政略結婚ですが何か？【完】

mako

文字の大きさ

大中小

42 / 61

政略結婚の夫婦

しおりを挟む

エイドリアンはいつもより早めに寝室に入るとソファに座りエマニュエルを待っていた。

エマニュエルは定刻通り寝室に入ってくるとエイドリアンを見て

『殿下、お早いのですね？執事が滞りなくお進みの事でよろしいですね。』

寝室でまるで同僚のような挨拶を交わすエマニュエルにエイドリアンはソファに促す。

ソファに腰を下ろしたエマニュエルは不思議そうにエイドリアンを見つめる。

『エマニュエル、エマニュエルは側妃の事をどう考えている？』

エイドリアンと問に

『時期が来ればアンドリューに見繕うように命を出されるのでは？』

アンドリューから聞いた通りの返答に少し寂しそうに

『エマニュエルはそれでいいの？』

エマニュエルは首を傾げながら

『それでいいも何もそういうものでは？だって政略結婚ですもの。』

『そもそも政略結婚の意味履き違えてないよね？』

アンドリューが問うとエマニュエルは少しムッとして言い返す。

『私はラダン大王国の王太子妃としてこの国の為に働くよう参りましたわ。』

『うん、それは感謝しているよ？でもそもそもの政略結婚ってのはさ、お互いの国に利益をもたらす為に結婚し代継を残す事だよね？

執務だけなら官僚を増やせば良いだけだろ？もちろん官僚には王太子妃のような権限はない。だからお飾りの王太子妃が鑑押しだけのために存在する国をもあるだろ？』

『ですが、代継を作るにはその、お互いが思い通じていないといけないですもの。』

‥。

『であれば側妃とはどうして代継が作れるの？』

なるほどというように頭を悩ませているエマニュエルに尚も続ける。

『側妃は愛情なしで子どもを作るよね？それだけが仕事だから。』

エマニュエルは反論するかのように

『ですが、マリアンヌ様は側妃ですがお父様の寵愛を受けているとの事ですし、執務もしておりますわ！』

『そうだね。そういう側妃もいるね。でもそうなるとさ、エマニュエルの母上と政略結婚であった国王は正妃より側妃の方を愛していた事になるよね？』

『違うわ！』

エマニュエルは思わず立ち上がると

『そういう風に捉えている方も多い事は存じてますが実際は違う。お父様とお母様を近くで見ていれば分かりますもの。

確かにマリアンヌ様の話しだけだとそう思われる方がいるでしょう。でも実際は違うわ。

お父様とお母様は政略結婚ではありましたがお互いに愛し合っていらっしゃいます。なかなか子どもに恵まれず側妃を望む声が大きくなりマリアンヌ様が側妃となられた。お母様はその後私とミハエルを身篭られた。私がもっと早く産まれていたらお父様は側妃を娶らなかったはず。現にお姉様以外のお子を産んでいらっしゃらないではありませんか？

マリアンヌ様のお話だけが広がるのを私は許せなかったのですがお母様は私に言いました。

私達の愛を他人に知らせる必要がどこにありますか？お互いが通じているだけで十分だと。』

エマニュエルは珍しく感情的に話しソファに再び腰を下ろした。

『うん、素敵なご両親だね。ではご両親はどうやってエマニュエルを作ったの？』

エマニュエルは少し頭を巡らせてから

『私も大きくなってからはあまりお二人のお部屋には出入りしておりませんが幼い頃は毎日目にしておりましたわ。』

‥！まぢで？幼い子の前で？リントンはどうなっているのだ？

言葉に詰まるエイドリアンに

『その、お二人はいつもお部屋ではお父様の膝の上にお母様がお座りになり私はいつもお母様とお父様のお膝を取り合っておりましたの。

お父様は暇さえあればお母様を抱き寄せ小鳥のようにキスをしておりました。』

‥思いがけずリントン王国の夫婦の日常を知りエイドリアンは複雑な思いをしていると

『そうして私が産まれましたの。』

思わず目を見開くエイドリアン。

‥肝心な所が抜け落ちてはいないか？

『エマニュエル、それは愛情が無いとなかなか出来ないね？』

当然のように

『もちろんですわ！』

『だったら側妃はどうやって子どもを作るのだろうか？同じ事を側妃ともするなら側妃とも愛情が無ければ成立しないね？』

‥。答えを必死に探すエマニュエルをじっと待つエイドリアン。

『側妃にはきっとテクニックがおありなのよ！』

正解を思いついた様に得意気に答えるエマニュエル。

‥テクニックって使い所が違うだろ？

『エマニュエルよく聞いて。側妃には色んな場合がある。ご両親のように正妃を愛していながら正妃との代継が期待出来ない場合に設けられるもの。

また、立場の違いから正妃に出来無い女性を側妃として愛する。その場合は正妃はお飾りだね？

また正妃にも側妃にも愛情は無いが多くの代継の為に沢山の側妃を設ける。

この他にも様々無ケースがあるんだ。わかるかな？』

エマニュエルはもはやキャパオーバーといった感じである。

『そうした場合、エマニュエルの言う子づくりには無理がない？』

‥なるほど。

エイドリアンは大きく溜息をつくと子づくりについて淡々と話しだした。

‥何故私がこんな話を正妃にしなきゃならない？リントン王国はどうなっているんだよ‥

目の前で百面相になりながら聞くエマニュエルを眺めながらそんな事を思っているとエマニュエルはソファから立ち上がり後ろに下がっていく。

『殿下はそのような事を‥』

『いやいや、私には側妃はいないからね』

じっとエイドリアンを見るエマニュエル。

『エマニュエルは私と側妃が代継を作っても構わない？』

間髪入れずに

『お作りになられたいのですか？』

エイドリアンは柔らかく微笑み

『いや、私はそんな事を思ってないよ？』

エマニュエルは愛だの恋など知らないがその行為が代継の為に必要となれば自分か自分以外の女性が担わなければならない事は理解した。

固まるエマニュエルにエイドリアンは

『エマニュエルはキャパオーバーだね。今日の所は休もうか？』

そう言ってベッドに入るとエマニュエルはそのベッドに入るのを躊躇した。

『大丈夫、何もしないよ？』

優しく微笑みながらも

『でも不能でもないからね？安心して』

そう言うとエイドリアンは目を閉じて眠りについた。

しばらく様子を伺って居たエマニュエルも眠気には勝てずそっとベッドに入り眠りについた。その様子をベッドに肩ひじを付きながら見守るエイドリアンは天使の寝顔にそっとキスを落とした。

しおりを挟む