政略結婚ですが何か?【完】

mako

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初夜

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騒がしさも収まりアリア大王国の静かな夜、満天の空を見上げながらエマニュエルは祖国に思いを馳せていた。

『エマニュエル、明日は早い。もう休もう。』

エマニュエルはエイドリアンにガウンを掛けられ見上げるとそこには安定の王子スマイル。初めこそむず痒く感じていたスマイルにも慣れ、むしろ安心感を覚えもした。エマニュエルは素直に従い眠りについた。




アリア大王国の王太子妃となったイザベラは緊張の面持ちでアレクセイを待っていると、約束の時間通りにアレクセイは現れた。


黙って俯くイザベラの前に腰を下ろすとゆっくり語り始めた。


『イザベラ、リントン第1王女には何の興味もないし期待もしておらん。』

イザベラは瞳を閉じて受け入れた。

『だが、それも昨日までのこと。今日この日からお前はアリア大王国王太子妃となった。』

顔を上げるイザベラを真っ直ぐ見つめるアレクセイ。

『リントン第1王女のような人形は要らん。アリア大王国王太子妃として呪縛を解き放てるか?』

頭を巡らすイザベラに

『自分らしく生きよ、イザベラ。』


‥自分らしく?


才女と言われるイザベラだが頭が真っ白である。
アレクセイは鼻で笑い

『馬鹿なのか?』

イザベラは目を丸くしながら首を振る。


『では王太子妃となりこれからどうしたいのだ
?』


‥。

『模範解答など要らぬ。お前がどうしたいのか問うておる。』

イザベラの頭は真っ白であるが何か答えなければ


『エマニュエルのように心のままに生きたいです。』


アレクセイはニヤリと笑い


『ならばそうすれば良い。ここでは誰も咎めん。操り人形など要らんからな。この国の私が言うのだ。案ずる事などなかろう?』


イザベラは怯える子どものように問う。


『心のままに?』

『そうだと言った。』

『粗相があったら?』

『構わん。ってかどんな粗相だ?』

頭を悩ますアレクセイに


『た、例えば庭に出て花を愛でるのではなく、植え替えるとか。スイーツを好きなだけ食べるとか、お昼までお寝坊するとか?』

アレクセイは目を細め

『エマニュエルか?』

イザベラはハッと気付いた。知らぬうちにイザベラはエマニュエルが羨ましかったのだ。大王国の王太子妃よりも、庭で土イジリをしたりお寝坊をしたりしたかったのだ。アレクセイを見上げるとイザベラの大きな瞳からは涙が止めどなく流れてきた。


『母親からの呪縛を解けるな?イザベラ。』

アレクセイはイザベラの涙を拭いイザベラを覗き込むとイザベラは幼子の様に微笑んだ。

アレクセイは頷くと大切にイザベラを抱き込んだ。

困惑するイザベラは母から習った全てのものを解き放ちゼロとした。これから始まる事に恐れている姿をアレクセイに見せても良いのだ。

イザベラは不安を全面に出しアレクセイを見上げる。アレクセイは納得の表情で

『お人形でなくて良かった。案ずるな。イザベラ。大丈夫だから』


アレクセイは初めて素の笑顔をイザベラに向けた。
イザベラはこれから始まる未知なる世界へ笑顔で挑んだ。


新しいイザベラの誕生である。





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