政略結婚ですが何か?【完】

mako

文字の大きさ
17 / 61

第1王女としてのプライド

しおりを挟む
ラダン大王国貴族からの視線を一身に受け、かつての威厳を取り戻しつつあるイザベラは、凛として己を奮い立たせた。


ひと息つこうと化粧室へ向う途中にある控室よりアレクセイとグランの声が漏れていた。イザベラは不意に身を隠し耳を傾けると

『流石でしたね、第2王女は。』

グランの低く落とした声にアレクセイは

『想像以上であるな。』

『ラダン大王国王太子が手に追えるかどうかですね。』

グランの言葉に

『お手並み拝見といこうか。』

小さく笑うアレクセイの声にイザベラの心はざわついた。頭が真っ白になりバルコニーで頭を鎮めていた。


‥どういう事?エマニュエルが?


2人の会話からエマニュエルに興味を抱いていることは確かである。

‥エマニュエルがどうして?エマニュエルを流石と言った。後悔してる?いや、そんな感じでもなかった。



そもそもイザベラはその土俵にも上がっていないのか話にも出ていなかった。


‥ならば何故私を?

混乱するイザベラが我に返ったのは、側近らしき男に何やら指示を出しているエマニュエルの声であった。

遠くで采配を振るうエマニュエルから目が離せなかった。かつて自分とは違い好き勝手に生きていたエマニュエルがイザベラが思い描いていたような大王国の王太子妃として目の前に立つ。それに比べ自分は大王国の王太子妃ではあるものの‥違う。

イザベラは心の中にかつてあった醜い感情が湧き出るのを感じた。


エマニュエルがイザベラの視線に気づくと、笑顔でこちらに歩いて来た。


『楽しんで頂いておりますか?お姉様。』

屈託ない、変わらない笑顔。この顔に幾度となく嫉妬に狂いそうになった事か。


『ええ、ありがとう。素敵な時間だわ。』

そう答えるとエマニュエルは

『あら?殿下とはご一緒では?』

キョロキョロと探すエマニュエルに


『踏み込みすぎよ?ホストがそこまで考えなくても良いわ!』


エマニュエルは一瞬固まり


『失礼をいたしました。』





沈黙を破るはイザベラ。


『貴女はいつだってそうだわ』

呟くように話すイザベラを不安そうに見つめるエマニュエル。

『何の努力もせず、最後にはかっさらっていくの。』


‥かっさらう?


『そう、自分は何も知らないって顔をしてね。』


エマニュエルは

『どういう事でしょうか?』


『貴女は大王国の王太子妃となれたのは私のおかげだわ。』

‥別に望んではいませんでしたが?


『大陸の中立国の我が国から大王国の1つへ王女が嫁げば必然的にもう一方の大王国は中立国の王女を娶る。ただそれだけ。』


‥はい、承知。



『何の力もない貴女がここに要られるのは、私の努力の末ということを忘れないで。』


‥。

『お姉様はアリア大王国に嫁がれた事を後悔されているのですか?』

心内を悟られた様にイザベラは目を見開きエマニュエルの頬を思い切り打った。

一瞬の事で二人とも思考が止まっている。


『お姉様、こんな事で気が済むのでしたらいくらでも受けて立ちますわ』


冷静に反応するエマニュエルの言葉はイザベラを徴発し我を忘れさせる。イザベラは華奢なエマニュエルの肩を思い切り押し、よろけるエマニュエルの髪の毛を鷲掴みにし再び頬を打ち続けた。エマニュエルの冷めたその視線がイザベラを一層掻き立てた。



『そこまでだ!』


イザベラが我に返る一言を放ったのはアレクセイであった。我に返ったイザベラはエマニュエルから手を離すとエマニュエルは倒れ込んだ。

アレクセイの側近グランが慌ててエマニュエルに駆け寄り介抱する姿に己のしでかした事実を突きつけられイザベラは座り込んだ。

『アレクセイ様‥。』

アレクセイはイザベラを見ようともせずグランに指示を出し、グランはバルコニーから直接中庭に出てエマニュエルを部屋に運んだ。

アレクセイはイザベラに

『愚かな事を』

そう言い残し会場に戻って行った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

私の初恋の男性が、婚約者に今にも捨てられてしまいそうです

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【私の好きな人が婚約者に捨てられそうなので全力で阻止させて頂きます】 入学式で困っている私を助けてくれた学生に恋をしてしまった私。けれど彼には子供の頃から決められていた婚約者がいる人だった。彼は婚約者の事を一途に思っているのに、相手の女性は別の男性に恋している。好きな人が婚約者に捨てられそうなので、全力で阻止する事を心に決めたー。 ※ 他サイトでも投稿中

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。 とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。 この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……? 「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」 公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...