして何故か男泣き。しかも五月蝿い。
そんな主人の姿に従者は馴れたように真顔でハンカチを差し出す。
何故だろう不思議とシリアスがなくなった気がして仕方ない。
「よし! 俺は決めた! お前たちの旅に同行する!」
「ええぇぇっ!?」
目元を腫らしたヘンリーに、ドン引いているとまさかの答え。
慌てるリリーシャに、首を傾げるコルマ。また可笑しな事を……。と溜息を吐くエマ。
三者三様の表情に何も気にしていないのだろう、手元にあった紙に大きく「修行に出る! 探すな!」と書き、その紙をエマに渡して小声で何かを頼んでいた。
エマは軽く頷くと、扉の前に移動して一度礼をとり二人を見やる。
「それではヘンリー様、私はこれで。お二人は客間にご案内しますのでこちらへ」
案内された客間で数十分待つと、軽装に着替えたヘンリーが来て、その数分後に大荷物を抱えたエマも入ってきた。
「お待たせいたしました。皆様こちらを」
荷物の中身を綺麗に床に並べる。見るとそれは武器だったり日用品だったりと、様々なものが並べられていた。
「もし必要な道具や武器がありましたらご自由にどうぞ」
「え、えっと……」
「貰っていけよ、どうせ使わないから余らせるよりかはマシだろ」
装飾が付いた大剣を持ち上げ、肩に掛けるヘンリーの姿はとても様になっている。
そんなヘンリーの一連を見ていたコルマはその後に続いた。
「それなら俺は」
「ちょ、コルマ!」
並べられた物を吟味しているコルマを窘めるが、ヘンリーは楽しそうにからからと笑うだけだ。
神経が図太いのは良い事なのかもしれないが、少しは遠慮と言うものを覚えてほしいと、乾物と回復薬を両手に抱えたコルマを見て思った。
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